「利回り17%」北朝鮮企業が募る、かなり不透明な投資案件
「遊休資金」とは本来、経済活動に使われていない資金のことを指す。だが、北朝鮮では若干意味合いが異なる。投資や貯蓄目的の資金であっても、民間人が所有していれば、無駄に遊ばされている資金という扱いになるようだ。
これを投資させようとする動きが出ているが、本当に利益が戻ってくるのか、かなり不透明だ。デイリーNKの内部情報筋が伝えた。
現在、非活性化された資金を経済活動に投入するための「有休貨幣資金動員事業」なるものが全国的に行われている。中でも、経済の拠点である首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)、東海外の元山(ウォンサン)、中国との国境に接する会寧(フェリョン)で活発だ。
これはタンスにしまわれたままの資金を国の事業に寄与させるべく誘導する、一種の投資奨励活動だ。国や企業所が資金確保のために考え出したもので、それを使って生産性を高め、自力更生を促進するのが目的だという。
これは、一部地域の企業所が自力更生のために始めたものを、朝鮮労働党異中央委員会(中央党)が指針を下したことで、公式の事業となった。資金が必要な企業所は運用プランを国に提出し、許可を受けてから実行するのが一般的だという。
収益は投資額の10%から17%、運用期間は6カ月から1年だ。投資者は収益を毎月末に受け取るか、満期時に受け取るかを選択できる。また、保証のために約定書や契約書を作成する。
(参考記事:国民の外貨タンス預金を狙う北朝鮮政府と、意地でも出そうとしない人々)
今までの資金集めの手法といえば、高級レストランや百貨店で高い買い物をさせたり、住民の資産を半ば強制的に奪い取って銀行口座に貯蓄させたりするというものだった。しかし、あまり効果がなかったため、自発的に参加できる今回のようなものが編み出されたようだ。
経済的に余裕のある人に投資を呼びかけてはいるが、参加しなかったからと不利益はないとのことだ。しかし、満期を迎え資金を受け取る際には、同じプロジェクトに投資した誰かの推薦が必要となるという項目があり、投資を考えている人にはハードルとなっている。
企業は、満期償還に万全を期している。今後の資金調達に支障が発生するからだ。
会寧のある企業所は、約束した収益が支払えず満期になっても資金が返せなかった。このような場合には、中央党から追及を受け、企業の信用に傷がつき、資金調達が難しくなる。
だが、運用は透明性に欠けている。
平城と元山の企業所は今月、資金の使い道の内訳を投資者に公開したが、実行したのはごく一部に過ぎず、ほとんどの企業所は非公開にしたとのことだ。中には四半期ごとに要請すれば公開してくれる企業所もあるそうだが、非公開が普通だという。
また、資産が当局にバレて、たかられるリスクはないのかについて、情報筋は言及していない。ある程度の資産を持っている人は、このようなリスクを考えて、銀行に預けず、自宅でタンス預金として持っていることが多かったのだ。