「結婚祝は『源氏物語』より、ジュエリーが欲しい!」教養がないと、そのよさがわからない調度品ばかりを持って「嫁入り」していた姫たち
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*TOP画像/妍子(倉沢杏菜) 大河ドラマ「光る君へ」 41話(10月27日放送)より(C)NHK
『光る君へ』ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は平安時代における「嫁入り道具」について見ていきましょう。
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平安時代の結婚調度品は雅! 娘の結婚調度品に財を惜しまなない親たち
藤原道長にとって彰子が一条天皇の后になることは大変喜ばしい出来事の1つでした。彰子を入内させたことで、彼の地位は確固たるものになったためです。
道長も倫子も彰子が一条天皇に嫁ぐにあたって嫁入り道具の準備に力を入れていました。当時、娘の結婚調度品を用意するのは母親の役目であったため、倫子は特に力を入れていたそう。一条天皇は彰子の結婚調度品のすばらしさに驚いたともいわれています。彰子は化粧箱や硯(すずり)、置棚などを持参しました。さらに、当時最高の絵師が描いた絵に、当時随一の書家である行成が歌を綴った冊子も持参調度の中に含まれていました。
また、次女の妍子が居貞親王(三条天皇)に入内するときも、道長と倫子は嫁入り道具を揃えるのに力を入れ、親王もそのすばらしさにおどろいたといわれています。
平安貴族の女性たちの嫁入り道具として、以下の品々が一般的でした。
・漢詩を書いた屏風
・御帳
・硯
・櫛
・化粧道具
・化粧道具を入れておく箱
・鏡
・小刀
・棚
上流貴族の女性たちは当時随一の芸術家が全身全霊をかけて仕上げた調度品を親や親族などから結婚調度品として贈られていました。職人たちの手でつくられた美しい調度品に囲まれて暮らしていた女性たちの姿が思い浮かびますね。
17世紀、『源氏物語』はお嬢様の「嫁入り道具」の定番アイテムだった
現代においても“平安ブーム”や“江戸ブーム”が巻き起こっていますが、江戸時代は多くの人たちが平安時代に魅了されていました。この時代、『源氏物語』や『枕草子』などの研究が盛んに行われていました。日本を代表する絵師である葛飾北斎も平安時代に興味を抱いていた一人で、『枕草子を読む娘』(すみだ北斎美術館蔵)など平安時代を題材にした絵画を多く残しています。
当時、『源氏物語』に関連した結婚調度品を娘のために用意する親たちも多くいました。例えば、金や銀で彩った『源氏物語』とこの本を入れておくための豪華な箱のセットは定番アイテムでした。当時、身分が高い女性にとって『源氏物語』は教養であり、娯楽であったためです。
『源氏物語』の一場面を描いた絵や『源氏物語』の一場面が描かれた箱や硯、着物などを結婚祝として親から贈られるお嬢様もいました。これらの品々は当時随一の絵師が手掛け、使われている素材は金や銀など高価なものばかり。当時のお嬢様たちは『源氏物語』の一場面を描いた絵を眺めたり、この作品の一場面が描かれた硯や箱などを使ったりしていたのです。いずれの品も繊細で美しく、キラキラ輝いています。古典文学を題材にした調度品を日常的に使う江戸時代の女性たちは雅ですよね。
また、余談になりますが、日本のお嬢様たちが『源氏物語』にまつわる絵柄の調度品を使っていたのとほぼ同じ頃、マリー・アントワネットは日本の漆器(しっき)をコレクションしていました。アントワネットのコレクションの中には平安時代における女流歌人である小野小町の詩が書かれた硯入れがあります。
参考資料
服藤早苗『「源氏物語」の時代を生きた女性たち』NHK出版 2023年
すみだ北斎美術館「北斎が紡ぐ平安のみやびー江戸に息づく王朝文学」(企画展)
徳川美術館「魅惑の源氏物語 秋季特別展 みやびの世界」(企画展)