庵野秀明氏、新たな『宇宙戦艦ヤマト』のアニメ映画製作と識者が語る“庵野流”キャラクタービジネス

『エヴァンゲリオン』シリーズの監督である庵野秀明氏が代表取締役を務める株式会社カラーが、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』をベースとした新作アニメを製作すると発表し、早速関心を集めている。

『シン・ゴジラ』(2016年)、『シン・仮面ライダー』(2023年)など、過去の名作を独自の解釈で映像化している庵野監督。2025年からのプロダクション開始を目標に、新作劇場作品を現在鋭意企画進行中とのことで、新作アニメ映像は、2012年公開の『宇宙戦艦ヤマト2199』から始まり、2024年11月22日に第二章が劇場公開される『ヤマトよ永遠に REBEL3199』に連なるリメイクシリーズとは“異なる航路を進む作品”になるという。

庵野監督「比較的自由な権利を得た」

庵野監督は16日、「自分にとって『ヤマト』は同時に複数の世界が存在する作品」だとし、幼少期から親しんできた「ヤマト」への思い入れを表明。新作について、「比較的自由な権利を得ました」としたうえで、「だからこそ、中2の自分の夢を叶えるという小さな目標ではなく、次の100周年に継続する可能性の高い作品群にするべく心掛けています」と、自由に自分ならではの作品作りをする意思を示した。

 幼少期からアニメや特撮作品を愛し、オタク的側面を持つ庵野監督は、自らが影響を受けた作品の映像化に積極的だ。前述の実写映画『シン・ゴジラ』、『シン・仮面ライダー』では監督を務め、『シン・ウルトラマン』(2022年)では製作・企画・脚本などを担当した。さらにさかのぼると、2004年には永井豪の名作マンガを実写映画化した『キューティーハニー』とそのスピンオフとなるオリジナルビデオアニメ『Re:キューティーハニー』も監督している。

 また、『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』、『シン・仮面ライダー』においては、異なる世界を描いている作品でありながら、同一人物のようにも見えるキャラクターが各作品に登場するなど、作品間のつながりが垣間見えるという点も庵野作品の特徴となっている。新しく製作される『宇宙戦艦ヤマト』が過去の庵野作品とどのように絡み合っていくのかにも注目が集まる。

キャラクタービジネスへの期待も

 このような庵野監督作品における横断的な試みは、これまでキャラクタービジネスにおいて大きなメリットも指摘されてきた。たとえば前述の『シン』を冠とした実写映画3作品と長編アニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の4本は、「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」として、コラボレーション企画を実施。さまざまなイベントの開催やグッズの製作が行われている。さらにパチンコ・パチスロでは、「ゴジラ対エヴァンゲリオン」という2作品のコラボシリーズも登場した。

 アニメ関連の講師やライターとして活動するいしじまえいわ氏は、新作の『ヤマト』について「まだ作品タイトルに”シン”が付くとは発表されていないため、今回の『ヤマト』は“シン”とはまったく別のユニバース作品になる可能性もある」としたうえで、庵野監督のキャラクタービジネスの特異性を挙げる。

「新しい『ヤマト』に“シン”が付くにせよ付かないにせよ、庵野監督は、まずは作品そのものを面白くすることに注力されるでしょう。その後に続くキャラクタービジネスに関しては、今回もファンが予想もしないようなものになるはずです。

 というのもかつて庵野監督は、ロボットアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』側からのオファーを受けて、2018年から何度も『エヴァ』と『シンカリオン』のコラボを実現しています。その時は作中に『エヴァンゲリオン』のエヴァやシンジくんなどが登場したり、高橋洋子さんの『残酷な天使のテーゼ』が流れたりエヴァに変形する新幹線玩具が商品化したりするなど、ある意味シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースよりもコアなコラボが実現しました。

 エヴァが新幹線になる、ゴジラやウルトラマンやライダーと合体して巨大ロボになるなど、特異なコラボが生まれるのは、庵野監督自身の作り上げた世界観の魅力に惹かれた企業が、さまざまなコラボ案件を企画・提案するから。監督側はそのなかからファンが驚く面白そうなものを選んで実現している、という印象です」

 幅広い年齢層にファンがいるからこそ、想像もつかないキャラクタービジネスが誕生するということでもある。庵野監督の作家性がより濃く出そうな新作『宇宙戦艦ヤマト』においても、作品はもちろん、長くアニメや特撮を愛しているファンにとっては奇跡のコラボも多数展開されそうだ。

2024/10/21 12:00

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