『シビル・ウォー アメリカ最後の⽇』音響設計を担当したグレンさんに聞く「兵士が戦場で直面している緊迫感をサウンドデザインする」

A24が、史上最⼤の製作費を投じ、アメリカで起きる内戦を描く、2024最⼤の衝撃作『シビル・ウォー アメリカ最後の⽇』が大ヒット上映中です。メガホンを執ったのは、『28⽇後…』で脚本を担当し、⻑編デビュー作『エクス・マキナ』で 第88回アカデミー賞(R)視覚効果賞を受賞する快挙を果たしたアレックス・ガーランド。

本作で、音響設計を担当したグレン・フリーマントルさんにお話を伺いました。

◆映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のオファーを受けた時のお気持ち。脚本やプロットを読んだ感想を教えてください。

誰からの仕事でもお話をいただけるとありがたいんですけれど、アレックスとは長い関係をずっと築いてきたので、彼がどういう監督かということを知っていますし、他の監督では味わえない体験をさせてくれる方だと思います。常に限界に挑んでいるので、今回もどんなことが待ち受けているのかなという期待感がありました。

脚本を読んだ時にはシーンについてあまり想像をしないようにしています。出来上がった映像を見ると、全く違う印象を受けるからです。撮影を終えてファーストカットを見せてもらって、そこで新しいアイデアが浮かんで、彼がどういう色合いを使っているのか、どの方向に向かっているのかということを確認してから、全体のコンセプトを話し合うようにしています。そこから6、7か月の編集が始まるわけですけれども、アレックスと旅を一緒に共にするという感覚なのです。

◆とてつもない緊張感に包まれた音響でした。どの様なガジェットや機材、手法を使っていますか?

銃声音を録音しなければいけない場合は、実際に銃を使用したり反響音を録音しています。レースカードライバーが常にレーシングカーを使う様に、私もいつも同じツールを使っています。自分のスタジオに戻ってからは、ドルビーアトモスのプロツーをを使って、サウンドデザインを行います。本作に関してはあまりアナログな手法は使わなかったですね。過去作ではそういう作品もあるんですけれども、今回は全てデジタルな手法で音を作っています。

◆これまでに素晴らしい作品に携わっていらっしゃいますが、本作の音響を作る上でどの様なことが一番難しかったですか。

1番難しかったのは、緊迫感あるリアルな音を作り出すことだったと思います。兵士が戦場で直面している緊迫感を再現することですね。ネイビーシールズの経験者とも話すことができたんですけれども、彼らが戦場で何を感じているか、何を考えているか、どのような音を体験しているのか、サウンドデザインにおいて再現するようにしました。 一度、音を全て編集し終えて、数週間寝かせて、再び戻ってきて、「ここはこうした方がいいんじゃないか、これこうした方がもっとダイナミックに聞こえるんじゃないか」という様な時間を持てたことで完成度が高くなったと思います。

自分たちが頭の中で感じて表現したいと思ったことを、いかに皆さんの耳とハートで感じてもらえるか。そこが難しかったです。

◆完成した作品をご覧になってどの様なことを感じましたか?

監督とスタッフとみんなでIMAXシアターで試写を観たのですが、作った自分たちでも「すごい」と思わず口にしてしまう様な満足感でした。IMAXシアターの技師も、「こんなに良い音の映画は初めてだ」と絶賛してくれて、本当に満足のいく出来でしたね。ここまでリスクを取る監督は少ないと思うんですよ。20分間音楽無で撮影する様な監督はなかなかいなので、そういう方と一緒に働けたっていうことも大きいです。映画の内容が素晴らしいことはもちろん音についても多くの評価をいただけていることが嬉しかったですね。

◆グレンさんが音響の道に進んだきっかけはどんなことですか?

子供の頃、成績があまり良くなかったんですが、外を眺めてぼうっと想像を膨らませたり、何かを作ることが常に好きでした。映画の仕事は16歳の頃に見習いとして始めたんですが、最初は制作のアシスタントとして入って、その後音響の方に行き、音響って面白いなと自然に導かれていきました。音響に携われるようになって、音というものがいかに人々の感情に影響を与えてるかと気付き、それがすごく面白いなと思いました。作品の中で、「自分だったらどんな音が頭の中で聞こえてくるのか」ということを想像してみたり、自分が置かれた状況によって、音の感じ方ということが変わってきます。そういった音の魅力に取りつかれて、この48年間続けてきたというわけです。

「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」

映画の舞台は、連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“⻄部勢⼒”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武⼒衝突が繰り広げられていた。「国⺠の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている」。就任“3期⽬”に突⼊した権威主義的な⼤統領はテレビ演説で⼒強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は⽬前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4⼈のジャーナリストは、14ヶ⽉⼀度も取材を受けていないという⼤統領に単独インタビューを⾏うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を⾏く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

監督/脚本︓アレックス・ガーランド

キャスト︓キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニ―

配給︓ハピネットファントム・スタジオ

原題︓CIVIL WAR|2024年|アメリカ・イギリス映画|109分|PG12

公式HP︓https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/

公式X︓@civilwar_jp

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2024/10/19 17:00

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