【24年秋ドラマ】『潜入兄妹』第3話 「万事休す」を繰り返す急展開と、切なすぎる裏切りの予感
闇バイトやらハッカーやら現代的なモチーフを香港ノワールの世界観に落とし込み、毎回、2~3度は主人公たちに「万事休す」な事態が訪れるドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺匿名捜査官』(日本テレビ系)も第3話。
筆者のお気に入りキャラである始末屋・櫛田(フェルナンデス直行)は今回、組織から「プログラムを盗んでマリナという女に渡した」という受け子がなかなか口を割らないのに腹を立て、ご自慢のネイルガンでブスブスにブッ刺した上で死体を焼いたりしていました。ステキ。
では、振り返りましょう。
■「鉄の掟」とチームワークの話
“警察の犬”として詐欺集団「幻獣」に潜入し、詐欺の片棒を担いているキイチ(竜星涼)とユキ(八木莉可子)の潜入兄妹。彼らには、同じく潜入捜査官だった父から受け継いだ「鉄の掟」がありました。
奪うのは、黒い金だけ。
今回、潜入兄妹が潜入したハコに課せられたミッションは、オレオレ詐欺に使う5,000人分の名簿を入手すること。幻獣の幹部・朱雀(白石聖)の持ち駒だった名簿屋のジジイが死に、その教え子である重信という曲者とのコンペだといいます。
悪人以外は騙さないと決めているキイチは、起訴前の犯罪者たちの名簿を検察から盗み出すことを計画。彼らに電話で示談金詐欺を仕掛け、ため込んでいる黒い金を奪うという計画を立てます。もともと黒い金なので騙されたほうも被害届を出せないし、どうせ収監されちゃうので幻獣にとってはオレ詐欺よりよっぽど効率的な名簿です。
清掃業者に変装して検察に潜入した兄妹でしたが、偶然居合わせた女性検察官になぜか正体を見破られ、通報されてしまいます。兄妹の身柄は、あっさり確保。今回、1度目の万事休すです。
しかし、ここではハコメンバーのプランBが発動。なんとか警察からは逃げおおせたものの、名簿の入手は絶望的になりました。画面には「首を切られるまで6時間」と赤文字で大書き。早くも2度目の万事休すが訪れました。
実はこの女性検察官の正体が重信でした。重信はキイチたちを尾行して計画を察すると、検察バッジをつけて検察に潜入。キイチにぶつかったふりをして盗聴器を仕込み、キイチたちの計画をそのままトレースする形で示談金詐欺の名簿を手に入れます。
ここからは、キイチと重信、どちらが相手をハメて出し抜くかという知恵比べ。ユキのハッカー能力によって重信の正体を丸裸にし、一度は取引が成功したかに思わせて重信を警察に確保させるまでの段取りは実に爽快、気持ちのいい騙し合いでございました。
今回は、ハコのみんなの力も大いに借りてミッションを成功させたキイチ。ハコにはチームワークが芽生え始め、コトが終わると幻獣からの分け前も入って大盛り上がり。ハコメンバーに心を開き始めたユキに、キイチは「勘違いするな、あいつらはただの犯罪者だ」と念を押すのでした。
そして家に帰ったら、玄武、朱雀につづく3人目の幹部・白虎(黒谷友香)の姿が。キイチとユキの部屋には壁一面に幻獣の組織図やらが貼ってあるので、2人が“警察の犬”であることがモロバレ。今回最後の万事休すで「最悪だ~」次回へ。
■情と裏切りのエクスタシー
潜入した犯罪組織の中で、仲間として仕事をしている連中に助けられ、情が湧いていく。それは、いつか訪れる裏切りへの序章である。
ハコメンバーがみんな無邪気でお人よしで、キイチとユキを信じ切っている。でも、キイチの言う通り「あいつらはただの犯罪者」なので、心を許してはいけないし、まとめて捕まえるときがくる。
もうね、この配置だけでよだれが出ちゃうんです。これでハコメンバーの誰かがキイチとユキのために死んでくれたりしたらもう最高なのよね。ノワールは情と裏切りのエクスタシーですから、ハコのみんながいいやつであればあるほど裏切り甲斐があるというものです。
ここまでちゃんと世界観とコンセプトが固まっていると、ホントに安心して見ていられます。先週も書いたけど、毎週日本語でこの手のドラマが見られるというだけでしばらく楽しいのです。
注文を付けるとすれば、コトが終わった後のハコでの宴会ね、もうちょい食事面を充実させていただきたいと、それくらいですな。
(文=どらまっ子AKIちゃん)