お弁当に冷凍食品を入れることは禁止? お弁当作りは、プライスレスな時間を育むもの

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

お弁当を作る、プライスレスな時間

お弁当に冷凍食品を入れることを禁止している幼稚園の話を聞きました。

栄養面からそのような禁止事項になるのか、わかりません。母親の手作りが子どもの心を育てる、という観点によるものかもわかりません。

どちらにしても、『禁止』というのは、いささか厳しすぎるなあと思います。

朝は、時間と段取りの勝負。毎朝のルーティンを川の流れの如く、お菓子がベルトコンベアの上で出来上がるが如く進めたい。

しかし、子どもが小さければ、日々不測の事態が起こります。そして親も仕事に出かけるのであればなおのこと、手をかけていられないこともあります。

そんなとき、ほどよくおいしく、衛生的であれば、時には冷凍ものに頼っていいのではないか。それが愛情不足のお弁当だとは思いません。

お弁当を作る写真

子どもがお弁当をぴかぴかにして帰ってくるとうれしいものです。苦手なものも食べられるようになってくれるのもうれしい。

娘が小学生のときは週に一度のお弁当でしたから、気持ちに余裕がありました。主菜、副菜、ご飯、そしてデザート。バランス、そして彩りを考える。お弁当作りは、私にとって作品作りのようになりました。

「ママ、今日のお弁当おいしかった!」

娘のこんな言葉を聞くと、やる気が出ました。お母さんたちはこんな言葉に励まされ、支えられているのです。

日常の中に埋もれてしまいそうなこんな言葉のやり取りにこそ、人生の喜びがあります。

お弁当を包む写真

娘が中学に入ると、毎日のお弁当作りになりました。

「あー、明日から毎日お弁当か」

と、ぽろっと口にしたとき、娘が言いました。

「ママ、楽しんで作って」

ああ、そうだよね。本当にそう。言葉は魔法のようです。この一言が、「楽しむ」ことの大切さを教えてくれました。

「Yのお弁当おいしそう」

と言われ、お友達におかずを分けてあげたこともあったみたいで、人気のおかずのときは少し量を多く入れたりしたものでした。

中でも『ゆかりチーズおむすび』は人気で、いつも二つ三つ多く作って持たせたり。そして時には、冷凍食品のお世話にもなりました。

お弁当を作る写真

『効率』『便利さ』を求めたとしても、そこに大切なものがあることをしみじみと思います。

プライスレスな想い出や心の触れ合いをより多く持てるような時間を過ごしてほしい。若いお母さんたちを見ていて思います。お弁当、そして食事作りは、そんな時間を育みます。

時は過ぎ去っていきます。ときどき忘れていますが、私たちは取り戻せない瞬間を生きている。人生、思っているより短いのです。

ふっと気づくと、振り返る時間の多さに驚きますから、大切に、大切に。

※記事中の写真はすべてイメージ

作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー

[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。

吉元由美オフィシャルサイト

吉元由美Facebookページ

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