【PLAYBACK PARIS】日本代表選手と強力ライバルの激闘録~Part1~
12日間にわたり繰り広げられたパリ2024パラリンピックのなかで、さまざまなドラマが生まれた。記憶に残る日本代表選手の戦いを、取材班が厳選し、紹介する。
車いすテニス 女子シングルス 決勝
上地結衣 vs ディーデ・デフロート(オランダ)
今大会の車いすテニスは、一味違った。とくに単複2冠を達成した上地結衣の活躍は目を見張るものがあった。
第1セット、最初にペースをつかんだのは上地だった。3ゲーム連取し、4ー1までリードする。だが、相手は女王デフロート。簡単な相手ではない。以降、デフロートが5ゲーム連続で取り、4ー6でこのセットを上地が失う。
第2セットは両者譲らず、ゲームの取り合いとなった。ゲームを決定づけたのは4ー3の上地リードで迎えた第8ゲームだろう。ブレークポイントを取ったデフロートだが、上地がデュースに持ち込む。互いにアドバンテージとなるが、最後は上地のエースが決まった。
第3セットも第6ゲームまで3ー3と拮抗する。第8ゲームでは上地が5ー3とリードを広げるが、デフロートも負けじと取り返す。そして第10ゲーム。上地はリターンや相手のミスでポイントを重ね、王手をかける。
上地が2回目のゴールドメダルポイントを握ると、追い込まれたデフロートがダブルフォルト。セットカウント2ー1で上地が勝利を収めた。同時に、王座に君臨し続けたオランダ一強に風穴を開けた瞬間だった。
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陸上競技 男子400m(T52/車いす)決勝
佐藤友祈 vs マクシム・カラバン(ベルギー)
ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ佐藤友祈には、倒さなければならない相手がいた。それがカラバンだ。
2020年に競技を始めたカラバンのキャリアはそれほど長くない。しかし、2023年の世界パラ陸上競技選手権で佐藤から1位を奪い、同時に世界記録も更新。2024年の同大会でも1位に輝いた。佐藤は、文字通りの“新星”に敗れ、どちらの大会も2位に終わった。
佐藤はパリ大会を雪辱のチャンスとして位置づけた。雨が降り続くスタジアムで、第5レーンと第6レーンに並ぶ2人。両者から、高い集中力が伝わってくる。そして号砲が打たれた。
猛追するカラバンのスピードは、バックストレートでどんどん上がっていく。スタートから20秒を過ぎたところでひとつ外側のレーンでスタートした佐藤とカラバンが並んだものの、最終コーナーを曲がると、先頭のカラバンが佐藤を引き離していく。
何とか追い越したい佐藤だったが、結局カラバンとの距離を縮めることができなかった。ただ、5月の世界パラ陸上で4秒以上あったカラバンとのタイム差は、パリでは1秒16に縮まった。
4年後、佐藤はカラバンを倒せるか。今後の2人に注目せずにはいられない。
柔道 男子73kg級(J2/弱視)決勝
瀬戸勇次郎 vs ギオルギ・カルダニ(ジョージア)
君が代を歌う瀬戸勇次郎の頬を、一筋の涙が流れる。その後、ライバルたちが瀬戸に寄り添うシーンは見る者の涙を誘った。
瀬戸は、決勝まで一本勝ちで進んだ。金メダルまであと1勝。決勝の相手は、瀬戸が苦手とするカルダニだった。
試合は、落ち着いた表情で畳に上がった瀬戸が、開始早々、積極的に仕掛けていく。開始わずか6秒で、背負い投げで技ありを奪うと、その後も瀬戸が猛攻。カルダニも仕掛けるがなか決められない。
勝負が決まったのは試合開始から45秒。瀬戸が出足払いで技あり。合わせ技一本で瀬戸に軍配が上がった。
瀬戸にとって、“因縁の相手”を倒して金メダルを手にしたことは感慨深かったはずだ。
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text by TEAM A
key visual by Hiroyuki Nakamura