「キューバ行き北朝鮮旅客機、爆発し全員死亡」そして将軍様は飛行機に乗らなくなった
北朝鮮空軍が、航空機の整備エンジニアを養成するため、空軍大学の定員を大幅に拡大することを軍内の朝鮮労働党委員会に提案したという。
デイリーNKの内部情報筋は12日、「空軍司令部の党委員会は今月初め、空軍部隊の飛行機整備人材の専門性強化のため、技術整備指揮官の養成規模を質的・量的に拡大する対策を盛り込んだ提案書を人民軍党委員会に送った」と伝えた。
理由は簡単だ。事故の多発である。空軍では、現在まで発生した航空機事故の原因は機体の老朽化だけでなく、整備における技術力不足と見ているのだという。
北朝鮮空軍の航空機は導入から数十年も経ったものばかりで、大規模な訓練を行うために墜落事故が起きているとされる。当面、新しい機体が導入されそうな気配もなく、それだけに整備の重要度が増しているのだろう。
これは、民間航空にも言えることだ。北朝鮮の民間航空の人材供給源は軍以外に存在しない。北朝鮮の航空部門の信頼性がいかに低いかは、2018年、金正恩総書記がシンガポールでトランプ米大統領と会談した際、中国政府から借りた要人専用機に乗って行ったことでもわかる。
それでも、乗り物好きで知られる金正恩氏は、短距離であれば自分の専用機を頻繁に使用していた。
それに対し、彼の父である金正日氏は、どんなに遠くへ外遊する際にも決して飛行機を使おうとしなかった。正確に言えば、1965年に父・金日成主席のインドネシア訪問に同行した際には、いっしょに飛行機に乗っている。
それなのに、最高指導者になってから一度も飛行機を使わなかったのは何故か。そのヒントは、金正日氏の側近だった崔益奎(チェ・イクキュ)元党宣伝扇動部副部長が書き、北朝鮮国内で出版された『主体(チュチェ)芸術の嚮導性』という書籍の中に出てくる。
1970年代のある年に、国内最高峰の芸能集団である「血の海(ピパダ)歌劇団」がキューバ公演に向かう途上、乗っていた旅客機が爆発。劇団員が全滅した事件があったのだ。
(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路)
金正恩氏はこれにショックを受け、飛行機に乗らなくなったとの説があるのだが、真偽のほどは定かでない。
だが、北朝鮮の航空部門は昔から致命的な問題を抱えていたと見られ、これから整備人材を強化しても、抜本的な解決につながるかは微妙だろう。