一流アスリートはこう食べる!勝つための食事の流儀|【1】ボートレース界のレジェンド・瓜生正義

●一流アスリートは普段、何をどう食べているのか? 最低体重制限が設けられているスポーツボートレースの選手会長で現役トップレーサーの瓜生正義選手(日本モーターボート選手会代表)に聞いた意外すぎる食事の流儀と、「食」にまつわる全てのコト。

 日々、私たちを楽しませくれるスポーツ選手たち。その力強い活躍ぶりは生活にちょっとした潤いを与えてくれます。スポーツ観戦を楽しみつつ、いつも思うのが、「一体、何を食べたらそんなに強くいられるのだろう?」ということ。そこで、気になるスポーツ選手の食生活に迫る連載をスタート!

 第1回目は、ボートレーサーの瓜生正義選手です。

 ボートレーサーといえば、最低体重制限が設けられているスポーツ。体重がレースの勝敗に大きく影響するため、男子は52kg、女子は47kgを最低体重とし、過酷な減量が必要とされると言われています。そんな中、30年もの間、トップレーサーであり続ける瓜生選手に、食生活や減量などについてインタビューしました。

 瓜生選手は最初からスゴかった! 1995年にデビューを飾り、わずか3走目で初勝利。翌年には一般競走で初優勝を飾るという快挙を成し遂げます。SG優勝11回、GI/PGI優勝21回、通算優勝は90回、通算勝率は7.56という成績は、まさにボートレース界のレジェンド。現在は(公社)日本モーターボート選手会の代表を務め、通称「正義のヒーロー」と呼ばれるA1の中でも別格の選手です。

 レース開催中は、外の社会から完全に隔離されるボートレーサー。外部と連絡が取れる携帯電話などの通信機器は、レース場や宿舎に一切持ち込むことはできないというルールがあります。また外出も禁止、全ての食事は宿舎で取ります。

 宿舎ではどんなものを食べているのか? ダイエットは? チートデイは? 勝負めしはある? など、興味は尽きません。そんな疑問を伺うべく、選手会がある六本木に瓜生選手を訪ねました。

勝負めしは王道の“とんかつ”! 意外にもよく食べる瓜生選手の食生活とは?

 連載「一流アスリートはこう食べる!勝つための食事の流儀」。第1回目のゲストであることを伝えると、「僕でいいんですか?」と笑う瓜生さん。それでは食にまつわる全てのこと、聞かせていただきます!

――1日の食事の回数は?

 瓜生選手(以下同):レース場だと1日2食。レースの時も基本、お昼を食べないので朝と夜ですね。ナイターの時は朝食は11時に、夕食は21時くらいにとります。レース以外の普段の食事は朝、昼、夜の3食、食べています。

――普段はどのような食事を食べていますか?

 家では基本、家族が好きなものを普通に食べています。例えばカレーとか、デリバリーだったらお好み焼きとかも食べますよ。カロリーはあまり気にしていませんが、ラーメンを食べたら太るな、今食べたらちょっと重いな……と感じた時はやめておきますね。そして、食べた分は1時間くらい長風呂して調整します。代謝が良いのか、1kgくらい減りますよ。

――筋肉に欠かせないタンパク質を摂るなど意識していることは?

 いえ、特にないですね。ブロッコリーを極力食べるなど、野菜をきちんと摂取しようと意識しているくらいです。

――スポーツ選手は良質な鶏ムネ肉を摂取すると聞いたことがありますが……。

 全然、食べないですね。ムネ肉の料理をリクエストしたこともなくて(笑)

――普段、料理はしますか?

 いえ、全くしません。でも、やってみたいなという思いはあります。中途半端なことが苦手だし、今は選手会代表という役職もあるので、一生懸命、料理に向き合える時間がないからやめておこうと。実は結婚するまで、目玉焼きの焼き方も知りませんでした。

――レースではあんなに緻密なのに、目玉焼きが焼けないとは驚き!

 昔、カップ焼きそばに目玉焼きをのせたくて妻に頼んだのですが、え、蓋するの? 水入れるの? と驚いたくらい。もし料理をするなら、調味料をちゃんと計量して本格的にやってみたいですね。

――好きな食べ物は?

 特にこれというものはないのですが、パスタは無性に食べたくなることがあります。お気に入りの店でテイクアウトしたり、出社すれば職員と一緒にイタリアンの店に行って、アラビアータやトリュフのパスタをよく食べています。

――パスタをよく食べることが意外!

 そうですか?(笑) 中華もよく行きますよ。麻布十番の『登龍』がお気に入りで、坦々麺がとても美味しいんです。僕の中の坦々麺ランキングでは1位! 辛いだけじゃなくて旨味があります。

――大切な試合の前の勝負飯は?

 とんかつですね。レースの前日は大体、食べています。昔から親もレースの前日などにとんかつを揚げてくれました。今は下の子2人が小さくまだ外食できないので、『とんかつ 銀座梅林』まで買いに行くことが多いです。

――試合後に食べるものは? チートデイなどはありますか?

 減量しないから、チートデイもないんですよ。なんでも食べて、お風呂で汗を流し調整します。食べ物を我慢することがあまりないんです。

――それは他のボートレーサーからみると普通?

 人によると思います。でもレースの最終日に「なんでも食べたい!」という思いはみんな同じ。レース場にいると様々なストレスがかかるので、終わった後はみんな我慢しないと思う。僕も最終日が終わったら、美味しいものをお腹いっぱい食べます。

外出禁止のレース期間中の食生活と、宿舎で必ず食べるものとは?

 ここまでの瓜生さんのお話では、減量と格闘するという姿は全く見受けられませんでした。よく食べて、体重を調整するのは長風呂で汗を流すだけ、という意外な事実……。そこで、レース期間中はどのような食事をしているのか、外出できない宿舎での食事はどんなものなのか、伺っていきましょう。

――レース期間中の宿舎ではどのような料理が出ますか?

 僕がデビューしたころからは随分、変わりましたね。以前は定食みたいなものが多かったけれど、今はバイキングが主流。種類豊富な料理の中から好きなものを取れます。もちろん、体重のことも多少気にしながら選んでいます。

――どこのレース場が美味しいなど、お気に入りはありますか?

 どこのレース場も基本的に美味しいですね。戸田、唐津が美味しかったような記憶があります。品数も多く、種類が豊富。あと、芦屋も品数が多くて美味しいです。

――間食はしますか?

 レース場ではあまりお菓子は食べませんが、時々チョコレートを持って行ったりします。宿舎に帰ってきたら、お風呂上がりにだいたいスナック系、ポテトチップスをよく食べています。売店にあるお菓子やジュースを買って食べると、ストレス解消になって落ち着くんです。もうルーティーンになっていて、食べないで寝ると物足りない感じ(笑)。

――レース中、お酒は飲めないんですか?

  はい、禁止です。売店にも売っていません。

――お酒はよく飲まれますか?

 はい、飲みます。基本、ビール党です。最初にビール、そのあとハイボールなどを飲んでも、最後はまたビールに戻るんですよね。

――自由に食事し、ビールもたくさん飲むとは想像外でした。

 そうなんです。だからこのインタビューのお話が来た時、「俺で大丈夫?」と聞いたんです(笑)。食のこだわりもないし、好きな店に3日連続で行って同じものを食べても全然大丈夫。なんでも食べるんです。

最終日、レースが終わった後の食事は格別! お腹いっぱいにおいしいものが食べたい

――全国各地に行かれますが、選手同士で食事に行きますか?

 レースが終わって管理が解除されたら、一緒に帰る人や同じ支部の人たちと食事に行きます。終わったらほっとして力が抜け、たくさん食べますね。

――福岡支部の選手たちと打ち上げは?

 だいたい最終の飛行機を取っているので、コロナ以前はいつも打ち上げをやっていました。お疲れさんという感じでご飯を食べて、お酒を飲んで。G1、SGなどのレースでは九州のメンバーでだいたいやっていました。

――福岡出身、福岡支部ということで、福岡の好きな食べ物を教えてください。

 もつ鍋とか水炊きとか、イカの活けづくりとか。福岡は東京と違って焼鳥屋に豚バラ串があり、とりあえず頼むのが普通。だから東京に初めてきたとき、「なんで豚がないんだろう?」と思いました。

長く活躍する秘訣、今後の目標は?

――長く活躍する秘訣を教えてください。

 身長が低く、身体的に恵まれたということもあると思います。それを生かすも殺すも、考え方次第。「どうしたらエンジンが上がるか」など、常に思考しているからだと思います。そして、レースで負けると、「あの時のハンドル捌きは違ったな」「もっとこうできたな」と反省します。それは勝ったレースでも同じ。たまたま勝てたという場合もありますから。

――ボートレーサーの中には70代の選手も活躍されています。今後の目標を教えてください

 50歳までは続けたいと思っていて、妻にもそう言っていたんです。それを決めたら、目標ができた。しかし子供が増え、55歳になってもまだ12〜13歳の子もいる。とりあえず子供が育つまで、上の世代になっても走れるといいなと思っています。でも宝くじが当たったら、55歳くらいでやめようかな(笑)。

――この先もずっと勇姿が見られることを期待しています!

 ありがとうございます。

 終始笑顔でインタビューに答えてくれた瓜生選手。さすがは選手会長、優しい人柄にますますファンになりました。食事にこだわりはなく、意外にも一般的な食生活で好きなものを食べ、長風呂で体を絞るというスタイル。レースの重圧やストレスを緩和させるためのライフスタイルを送っていました。今後のご活躍も期待しています。

●著者プロフィール

矢巻美穂(やまき・みほ)

国内外の旅行雑誌を中心に活動するカメラマンで、撮影から執筆・編集作業まで行う。単著としてネパール、台湾、ウズベキスタン、韓国、ウラジオストクなどのフォトガイドブックを執筆。近著は『東京で台湾さんぽ』(イカロス出版)。また、YouTubeで「旅ちゃんねる MinMin Tour」をオープン。これまで取材に行って、本当に美味しかった店や行ってよかった人気スポットを紹介。

2024/8/30 20:00

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