夫や妻にダンマリ、泣き叫ぶ…ホルモンを理由に配偶者を攻撃していいの?

こんにちは、斗比主閲子です。

突然ですが、結婚生活をしていて、夫や妻の言動に怒りを覚え、何を言われてもダンマリしたり、泣き叫んだりしたことはあるでしょうか。

この連載の担当編集者さんに聞いてみたところ「身に覚えあります! ホルモンを理由にしてきましたけど、よくダンマリしてました……」ということでした。

私の観測範囲では、ダンマリは男性に、泣き叫ぶのは女性に多い印象があります。繰り返しですけど、私の観測範囲です。

ダンマリ・泣き叫びで得るもの・失うもの

ダンマリしたり、泣き叫んだりすると、された方は結構ダメージがあります。

「ダメージを与えるためにやっているんだから、やって正解なんだな!」と思うと危険です。このダメージを具体的に説明すると「この人と一緒に暮らしているのはシンドいな」という類の嫌な気持ちに相手が陥るというものです。

ダンマリでも、泣き叫びでも、「あなたとはあなたが理解できる言葉で会話をするつもりはない!」というアピールです。「それほど嫌なことがあったんだな」というのが伝わる一方、相手としては「確かに嫌なことがあったかもしれない。自分が何かしたかもしれない。でも、どう解消したらいいか、話ができないから分からない」とも思います。

ダンマリや泣き叫びで、対応しようがない怒りをぶつけられるのが何度も何度も繰り返されていくうちに、相手は徐々にコミュニケーションに臆病になったり、面倒になったりします。地雷がどこに埋まっているか分からないので、対処のしようがないですからね。そうして、徐々に徐々に「この人とは一緒に暮らせない……」という気持ちが育っていくわけです。

そうはいっても感情表現が苦手な人はいる

では「嫌なことがあったらダンマリや泣き叫ぶのは止めましょう」「相手が分かる言葉で何が嫌か説明しましょう」というのを教訓にしても、簡単にできるかといえばそうじゃないですよね。いい大人ができないのには(ホルモンに限らず)理由がある。

私は子どもを育てているんですが、子どもはかなり頻繁にダンマリしたり、泣き叫んだりします。「何があったの?」と親が質問しても、子どもが「わーん」と泣き続けているのを見られたことがありますよね? あれです。

子どもがダンマリしたり、泣き叫ぶのは色々な理由があります。

代表的なものは、子どもには何が嫌だったか説明する能力がないこと。語彙は少ないし、自分が置かれた環境を客観視できませんから、誰かに自分の窮状を説明しようにも語る言葉が出てきません。

あとは、たとえ説明したとしても周りが反応してくれないことを経験していること。ダンマリしたり、泣き叫ぶ方がアピーリングですからね。「友達に何時何分に玩具をこういう経緯で取られた」と説明している幼児と、「わーん」と泣き叫ぶ幼児がいれば、泣き叫ぶ幼児に注目が集まり、優先して対応されるものです。

大人でダンマリしたり、泣き叫んだりしている人も近いものがあると思っています。嫌なことを表現するのに慣れていないとか、上手く説明できても人から大切にされたことがないとかですね。

ダンマリする・泣き叫ぶ人が自分でできること、周りができること

私の子どもがダンマリしたり、泣き叫んだりしているときは、まずは本人の顔を見て、時には抱きしめながら、「嫌だったんだね」「辛かったんだね」と伝えています。こうすると本人が「自分は嫌だったんだ」「辛かったんだ」と自分の感情に気付くことができます。

感情の存在に気付けば、他人に「辛い」「悲しい」と伝えることもできるようになり、感情のコントロールの仕方も学べるようになります。幼稚園や保育園の先生がよくやっているテクニックです。

ただ、子どもが大きくなり、語彙も増え、自分の感情にも気付いているのに、ダンマリや泣き叫びをやるようだと、それには反応しないようにしています。親が察して反応してしまうと、ダンマリや泣き叫びで人が動くことを学んでしまいますから。一方で、子どもが説明したことはしっかり受け止めて、対応をする。

子ども相手も大人相手も、接する態度は基本同じだと思います。違いがあるとすれば、大人はより自分で自分を客観視できること!

ダンマリや泣き叫びをしがちな人は、まずは自分が辛いと認めることがスタート地点だと思います。「すごく嫌な気持ち!」と心の中で認めて、そのあと何が嫌なのか書き出してみる。中に溜め込むのではなく、言葉で外に吐き出す力を養っていくわけです。

ダンマリや泣き叫びをしがちな人と今まさに一緒にいる人は、「嫌だったんだね」「辛かったね」と本人が感情を認識し、言語化することをサポートしてあげるといいですね。そして、相手が言葉で何が嫌かを説明したら、ちゃんと反応すること。聞き手がボールを受け取らなければ、相手はダンマリや泣き叫ぶようになってしまいます。

お互いに伝えたいことがあればホワイトボードの前で

自分の中で感情を言語化するところまではできたとして、嫌なことを相手に伝えるというのは結構難しいものがあります。

嫌なことを伝える、ということは、相手にしてみれば、自分への攻撃だと受け取られることがありますからね。「毎日ゴミ出しをしてほしいんだけど」が「あなたは怠惰だ」と脳内で変換されちゃうことがある。攻撃だと受け止めてしまったら、反撃をする。そうして、気付いたら、喧嘩に発展してしまう。

嫌なことを相手に伝えるときに私がお勧めするのは、ホワイトボードや紙を目の前にして、そこに書き出すことです。

こうすると、誰かの嫌なことが客観的な問題として見えてくるんですよね。嫌なことは相手への攻撃ではなく、紙に書かれた2人の問題になる。 紙に書き出して、その上で解決策も整理すると、言った言わない論争も起きないし、多弁なほうが勝手に結論を誘導することも避けられます。

お互い愛し合って結婚生活を送っているわけですからね。コミュニケーションの方法が上手くないぐらいで、ダメになっちゃうのはもったいない。嫌なことをお互いに気軽に共有し、解消できたほうが楽しいと私は考えています。

Text/斗比主閲子

初出:2017.03.15

2024/7/18 0:30

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