パリ五輪開幕! スケートボードの観戦を楽しむ三つのポイント

 日本人選手の活躍で世界中を驚かせた2021年開催の東京五輪がまだ記憶に新しいですが、パリ五輪がついに開幕します。前回から正式種目となったスケートボード。「13歳、真夏の大冒険!」などといった名実況も生まれましたが、皆さんは楽しめましたか。「なんかすごいけど、どうすごいか分からない」「なんでみんな音楽を聴いているんだろう」など、いろいろと不思議に思ったポイントもあるのではないかと思っています。そこで、パリ五輪でスケートボードの観戦を楽しむための三つのポイントを紹介します。

●はじめに:プロスケートボーダー兼Webエンジニアの武石です!

 まずは自己紹介をさせてください。武石レオです。スケートボード歴25年で日本スケートボード協会公認のプロスケートボーダーとして活動し、近年は競技選手の発掘や育成、競技の審査などに携わりつつ、スケボーYouTuberとして約1万6000人のチャンネルも運営しています。

 スケートボードへの情熱が高じて、スケートボード業界のデジタル化を目指し、Web開発の勉強を始めたところ、良いご縁をいただき、ヌーラボでWebエンジニアとしても勤務することができました。競技に関しては、20代の頃に世界大会に出場した経験もあり、競技には参加するのも観戦するのも大好きで、日頃から世界大会などで選手たちの動向や調子を常にチェックしており、スケートボードを軸とした人生を歩ませてもらっています。

 今回、そんな私だからこそお伝えできる観戦の楽しさを、読者の皆様にお伝えできれば嬉しいです。

●パリ五輪のスケートボードの種目と日程をおさらい

 パリ五輪のスケートボードはパリ中心部のコンコルド広場で開催され、東京五輪と同様、「ストリート」と「パーク」の2種目となっています。

 ストリートは、コースを自由に滑走する45秒間のランを2回行う「ラン」の最高得点と、好きな障害物を使って高難易度のトリックに5回挑戦する「トリック」の高得点二つ、計三つの合計で各ラウンドの順位が決まります。

 パークは、コースを自由に滑走する45秒間のランを3回行い、最も高い得点で各ラウンドの順位が決まります。

 種目ごとの日程は下記の通りです(※日程は変更になる可能性あり)。

(1)7月27日(土)

19時~ 男子ストリート予選

翌0時~ 男子ストリート決勝

(2)7月28日(日)

19時~ 女子ストリート予選

翌0時~ 女子ストリート決勝

(3)8月6日(火)

19時30分~ 女子パーク予選

翌0時30分~ 女子パーク決勝

(4)8月7日(水)

19時30分~ 男子パーク予選

翌0時30分~ 男子パーク決勝

●観戦を楽しむ三つのポイント

 各種目のスケジュールを把握したところで、観戦を楽しむ三つのポイントについて紹介していきます。

ポイント1:スケートボーダーの自分の心との戦いを見よ!

 スケートボードは見た目以上に繊細な乗り物であり、技の成功には選手のメンタルが大きく影響します。技の動作において、足のポジションや動かし方が僅かにズレるだけで失敗する可能性が高まります。ズレをなくすために、選手たちは長期間の練習に励みます。その成果を最大限に発揮するために、当日は強いメンタルとマインドを持って競技に臨みます。

 特に上位層になると1ポイントの差で順位が変わるため、他の選手の滑りや得点を気にしつつも、自分のパフォーマンスに集中し、高難易度の技を成功させるための強いメンタルが求められます。例えば、大会のプレッシャーの中で集中力を保つために、音楽を聴きながら滑る選手や、特定のルーティンや仕草をする選手など、自分のパフォーマンスの引き出し方を熟知した選手たちが、その日一番の集中力を発揮します。

 「絶対に成功させる」という強い気持ちが、技を成功させるカギとなり、その想いが一番強かった選手に栄光が輝くといっても過言ではありません。野球で例えるなら、9回裏満塁で迎えるツーアウトツーストライクのバッター、サッカーで例えるなら、あと1点で勝利が確定する最後のPKキッカーのような心理状態に近いのかもしれません。

 プレッシャーの中で技を成功させようとする集中力が見える瞬間、そして技を成功させた時の選手の開放された表情や喜びは、観戦者にとっても感動的な体験となります。どの選手も金メダルを獲れる実力がある中で、最後に勝敗を分けるのはメンタルやマインドかもしれません。観戦の際には、選手の表情や仕草にも注目してみてください。

ポイント2:スケートボードの採点基準は選手によっても変わる!? とにかく見たままを楽しむべし!

 スケートボードの技は、難易度や完成度、選手のスタイルによって評価されます。長年、スケートボードを経験している愛好家であれば、選手たちが繰り出す技がいかに難しいかを理解していますが、採点するとなればまた別の話。未経験者にとっては、採点は一層難解に感じられるでしょう。

 それもそのはず、同じ技でも、技の美しさや完成度、選手のスタイルによって見え方が変わり、それが点数に反映されます。スケートボードは、「Aという技は〇〇点」といった点数を標準化したり、数値を決めたりするのが難しいんです。だからこそ、スケートボードが魅力的で多くの人が惹かれる理由にもなっています。

 パリ五輪におけるスケートボードの審査では、技の独創性や難易度、スタイル、流れが重視されます。例えば、回転技の空中での姿勢や、障害物をスムーズに滑っているか、技と技の間にもたつきがなく流れるように滑れているかなど、審査員は選手の細かい動きにも目を光らせています。

 高難易度の技を四輪着地で、いとも簡単に成功させたように見せることができれば、さらに点数が伸びていきます。このような採点基準を知っておくことで、観戦の際に審査員の視点を考えながら、より深く楽しむことができます。

◎ポイント3:推し選手が見つかったら得意技をリサーチ!

 スケートボードは技が無限にあり、選手ごとにスタイルや得意技が全く異なるのも見どころの一つです。技のスムーズさやスピード、力強さなど、それぞれの選手の個性が技に反映されます。選手がどのような流れで技をつなげ、どのように自分のスタイルを表現するかに注目すると、より一層スケートボードの魅力を感じることができるでしょう。

 さらに、決勝ラウンドでは、選手たちが新技や難易度の高い技に挑戦する姿勢にも注目してみてください。ライバルとの差を少しでも広げるためには、高難易度の技の成功が不可欠です。審査員を驚かせることが高得点につながることもあるため、決勝では成功率が低くてもインパクトのある技が披露される可能性があります。パリ五輪でしか見られない「神技」が飛び出す瞬間は、まさに観戦の醍醐味です。

 スケートボードは、技術や個性が融合する乗り物です。選手の得意技や新技、スタイルの違いに注目することで、パリ五輪のスケートボード競技を深く楽しむことができるでしょう。観戦する際には、これらのポイントを意識して、選手たちの滑りに注目してみてください。そして彼らが繰り出す「技」の瞬間を見逃さないでください。

●さいごに:スケートボードは技術とエンタメの最高峰!

 スケートボードはこのパリ五輪という大舞台で、技術とエンターテインメント性の両方を見せてくれます。前回の東京五輪や他の世界大会を超えて、新たなステージでさらなる進化を遂げた選手たちの熱い戦いが繰り広げられることでしょう。

 それと同時にスケートボーダーにとって五輪は一つの競技会に過ぎません。パリ五輪が終わると、各選手はそれぞれの目標に向かい、独自のスタイルや技を追求し続けます。スケートボードは競技の枠を超えたアートであり、遊び心を持った自由で創造的な表現そのものです。本当の意味で世界一を決めることができないからこそ、その魅力は無限に広がっています。

 スケートボードの可能性や魅力を存分に感じながら、パリ五輪での熱い戦いを観戦してみてください。選手たちの素晴らしい滑りが、皆さんの心に深く刻まれることを願っています。(ヌーラボ・武石レオ)

2024/7/26 18:00

この記事のみんなのコメント

2
  • あきひろ

    7/26 19:15

    スケボーといえばおでんツンツン男。

  • いち(

    7/26 18:53

    「なんでみんな音楽を聴いているんだろう」←公園で大音量で音楽流して、手摺や階段なんかを駆け降りたりしてただの迷惑行為が発祥だからですな。

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます