上杉謙信は女性だった?「謙信女性説」にまつわる数々の根拠と異論

 影武者説、同一人物説、海外逃亡説など歴史上の人物にまつわるミステリーや異説は多く存在するが、上杉謙信ほど異質なものはないだろう。上杉謙信といえば、越後国の統一と発展をなし、「越後の龍」「越後の虎」などと称され、武田家、北条家、織田家と肩を並べるほどの勢力を持った戦国大名である。そんな上杉謙信は、実は女性だったのではないかという説が存在するのだ。

「上杉謙信女性説」は、1968年に作家八切止夫(やぎりとめお)が当時の読売新聞の紙面上で提唱した仮説であると言われている。トンデモ説のたぐいと称されるものではあるが、そのインパクトの強さも相まって、ゲームなどの創作物においてはこの設定が用いられるケースがいくつも散見されている。

 にわかには信じがたい上杉謙信が女性であるというその根拠は何か。

 まず、生涯不犯の誓いを立てていたということだ。上杉謙信は、女遊びをしたという記録が他に比べて極端に少なく、女性の影が周囲に見られなかったという。これについては、同性愛者であったという説や、仏門に入っていたために女人を避けていたからだろうという反論もある。

 次に、謙信の周囲に見られる女性的な表現や痕跡だ。福島県の上杉神社に保管されている彼の着物は、赤色が中心であり一目見ると女性ものではないかと思えるようなものとなっている。これについては、伊達政宗などもカラフルな水玉模様の陣羽織を残していることから、戦国武将がお洒落だっただけであるとの意見も見られる。また、ラブロマンスを描いた源氏物語を愛読しており、また源氏物語屏風を織田信長から贈られたという。当時、屏風を贈るという行為は、女性に向けてなされた習慣であったというのも興味深い。

 また、スペイン内戦に使用されていたトレドの修道院から発見された書簡も興味深い。当時ゴンザレスという人物がスペインの国王フェリペ2世に送ったというその書簡には、15~16世紀の日本について記述されており、そこには「上杉景勝は叔母が開発した佐渡鉱山をたくさん持っている」という記述が残されているという。上杉景勝は、米沢藩初代藩主で謙信の養子だった人物であるが、この叔母にあたる人物というのが実は謙信だったのではないかというのだ(叔母を表すtiaと伯父を表すtioの表記を見誤ったのではという反論もある)。

 さらに、謙信の身体的な面についてだ。第四次川中島の戦いや七尾城の戦いにおいて、謙信は戦闘中でありながら毎月10日前後に腹痛を起こして兵を引いていたと言われており、これは月経ではなかったのではというのである。しかも、死因についても『当代記』によれば謙信が「大虫」で亡くなったとあり、この大虫とは現代で言う更年期障害あるいは婦人病を指していると言われている。

 彼の肖像画についても、慶長年間に作られた最古のものと言われる林泉寺に保管されている彼の肖像画には、髭が無くふっくらした頬に描かれているが、江戸時代に描かれた彼の肖像画は濃い無精ヒゲとなっており、男っぽさを強調させるためにヒゲが加えられたのではないかとの意見もある。

 そして、謙信の所領越後では、瞽女(ごぜ、歌を唄って巡業する目の不自由な女性)の唄うごせ唄の中に謙信を「男も及ばぬ大力無双」という一説があり、これが、民衆の中で広まっていたのだという。

 当然ながら、これらはいずれも仮説であり、謙信が本当に女性であったという確実な証拠があるわけではない。それでも、これほどに女性を思わせるに納得できるような根拠がいくつも見られるのは面白い。

 昨今、女性主人公の作品が際立って人気を博しており、可愛さと共に強さを表す少女・女性像が好まれている傾向にある。そんな時代であるからこそ、謙信女性説は廃れることなく一定の関心を寄せているのかもしれない。

【参考記事・文献】

山口敏太郎『日本史の都市伝説』

上杉謙信は実は女性だった!?謙信女性説

https://colorfl.net/uesugikenshinjyosei/#i-7

上杉謙信は女だった?女性説の根拠と真実に迫ります!

https://sengoku-his.com/315

上杉謙信=女性説|6つの女性説と否定説

https://rekishimystery.com/kenshin/

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【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】

2024/7/1 16:00

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