死期が近づくと「見る夢」が変わる! “4つの変化”が顕著に…医師が公開した10年の夢記録からわかること

 死期が近づくと見る夢に変化が訪れるという。夢の世界はより色鮮やかになり、登場する人物の表情がはっきりとわかるようになるというのだ。そして夢の内容もきわめて似通ったパターンが見られるようになるというのである。

■死が近い患者に起こっている“本当のこと”とは

 医師は患者のケアにおいて実証的、科学的な態度で臨まなければならないことは言うまでもない。それゆえ、医療の現場で起こっている“本当のこと”については往々にして“灯台下暗し”となっているのかもしれない。

 米ニューヨーク州の終末期医療施設「ホスピス・バッファロー」で医務官のチーフを務めるクリストファー・カール医師も、それまではそうした“鈍感な”医師の1人であったという。しかしある一件から死期が近い患者が見た夢の内容を真剣に聞き、記録に残すようになったのである。

 この施設に着任してまだ日が浅いある日の勤務で、死期がもうすぐそこまで迫っている患者に対し、点滴を施してわずかばかりの間でも生き長らえさせようとカール医師は患者のいるベッドへ向かった。

 患者の部屋に入った医師は、すでに部屋にいた看護師がベッドにいる患者に何もしようとしないことを不思議に思うも、延命措置をしようと準備を始めた。しかし次の瞬間、その看護師ナンシーに制止されたのだ。

「先生、ノー、ノー。彼は今死につつあります」

「どうしてそんなことが言えるんだい?」とカール医師が疑問の声を上げた。

「彼は今、亡くなった母親と会っているんです」

 長年の看護師としての経験からナンシーは、今まさに死を迎えようというこの患者が、夢の中で亡き母親と親子水いらずの幸せな時間を過ごしていることを理解していたのである。延命措置などせずに、そのままそっとしておいてあげたほうがいいと医師にそれとなく示したのだ。

 この後も似たようなことが何度か続き、最初は懐疑的だったもののカール医師は、死期が近い患者に起こっている“本当のこと”に気づくことになる。

「私以外のスタッフの誰もが、患者が夢で何を見ているか、何を経験しているかに基づいて、ある程度死を予測することができました」(クリストファー・カール医師)

 一転して好奇心を刺激されたカール医師は死期が近いと思われる患者から、見ている夢の内容について話を聞き、それを記録に残すようになったのである。こうしてカール医師をはじめとする病院スタッフがこの10年間にわたって集めた終末期患者の“夢の記録”は1400件にも上るという。

■「それまで見ていた夢とは異なる」

 カール医師らによれば、こうした死期が近い人々は夢の中で心地良さを感じており、徐々に死を恐れなくなっているのだという。そして夢の中では、往々にして当人にとっての最愛の人物が登場するということだ。

 男性患者のホーレスさんは、夢の中で死別している妻がある日から突然現れることが増えてきたと話す。

 また女性患者のジェーンさんは夢の世界がいかに生き生きとした鮮やかな世界であるのかを説明している。

「私は彼らの顔のあらゆる部分をはっきりと見たのを覚えています。それは私のお母さん、お父さん、おじ、そして私の義理の兄弟です。私は気分が良かった。そしてこれらの人々に会えることは気持ちの良いことでした」(ジェーンさん)

 同じく女性患者のマギーさんは、亡くなった姉が夢に出てくるようになったことを話している。夢の中の姉は孤独で寂しいから妹にここにずっといてくれるようにと懇願したという。「今はできない」と断ったマギーさんだったが、姉は「すぐにまた一緒になれるのよ」と言い残したという。今はこの姉の言葉の通り、マギーさんはあの世で再び大好きな姉と一緒に過ごしていることだろう。

「死への恐怖の代わりに、死への恐怖を乗り越える何かが高まります。明らかになっていることとして、人々が口を揃えて言うには、それまで見ていた夢とは異なり、より現実的な光景であるということです」(カール医師)

 米・西ペンシルベニアのラジオ局「KADA」のスタッフは同施設の男性患者であるグレッグ・リエブラさんとカール医師が会話する様子を取材している。

●リエブラさん:私の祖母と祖父がどちらもやってきました。

●カール医師:彼らについての夢を見たということですか?

●リエブラさん:はい。何度も夢で彼らを見ています。

「彼を最も愛し、最も養育してくれたのは祖父母であり、彼らと再び一緒になれるのだ、と彼は言っています」(カール医師)

 夢の中では自分が子どもの姿になっているということだ。

●カール医師:気分は良いですか?

●リエブラさん:はい、確かに。

 この取材の3週間後にリエブラさんは亡くなった。

■夢には“旅立ち”のような共通のテーマも 

「患者は肉体的に衰えていますが、内面では逆にとても活気に溢れて生を満喫しています」(カール医師)

 カール医師は、死が近づくにつれて夢をより頻繁に見ていると指摘し、そして“旅立ち”のような共通のテーマがあると説明している。

 患者のポールさんは、夢の中で最愛の人から旅の準備をするように言われ、スーツケースの中に荷物を詰めている夢を見たという。まさにあの世へと旅立つ準備をしているかのような様相となる。そして死期が近い患者にはこうした旅支度の夢も多く見られているのである。

 また未解決の案件が夢に出てくることも多いという。

 患者のパトリシアさんは、亡くなった夫に伝えられなかったメッセージを夢の中で伝えたことで安堵したという。

「『あなたはこれを大事にしなければなりません。そうしなければ私は本当に怒りますよ』と私は夫に言いました。すると彼は微笑みました」(パトリシアさん)

 子どもの終末期患者の場合、親をはじめ“最愛の人”が誰も亡くなっていないケースもある。その場合、死んだペットが夢に現れてくることもあるという。

「死んだ私の犬の夢を見ています」と少女の患者であるジェシカさんは自分の夢について話す。ジェシカさんは今頃、あの世で愛犬と楽しく過ごしているのだろうか。

 どうして終末期医療患者はこうしたいくつかの限られたパターンで共通した鮮やかな夢を見るのだろうか。しかしカール医師はその“謎”を探求するつもりはないということだ。今後も彼らの“夢の記録”を続けていくだけであるという。

「彼らが何かにとても深く感動し、涙と共に目を覚ます時、それは尊重されるべき出来事です」(カール医師)

 カール医師たちから提供されるこの数々の“夢の記録”から何か重要な発見がもたらされる日はやってくるのだろうか。死期が近い人がみる夢のポイントとしては、

・鮮明な夢

・心地の良い夢

・旅支度をする夢

・未解決の夢

 ということになるだろうか。カール医師たちには今後も興味深い夢の記録を集め続けて頂きたいが、「探求するつもりはない」という言葉も尊重すべきなのかもしれない。

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※参考:「CBS Pittsburgh」ほか

 

※当記事は2019年の記事を再編集して掲載しています。

2024/6/23 8:00

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