「まだ小学生の娘がひどい生理痛を訴えています。どうすればいい?」私たちのころとは圧倒的に違う「生理のときの医療」を改めて学ぶ
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初潮の平均年齢は前倒しが進みました。現在更年期の私たちの世代が初潮を迎える直前、1982年の平均初潮年齢は12.65歳でしたが、2011年には12.23歳へと早まっています*1。ちなみにまで、明治初頭は14~15歳でした*2。
かつては「鎮痛剤は使わないほうがいい」「月経痛は我慢するもの」的なムードもありましたが、この30年で医療は激変。どうやら私たちが思っている「生理の常識」はかなり時代遅れだと思ったほうがいいようです。
勝どきウイメンズクリニック 院長 松葉悠子先生に「昨今の子どもの生理事情」を伺いました。
最近では、婦人科に「9歳、10歳」の患者さんも来院するんです
――まず、先生が診療をなさっている勝どきウイメンズクリニックの特徴を教えてください。
東京の湾岸エリア、タワーマンションがたくさんあり、住民数も多い住宅街に位置します。何代も住むお年寄りから、最近転居してきた子育て中の世代まで、住民層の幅もかなり広め。
当クリニックでは分娩は行わないものの、妊婦検診を手掛けているため、患者さんのメイン世代は20~40代です。7~8割は婦人科関連での来院で、保険適用範囲の生理痛、かゆみなどが主訴の中心。多くはありませんが1桁年齢のお子さんがいらっしゃることもありますし、生理痛では10歳代に入るとすでに来院があります。
――そうした「ごくごく一般的な」街中の婦人科クリニックへの「実際の子どもの来院」について伺います。友人の娘さんが小6(13歳)にして強い月経痛に苦しんでいます。以前、遊びにきてくれた日に月経痛に見舞われ、「痛いよ、痛いよ」とうめきながらソファで寝ているしかない姿が本当にかわいそうでした。ですが、友人も同様の月経痛にずっと苦しんできて、「痛み止めを飲んでもあんまり効かないんだよね、子宮後屈が原因だから出産するまで治らないんだよ。仕方ないよね…」と言っていて。
お母さまがお嬢さまを思うそのお気持ちはお察しするのですが、子宮後屈が100%の原因かといわれると、現在の診断ではそうではない可能性があります。子宮内膜症予備軍である可能性があるため、ここまでのお話だけでも、すでに医療が介入すべき局面だと思います。
――そうなんですね!? 私たちはどうしても「たかが月経痛で病院に行っていいのかな?」「市販の薬でいいんじゃないかな?」と思ってしまいますが……どのくらいからが「来院すべき」なのでしょうか。
まず、痛み止めを飲んで収まらない月経痛はそれ自体が婦人科案件です。保険適応で月経困難症の治療が可能ですので、至急来院してください。自覚的に痛み止めを飲んでも収まらないならそれは「普通」ではないと考えてよいです。
もうひとつ、まだ初潮からすぐでそこまで痛いという点が気になります。というのも、若いうちから月経痛がある場合は子宮内膜症になりやすいのです。もしかして、痛み止めだけではなく、ホルモン製剤を投与して痛みのコントロールのほか月経量や排卵を押さえるほうが将来的な病気の予防になると判断されるかもしれません。
痛み止めを飲んだら「量が増えていく」のでは?漠然とした恐怖感がありますが
――痛み止めも、いちど飲み始めると耐性がついて量が増えていくのではないかという、漠然とした恐怖感があります。この点はどうなのでしょうか、乱用や常用につながらないかと。
まず、月に5日ほどの月経の時にだけ痛み止めを飲んでも、乱用に至る可能性は極めて低いでしょう。腰痛を持っているおじいさんたちなんて365日飲んでいますが、別に乱用していませんよね。薬の量が増えていくこともあまりありませんし、痛み止めのせいで月経量が増えるということもありません。痛みを抑えるだけでなく、子宮の収縮を抑えるため、まずは痛み止めを飲むことが必要です。それで抑えられるのなら、わざわざホルモン剤投与に進むことはありません。
――今回のケースでいえば、市販薬は飲んでいましたが、飲んでも痛い痛いとうめいていました。
それは薬が効いていない、その痛み止めでは効果が得られないということです。通常量を越えて飲んではいけませんが、通常量を越えた量が必要になっていく場合はシンプルに効いていないと考えるべきです。
ですが、もしかして飲み方のコツを体得していないということも考えられます。痛くなってから飲むのではなく、痛みの予感があったらもう飲んでください。早めに飲んで子宮の収縮を抑え、適切に痛みを減らす必要があります。薬の量が増えていく場合はそのままの投与ではダメなサインです。
――薬のチョイスそのものはどうでしょうか。友人は有名ブランドのアセトアミノフェン+イブプロフェン製剤を与えていました。
小学生ならそのチョイスでいいと思います。より他の薬剤との併用がしやすい処方薬もありますが、効いているならば市販薬でじゅうぶん。市販薬が効かない場合が病院にいくサインです。
繰り返しますが、飲んでも痛い場合は「効いていない」のです。30年前なら薬を飲んでも効かないなら「あとは我慢」だったかもしれませんが、いまは別の治療が誕生しています。この10年で圧倒的にいい治療が提案できるようになりましたし、それが将来の不妊症の予防にもなります。月経痛は女子の活動の幅をかなり狭めますから、痛みをコントロールする方法を早いうちから身に着けることはとても大事です。
つづき>>>中学受験をする6年生女子に「夏前にいちど来院して」と呼びかけたい理由とは?( https://otonasalone.jp/?p=415147&preview=true )
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お話/産婦人科医 松葉悠子先生
勝どきウィメンズクリニック 院長。金沢大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院、日立製作所 日立総合病院、東京都保健医療公社 豊島病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務。
勝どきウィメンズクリニック(産婦人科・婦人科)
東京都中央区勝どき2-10-4 宮野海運ビル4F
03-3536-7723
公式サイトはこちら( https://www.kachidoki-women.com/ )