“清純派優等生”というイメージが仇に…失言事件と薬物逮捕で2度の転落を味わった沢尻エリカの“今”

自業自得と言われてしまえばそれまでなのですが、芸能界広しと言えど、彼女ほど波乱万丈な役者人生を歩んでいる人も、なかなかいないのではないでしょうか。

今年2月、4年ぶりに役者として復帰した沢尻エリカさんのことです。

2019年、麻薬取締法違反の疑いで逮捕され、執行猶予3年・懲役1年6ヶ月の有罪判決を受け、表舞台から姿を消していた沢尻さん。今年2月の舞台『欲望という名の電車』で約4年ぶりに“二度目”の女優復帰を果たしたのです。

今回は年間・約100本寄稿するドラマ批評コラム連載を持つ筆者が、“山あり谷あり”という言葉が陳腐に聞こえるほど激動だった、沢尻エリカさんの役者人生を振り返っていきます。

◆“優等生の清純派”でブレイク

沢尻さんが役者として一躍脚光を浴びたのは2005年。この年にヒロインを演じた映画『パッチギ!』が公開され、主演ドラマ『1リットルの涙』(フジテレビ系)も放送されたのです。

『パッチギ!』は日本人の男子高生と在日コリアンの女子高生の恋を中心に描いた青春映画で、沢尻さんは吹奏楽部でフルートを担当している在日コリアンのヒロインを好演。

『1リットルの涙』は、15歳の若さで脊髄小脳変性症を患う心やさしい主人公の少女が、絶望に打ちひしがれながらも自分の運命に一生懸命向き合っていく作品。主演の沢尻さんの名演技で、視聴者は涙腺崩壊させられたものです。

幸か不幸か、出世作となった両作とも沢尻さんが演じたのは“優等生の清純派”といったキャラクターだったため、まだ彼女のことを深く知らない大衆は、その演じた役のイメージを彼女自身にも投影していました。

◆今なお語り草の「別に…」発言

沢尻さんは美貌と演技力を兼ね備えた女優として一気に大ブレイクするのですが、2007年にあの大事件が起こるのです。

同年に公開した沢尻さん主演の映画『クローズド・ノート』の初日舞台挨拶。金髪ウィッグにヒョウ柄ドレスという攻めたコーディネートで登場した彼女。

仏頂面で腕組みをして終始不機嫌モードで、司会のアナウンサーから印象に残ったシーンを尋ねられると「特にないです」と答え、クッキーを焼いて撮影現場に届けたエピソードを聞かれても「別に…」と発言。会場が凍り付いていたのは言うまでもないでしょう。

そのほかの現場でもヤンチャな素行がたびたび目撃され、素性が知れ渡り始めていた時期ではありましたが、『パッチギ!』『1リットルの涙』による“優等生の清純派”というパブリックイメージも浸透していたため、そのギャップの凄まじさたるや……。

◆腹をくくって臨んだこの復帰作

ここから沢尻さんへの逆風が吹き荒れ続ける時期が始まるのです。

2009年にはハイパーメディアクリエイター・高城剛さんと結婚(2013年に離婚)し、当時の所属事務所から契約解除されたことなどもあり、芸能活動を休止することに。

しかし、確かな演技力とスター性を兼ね備えた彼女を芸能界が放っておくはずもなく、2012年、“一度目”の女優復帰を果たすのです。

その復帰作『ヘルタースケルター』は実に衝撃的でした。バストトップを隠さない大胆な濡れ場を披露し、ブレイク当時の“優等生の清純派”というイメージとは完全決別。

腹をくくって臨んだこの復帰作は大きな話題になり、結果的にこの役選びが功を奏して大復活。2014年には主演ドラマ『ファースト・クラス』(フジテレビ系)もスマッシュヒットさせるのです。

◆代役を務めた川口春奈の大躍進

こうして「別に…」騒動を乗り越えてトップ女優に返り咲いていたのですが、前述したとおり、2019年に麻薬取締法違反で逮捕。

このとき2020年放送の大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)で、重要な役どころである帰蝶(濃姫)役にキャスティングされていたのですが、降板することに。

そんな沢尻さんの代役を務めたのが、後に大ヒット恋愛ドラマ『silent』(2022年/フジテレビ系)で主演し、今やCM女王となっている川口春奈さん。とてつもないプレッシャーのなか代役として帰蝶を見事に演じ上げたことで、『麒麟がくる』が川口さんのターニングポイントになったというのは、なかなか考えさせられる逸話です。

◆演技の円熟味が増していくはず

話を沢尻さんに戻しましょう。

今年2月、舞台『欲望という名の電車』の千秋楽のカーテンコールでは、涙を流しながら「ファンのみなさま、今まで待っていてくれてありがとうございました。これからも人として役者として成長していけるように一歩一歩がんばります」と語っていました。

――沢尻さんは三度目の役者人生をスタートさせたばかり。

自業自得とは言え二度の“転落”を経験し、酸いも甘いも噛み分けた彼女の演技は、これからますます円熟味が増していくのではないでしょうか。

<文/堺屋大地>

【堺屋大地】

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『現代ビジネス』、『smartFLASH』、『文春オンライン』、『集英社オンライン』などにコラムを寄稿。LINE公式サービスにて、カウンセラーとして年間で約1500件の相談を受けている。Twitter(@SakaiyaDaichi)。

2024/5/5 8:46

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