村上春樹「僕は蟹を食べるたびに、この小説のことを思い出します」もし“蟹の立場”から書いた『蟹工船』があったら

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。4月28日(日)の放送は「村上RADIO~村上の世間話4~」をオンエア。好評の「村上の世間話」シリーズ第4弾は、クスッと笑える“世間話”を、村上DJが選曲したグッドミュージックとともにお届けしました。

この記事では、「蟹を食べるときにいつも思うこと」について語ったパートを紹介します。

◆Tiffany「The Beat Goes On」

ソニー&シェールの歌で1967年にヒットした「The Beat Goes On」。以前バディ・リッチ楽団の演奏で、この曲をかけたことがありますが、今日はティファニーの歌で聴いてください、これ、なかなかかっこいいです。

ワニの話から、話はびゅんと蟹に飛ぶのですが、『蟹工船』っていう小説がありますよね。小林多喜二が戦前に書いたプロレタリアート小説です。少し前にこの作品の再評価がおこなわれて、映画や漫画などにもなり、ちょっとした社会現象になりました。蟹工船に乗った労働者たちが資本家や軍隊、監督から虐げられ、ひどい仕打ちを受け、次第に労働者としての権利に目覚めていくという話です。

僕は蟹を食べるたびにこの小説のことを思い出して、そしてこの小説のことを思い出すたびにふと考えてしまうのですが、虐げられ、ひどい仕打ちを受ける労働者たちももちろん気の毒なんだけど、海の底で気楽に暮らしているところを網でさらわれて、さっさと缶詰とかにされちゃう蟹だって、考えてみればずいぶん気の毒ですよね。

蟹としても「それなら、蟹の立場にたった小説だってひとつ書いてくれよ。おれらだってしっかり虐げられているんだからよお」とか、ぶつぶつ言い出すかもしれません。まあ、言い分にも一理ありますしね。しかしプロレタリアートにもなれない蟹の立場にたった『蟹工船』って、いったいどんな話になるんでしょうね? ちょっと読んでみたい気もします。たぶん誰も書かないだろうけど。

番組では他にも、ほとんど夢を見ないという村上さんが鮮明に覚えているという“夢の話”から、近所をジョギングしているときにある動物に遭遇したときのエピソード、学生時代の夏休みに一人旅をしたときの思い出などについて語る場面もありました。

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4月28日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)

聴取期限 5月6日(月・祝)AM 4:59 まで

※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>

番組名:村上RADIO~村上の世間話4~

放送日時:4月28日(日)19:00~19:55

パーソナリティ:村上春樹

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

2024/4/29 20:00

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