『女芸人No.1決定戦 THE W』全ネタレビュー 女性だけのコンテストに未来はあるか【後編】
(前編はこちら)
■Cブロック
・ゆりやんレトリィバァ
17年に『第47回NHK上方漫才コンテスト』で初の女性ピン芸人として優勝、同年『THE W』で優勝、21年には『R-1』でも優勝。Netflixドラマに主演するし、『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)の探偵にもなったし、来年には米国に移住する計画もあるという。
そういう状況で、ゆりやんにとって今回の『THE W』は、ただ勝ってもあまり意味のない大会だろう。どちらかといえば、やりたいネタを全国放送で4分やることに意味があるような。
実際、そういうネタだった。過去の『THE W』や『R-1』では審査を意識して置きにいっていた感もあったが(それで勝っちゃうのだからすごい)今回のエアハムスターショーはゆりやん節全開。オチは個人的に今大会イチウケだった。
米国に何しに行くのかよくわからないけれど、がんばってほしい。
・あぁ~しらき
18年に決勝に進出し、1回戦で前年女王・ゆりやんを倒して最終決戦に進出。例の貝殻ブラに赤ふん姿で「男かな? 女かな?」を披露し、翌年から懲罰的(?)に2回戦敗退が続いていたが、5年ぶりに決勝まで上がってきた。
今回は映画『セッション』を彷彿とさせるドラム演奏に乗ったミュージカル風コント。審査員の川島明は「練習してきた?」とツッコんでいたが、音と動きの段取りを覚えるだけでも相当苦労しそうな、実は作り込みに作り込んだネタだったように思う。それがそう見えないのが、しらき姉さんの真骨頂。
このネタ、けっこうちゃんと面白かったと思うけど、そうでもないんですかね。
・ぼる塾
すでにネタより朝の情報番組でスイーツを食べている姿のほうが馴染んでいる3人組・ぼる塾に産休中だった酒寄希望が戻り、4人での決勝進出というストーリーは、いかにも感動的。
ぼる塾4人での漫才が完全体だったかといえば疑問符が残るが、実際に4人での活動実績があるわけでもないので、ここがスタートだとすればまったく他の決勝メンバーに見劣りするものではなかった。
ぼる塾は売れ続けているし、そんなに舞台数立てるわけじゃないだろうけど、来年またネタを叩いて戻ってきてほしい。
・エルフ
荒川のギャル芸人キャラで、テレビタレントとしても定着しつつあるエルフも、2年連続の決勝進出。1本目はコントで勝負をかけてきた。
このコントが、思いのほかいい設定で驚いた。ドアを挟んだ2部屋で、スマホで配信を見ながら部屋をのぞき込んだり踏み込んだりという行動の自由度もさることながら、配信者や投げ銭主の存在の2段3段の仕掛けだったり、荒川ってこんなこともできるのか、と。もしくは、いい作家がついたのか、とか。それは言いっこなしだけど。
ともあれ、つけま取ってメーク落としちゃうという展開はめちゃくちゃ時代性あってよかったし、エルフはひとつ上の段階に上がったと思いました。
■最終決戦
スパイクはできることをやって及ばなかった感じ。ネタも悪くないし、パフォーマンスもよかったし、実際面白かったと思う。音声トラブルでテレビ投票の中止を即断した運営は素晴らしかった。
事実上、エルフと紅しょうがの一騎打ちの様相だったが、いちばん強い漫才を持ってきたエルフを紅しょうがが堂々蹴散らしたという構図。この組み合わせなら漫才同士の決戦が見たかったというのが本音だが、結果的に紅しょうがはコントを持ってきたことで格を見せつける結果になった。
* * *
女性だけのコンテストを大々的に行うことがジェンダー的に議論の余地があることは理解するし、「女芸人No.1決定戦」って肩書はそろそろ文言変えてもいいと思うし、『M-1』や『R-1』に比べてレベルがどうこうという話になれば、それはいろいろあると思う。
でも、シンプルになんか、今年の『THE W』って楽しかったと思うんですよね。数あるテレビの企画の中に、そういうものがあってもいいと思うし、過去の優勝者が全員売れて、ちゃんと残ってるというのは『THE W』の確固たる実績として積み重なっているものだと思います。
来年も見ますよ!
(文=新越谷ノリヲ)