“糖尿病用の薬を使うダイエット”流行で本来の患者分が品薄に…さらに「薬をやめるとほぼ全員がリバウンド」危険な実態

肥満や薄毛は多くの男性が抱える悩み。それが薬で治せるなら夢のような話だが、果たして近頃話題になる薬にはどれほどの効果があるのか?中年男性たちが夢中になる“欲望薬”の最新トレンドを追った。

◆糖尿病用の薬をダイエット目的で使用、本来の患者分が品薄に

ここ数年、ダイエット界で最も話題になっているのが「GLP-1ダイエット」だ。これはGLP-1受容体作動薬という糖尿病用の薬をダイエット目的で使い、血糖値を下げる作用によって食欲を抑えて痩せようとする方法だ。

ネットでは「飲むだけで痩せる」などと宣伝する広告が急増。ひとたびクリックすればオンライン診療サービスなどへと誘われる。あまりの人気の高まりに、本来の糖尿病患者に回る分が品薄になる弊害が生まれ、日本医師会が「不適切利用への注意」を促す事態になっている。都内の美容クリニック関係者が匿名で内情を話す。

「ウチで処方しているのは、主に糖尿病用の薬『リベルサス』と『メトホルミン』です。女性だけでなく男性の利用者も多くて、完全な肥満体形の人からコロナ禍で太ったというポッコリお腹の人までさまざま。運動嫌いで、『ラクに痩せたい』人が多い」

◆安易にオンライン診療を選ぶ人が増加

男性は来院よりもオンライン診療を選ぶ人が多いという。

「本来は処方するのに血液検査が必要だし、2週間に一度の診察を徹底しています。しかし、今はLINE電話だけで済むサービスもあるので、そちらを安易に選ぶ人が増えています」

これらの薬は糖尿病治療以外の目的だと保険対象外なので、すべて自費になる。多くの利用者は月に数万円を払って服用を続けるそうだ。

「在庫は常に5箱分くらいキープするようにしています。ただ、リベルサスも品薄になり始めているし、ダイエット目的の使用に非難の声が高まっているので『いずれ仕入れできなくなるのでは?』という噂はありますね」

◆製薬会社の株価を押し上げるほどの影響

国内では逆風が強まっているGLP-1ダイエットだが、そもそもブームに火がついたのはアメリカだった。

「アメリカは国民の4割が肥満とされる国なので、そこに現れた救世主的な存在として人気が高まったわけです。’21年に肥満症薬として注射薬『ウゴービ』が実用化され、これは日本でも今年3月に承認されましたが、世界的な品薄でまだ発売されていません。続いて米イーライ・リリー社の『マンジャロ』が、まだ糖尿病の薬としての承認しか受けていないのに、肥満症への効果が注目されてヒットし、同社の株価が急騰するほどの影響がありました。今では製薬会社がこぞって新薬の開発競争をしています」

そう話すのは、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏だ。

「肥満症薬は巨大市場です。モルガン・スタンレーの調べでは、世界市場では’30年に770億ドル(約11兆円)に膨らむという予測があります。製薬会社にとっても、久しぶりに登場した“ドル箱市場”なのです」

◆今後は保険適用になる肥満症薬が増えてもおかしくない

前出の新薬「マンジャロ」は日本でも局地的に大ブームを巻き起こしていたという。

「今年の春にマンジャロが出ると、『効果がスゴイ』と大人気になったんです。私も試しに打ってみましたが、空腹感が一切なくなり味見さえイヤになりました。人気すぎてすぐに品薄になり、在庫があるクリニックに連絡して直で買ったりしましたが、それもすぐに枯渇し、今ではまったく手に入りません。『いつ入るんだ!?』と問い合わせが次々に来るし、まるで“マンジャロ・ショック”です」(前出・美容クリニック関係者)

巨大なニーズがある薬なだけに、「今後は保険適用になる肥満症薬が増えてもおかしくない」と室井氏は続ける。

「日本で承認されたウゴービの保険適用条件は『BMI27以上で2つ以上の肥満に関する健康障害がある人』とされているので、当てはまる中年はそれなりに多いはず。日本でも中外製薬が糖尿病・肥満症治療の新薬候補を抱えていたりするので、将来的にはもっと普及するかもしれません」

◆現状ではリスクを伴う“自己責任の世界”

ただ、現状ではリスクを伴う“自己責任の世界”だということを忘れてはいけない。

「糖尿病治療の薬なので低血糖や胃腸の動きが弱まるリスクがあります。だからウチでは整腸作用のある漢方薬も同時に出している。あと、副作用ではないですが、薬をやめるとほぼ全員がリバウンドしますね。飲み始めるとやめられなくなるのもリスクかと」(前出・美容クリニック関係者)

痩せたい願望を叶えてくれるのもいっときだけのようだ。

【医療経済ジャーナリスト・室井一辰氏】

病院や企業、行政の現場を20年にわたり取材。著書に『絶対に受けたくない無駄な医療』などがある。東京大学農学部獣医学課程卒業

取材・文/週刊SPA!編集部

※11月21日発売の週刊SPA!特集「[男の欲望薬]大研究」より

―[[男の欲望薬]大研究]―

2023/11/21 8:52

この記事のみんなのコメント

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  • あきひろ

    11/25 10:42

    どこのヤブ医者が処方してんのか知らんが薬には全て副作用ってのがあるからねそんなもん使ってめまいや最悪腎機能障害なんかなって後悔するのがオチ。

  • バランスの良い食事と筋肉量をあげる事につきる。

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