吉幾三、生涯現役インタビュー「ドラマの撮影で中山美穂待ち」「ダンプ松本は竹刀で本気で叩いてくるから、ケツに青タンができるわ、爪がはがれるわ」

『雪國』をはじめとする国民的ヒット曲の歌い手にして、千昌夫ら数多くの歌手に、楽曲を提供する作詞・作曲家としても知られる吉幾三。彼にはもう一つ、役者としての顔がある。

 後半は役者・吉幾三と、その気さくな人柄から生まれた大スターとの交遊を中心に聞いた!

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 この世界に入り、初めて芝居をしたと言えるのは、自分の曲が映画化された『俺は田舎のプレスリー』(1978年/勝野洋主演)に出たときです。でも、歌の仕事が忙しくて、俺は脇役に過ぎませんでした。

 この映画は、『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』の併映。しかも原案を山田洋次監督が手がけたこともあって、江戸川の土手で撮影中だった監督のところにあいさつに行ったことがあります。ところが、監督は犬の撮影に一生懸命で、俺のことはほとんど目に入っていない様子でした(笑)。

 ちゃんと芝居をするようになったのは80年代半ば。ドラマにレギュラーで出るようになってからですね。

 特にTBSの『夏・体験物語』85~86年)と、NHK大河ドラマ『いのち』(86年)をかけ持ちしたときは大変でした。それぞれ、撮影のやり方も全然違いましたから。

 NHKのほうは事前に本読み(シナリオを読むだけのセリフ合わせ)を、しっかりやるけど、TBSの『夏・体験物語』は、ざっと台本を読んで流れを把握したら、あとは、ほとんどアドリブでOKのノリ。

 なにしろ、俺の役は金井玉二郎と言う名前のスケベな教師。一応、熱血教師の一面もあるんだけど、劇中には必ず、ダンプ松本やブル中野とのドタバタが入るわけです。だから、リハーサルでは段取りを確認するだけで、スタッフも、「ここでは絶対にモノを壊さないで! 本番で思い切り壊してください」なんて言うわけ。ダンプなんかは本番になると竹刀で本気で叩いてくるから、こっちはケツに青タンができるわ、爪がはがれるわで、ケガが絶えなかった(笑)。

■「中山美穂待ち」なんてことも、よくありました

 ドラマの主演は当時、人気絶頂の中山美穂。撮影が始まるまで「中山美穂待ち」なんてことも、よくありました。

 美穂ちゃん、まだ女子高生だから、授業を終えてからスタジオに来るんですよ。ドラマ以外にもレコーディングや歌番組の収録もあるから、まともに寝る時間もない。楽屋で仮眠し、そのまま学校に行くようなことも、よくあったよね。

ーー一方、『いのち』は大河ドラマには珍しい、日本の戦後40年を描いた異色作。ヒロインの女医に三田佳子。共演は丹波哲郎、渡辺徹、役所広司、伊武雅刀ら。吉幾三が演じたのは、三田の友人、津軽の便利屋だった。

『夏・体験物語』の撮影が深夜に終わり、家に帰ってシャワーを浴び、子どもたちの寝顔を見て、すぐにNHKのスタジオ入りしたこともありました。

 ところが、大御所の丹波哲郎先生が来ないから、全員での本読みを始められない。先生、平気で1時間遅れで来て、それから、さらに30分の雑談。だから1時間半以上遅れて、やっと本読みですよ。

 しかも、ちょっと三田さんが席を外していると、「佳子は、どうした? 遅れるじゃないか」と、急に不機嫌に。「おいおい、誰のせいで遅れてるんだ。全員、あんたを待ってたんだよ」って、陰で文句を言ったりね(笑)。

 でも、今思えば、楽しい現場でした。撮影が終わると、共演者とカラオケにも行ったしね。俺は丹波さんがいないと見るや、丹波さんのモノマネをやりました。

「いいか~、霊界っていうのはな、現世で、いかに生きるかが大事なんだ~」と、丹波さんの口調でやると、これが受けるんだ。でも、図に乗ってやっていると、後ろから声がする。

「お~、似てる、似てる!」

 振り向くと、丹波さんが笑顔で拍手してるんだもん。そして、それを見ている渡辺徹が腹抱えて笑ってる。やっぱり丹波さんは心の広い、大物でしたよ。

 現在発売中の『週刊大衆』10月9日号では、このほかにも志村けんや小林旭との交流を明かしている。

2023/9/25 18:00

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