性加害問題で芸能界全体にメス入るか…経済団体トップが「ジャニーズだけなのか」と疑問視
ジャニーズ事務所の性加害問題が拡大する中、芸能界全体にメスが入る可能性が浮上してきた。日本商工会議所の小林健会頭(三菱商事相談役)が20日の定例記者会見で、「性加害はジャニーズだけなのか、調べる必要がある」と発言し、芸能界で同様の問題がないか調査すべきだと主張したのだ。
会見では、小林氏が「経済団体の一員としての個人的な立場からの意見」と前置きしたうえで、ジャニーズ事務所創業者の故ジャニー喜多川氏による性加害について「犯罪だと認識している。その犯罪をしていた方がトップだった企業はコンプライアンス上、非常に問題だ」などと厳しく批判した。
さらに「未成年者への性加害は犯罪。事件があった時には周りを見回すもの。何か根拠があって言うわけではないが、いろんなところであったという噂もあり、もしも他に泣いている人がいるならば社会正義として救ってあげる必要がある。(性加害は)ジャニーズだけなのか。メディアとしてある程度、調べる必要があるのではないか」と述べ、性加害の有無についてメディアが芸能界全体をチェックするべきだと訴えた。
経済界においては、経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス社長)が「ジャニーズ所属タレントの起用はチャイルドアビューズ(子どもに対する虐待)を企業が認めるということ。人権侵害は認めたり看過できたりするものではない」として、CM契約見直しは当然であるとの立場を示した。経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)は、「人権侵害、犯罪は断じて許さないという企業の姿勢を内外に示すことは重要だ」としたうえで、「所属タレントの活躍の機会を長きにわたって奪うのは問題がある」との意見を表明した。
そして今回、経団連や経済同友会と並ぶ「経済三団体」のひとつの日本商工会議所トップである小林氏が「芸能界では他にも性加害があるのではないか」という、さらに踏み込んだ発言をしたといえる。
実際、ジャニーズ問題が拡大する以前から芸能界では性加害の訴えが起きていた。昨年3月には、映画監督の榊英雄氏から「性行為を強要された」と複数の女優から告発があり、大きな騒動に発展した。同年4月には、同じく映画監督の園子温氏が週刊誌で性加害疑惑を報じられ、本人は否定したものの、以降は事実上の休業状態が続いている。同時期には、俳優の木下ほうかが2人の女優から性加害を告発された騒動などもあった。
女優たちの告発が相次ぐ中、モデルで女優の水原希子が「業界では(大勢のスタッフの前でも気にせずに)脱いで演じ切るのが立派な俳優だ、という歪んだ捉え方を押し付ける暗黙の了解が存在していた」「私も男性監督から言葉のセクハラにあたるような発言をぶつけられた事は数え切れないぐらいあった」などと、芸能界の問題点を週刊誌で告白したことも話題になった。
さらに、ジャニーズ問題の告発者のひとりであるカウアン・オカモト氏は今年4月に出演したYouTube動画で、人気グループなども含めた女性アイドルの世界についても「アイドルとかグラドルとかと関わったりするけど、枕(営業)だらけじゃないですか」「もう本人から泣きながら被害を直接聞くんで」「高校生とかなのに挨拶しに部屋行ったら、ボスや編集者が待っていて『おまえ、部屋から出たら(仕事)ないから』と言われ、大人3人が動画を撮ってるところで枕させられたり」などと、性加害が横行していると訴えていた。また、地下アイドルの世界ではもっと悲惨な性加害が繰り返されているとの指摘もある。
日本商工会議所の小林会頭の発言は大きな影響力があるが、これをきっかけに性加害調査が芸能界全体に広がることになるのか。だが芸能界には「調べられたら困る人」が少なからずいる可能性があり、圧力や忖度によって今回の発言が「スルー」されるおそれもある。「ジャニーズ叩き」だけで終わらず、女優や女性アイドルなども含めた芸能界全体にメスを入れることができるのかどうか、メディアの役割が問われることになりそうだ。