「サンダルを履けない日が来るかも」 環境省の注意喚起に「そんな事態に…」「差し迫った恐怖」
遠路はるばる船やコンテナに紛れて入ってくる可能性がある、ヒアリ類。
実は『要緊急対処特定外来生物』に指定され、いま非常に危険視されている生き物なのです。
大きさはわずか1cm以下で赤褐色のヒアリは、裸地や草地、アスファルトの間に巣を作ります。刺されると強い痛みを生じ、強いアレルギー反応を起こすことも。
人だけでなくペットも同様の症状になり、「毒よりも恐ろしいのでは?」といわれています。
ヒアリの影響でサンダルでは歩けない地域も…
2023年9月現在、日本は基本的には水際で調査を行い、ヒアリの定着を阻止できているものの、実際にヒアリが定着したアメリカのある地域では、サンダルを履けない地域もあるようです。
もし日本でも定着してしまったら、花見やピクニックを楽しむことや、ペットの散歩をすることもできなくなるかもしれません。
※写真はイメージ
ヒアリの脅威が続いていることが十分周知されていない現状に危機感を持った環境省は、2023年8月、ヒアリについて分かりやすくまとめた『ヒアリ類対処指針冊子』を作成。
※画像をクリックすると拡大します。ヒアリの画像が含まれるのでご注意ください。
まず、冊子の作成に関わった環境省外来生物対策室の担当者に話を聞きました。
―そもそも、『要緊急対処特定外来生物』とは?
『要緊急対処特定外来生物』は、まん延した場合には著しく重大な生態系などへの被害が発生し、国民生活にも著しい悪影響を与えるおそれがある特定外来生物を指します。
そのため、要緊急対処特定外来生物やその疑いのある生物を発見した場合、緊急的に拡散を防止するための対策をとる必要があるものを指定しています。
2023年4月に『特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律』(以下、『改正外来生物法』)が全面施行され、『ヒアリ類』が要緊急対処特定外来生物に指定。
それに伴い、同年6月にはヒアリ類が発見された際に、事業者の方々が取り組むべき事項を定めた『ヒアリ類(要緊急対処特定外来生物)に係る対処指針』が施行されました。
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―『要緊急対処特定外来生物』に指定されている生物は?
2023年現在、指定されているのは『ヒアリを含むヒアリ類4種群23種類とその交雑種』のみで、身近で観察される種は含まれていません。
―『ヒアリ類対処指針冊子』を作ったきっかけは?
ヒアリは、さまざまな輸入品に混入していることから、この対処指針に基づき、ヒアリが定着している国や地域から輸入されたコンテナなどを取り扱う幅広い事業者の方々に、新たな取り組みを求めることになります。
ここ数年は毎年、大規模な侵入事例が確認されており、専門家からも「定着ギリギリの状態」というご指摘を受けています。
その一方で、侵入が初めて確認された2017年と比較すると、世間の注目度が下がっているという懸念がありました。
そのため、対処指針の対象となる輸入事業者を始めとする幅広い方に向けて、対処指針の内容やヒアリの現状について周知する資料を作成したいと考えました。
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―どんなタイミングでヒアリと遭遇することが多い?
ヒアリは国内への侵入事例が毎年確認されていますが、確認された際には、関係者で連携して速やかに防除を行うことで、日本国内への定着を防いでいます。
そのため、国内でヒアリに刺された事例は、弊省で把握している範囲では、『輸入コンテナなどを取り扱う事業者の方々がコンテナから荷物を下ろす際に、荷物などに付着しているヒアリに刺された』という数例のみ。
いずれも痛みなどはあったものの、そのほかの健康上の支障は生じていません。
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―冊子のイラストを担当した、ウラケン・ボルボックスさんにお願いした経緯は?
今回の法改正を受けて、複雑な対処指針の内容について分かりやすく伝える方法を検討していたところ、ウラケン・ボルボックスさんが製作された『侵略!外来いきもの図鑑』(パルコ)や『すごい毒の生きもの図鑑』(中央公論新社)の中で、ヒアリの危険性などについて非常に分かりやすく紹介されていたためです。
ウラケン・ボルボックスさんに制作秘話を聞く
次に、冊子全体のアートディレクションとイラストの作画を担当した、ウラケン・ボルボックスさんに制作秘話を聞いてみました。
―冊子の話が来る前、ヒアリやその脅威についてどれだけ知っていた?
『侵略!外来いきもの図鑑』の作成に携わった際に、ヒアリについても調べ、ニュースや特集番組なども見ていたので、多少の知識はありました。
―作画の話がきた際の心境は?
以前、『侵略!外来いきもの図鑑』がきっかけで、環境省からアメリカザリガニの問題をイラストで紹介する仕事を受け、その成果物をご覧になった方からの依頼だったので、私の仕事を気に入っていただけたのだと思いました。
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―制作で大変だった点は?
事業者向けということもあって、伝えなければならない重要事項が非常に多かったことです。
しかし文字だらけになると読んでもらえないので、興味を持って読んでもらえるように、イラストや図を散りばめるなど、アートディレクターとして構成を考えるのが大変でした。
最後に、環境省外来生物対策室の担当者からのメッセージをもらいました。
ヒアリについて「危機は去った」と誤解されている人がいらっしゃるかもしれませんが、特に今年度は『7月末までの発見事例数』が過年度の同時期と比較して過去最高となるなど、危機的な状況が続いています。
このように、ヒアリ対策が危機的な状況であることをみなさまにご認識いただきたいです。
その上で、特に対処指針の対象となる事業者の方々におかれては、外来生物法に基づき新たな取組が求められていますので、まずはヒアリ類対処指針冊子をご覧いただいて内容を把握し、対処指針に基づく対応をお願いいたします。
ウラケン・ボルボックスさんからは、このようなメッセージをいただきました。
ヒアリの影響は、国民の問題としてはさほど一般的ではないですが、水際対策を怠ると、最悪の場合、花見ができなくなるという恐れがあります。
また農業被害や産業への影響も大きく、すでにヒアリの侵入を許したアメリカの年間被害額は6千から7千億円にものぼります。まずは、ヒアリの影響と問題を知っていただきたいです。
※画像をクリックすると拡大します。ヒアリの画像が含まれるのでご注意ください。
もし「ヒアリ類かな?」と思ったら、速やかに最寄りの地方環境事務所、ヒアリコールセンターまたは自治体などに連絡しましょう。
【ウラケン・ボルボックス Profile】
東京から福岡に移住した映画好きのイラストレーター。
広告、Web、書籍を中心に活動。『外来いきもの図鑑』『ざんねんなオリンピック物語』『激ヨワ人類史』『すごい毒の生きもの図鑑』好評発売中。
X(旧Twitter)@ulaken
[文/キジカク・構成/grape編集部]
出典 環境省