「日本で飼育されているジュゴンは1頭のみ」気づいたら“会えない”かもしれない、水族館のいきものたち
いつでも会えると思っていた。でも気づけばラッコを愛でられる水族館は日本に2館しかない。さらに、日本の水族館で飼育数が減っているのはラッコだけではない。なぜそうなったのか、これからどうなるのか、最前線をリポートする。
◆専門家に聞いた「今後水族館で見られなくなる可能性のある生物」
「水族館の飼育ラッコが急に3頭になったわけではない。10年以上前からこうなることはわかっていたんです」
三重県鳥羽市の「鳥羽水族館」で40年間ラッコの飼育を担当する石原良浩さんは、ラッコの数が減少した現状に対し淡々と語る。
現在、国内のラッコ飼育数は同水族館で飼育するメスのメイ(19歳)とキラ(15歳)の2頭のほか、福岡県福岡市の「マリンワールド海の中道」のオス1頭のみだ。
しかし、日本の水族館で飼育数が減っているのはラッコだけではない。
京都大学野生動物研究センターでラッコについて研究する三谷曜子教授に、今後水族館で見られなくなる可能性のある生物について聞いた。
「まず挙げたいのはイルカ。なかでも希少なのが、ネズミイルカやイロワケイルカです。これまでは野生でイルカを捕獲したり、漁業の網などに混獲した個体を研究や治療目的のために水族館で飼育していました。
しかし国内では、'15年にイルカの捕獲をJAZAが禁止したり、水産庁が混獲したイルカは海への返還を義務づけたりしたことで、新たな個体を持ち込めなくなった。学術的捕獲が唯一の方法ですが、水産庁の許可のハードルが高い」
◆日本で飼育されている「ジュゴン」は鳥羽水族館の1頭のみ
野生に溢れる種でも、日本の水族館からは消滅するかもしれない。
また、ワシントン条約(附属書Ⅰ)により輸入禁止の生物も、飼育数が減少している。
「日本で飼育されているジュゴンは鳥羽水族館の1頭ですが、タイやオーストラリアには生息しています。ただし、ジュゴンは国際条約で輸出入が規制されていて、日本に連れてくるのは難しいでしょう」
◆長寿で知られるシャチ「水族館の飼育下で寿命が縮む場合も」
自然界では長寿と言われている種も、水族館の飼育下で寿命が縮む場合もあるという。
「例えば、日本の水族館にいるシャチはアイスランドから来た個体と、その子供たちや孫たちを2館に分けています。シャチの寿命は平均50年と言われていますが、家族で生きる海棲生物なので、バラバラに飼育すると早死にしてしまうことが判明しています」
シャチは国内で増やすしかないが、ラッコと同様に水族館では繁殖の難しさがある。
「体が大きく、家族で生活するシャチが健やかに過ごせる環境を整えるだけで莫大なコストがかかってしまう。欧米では、鯨類など大型の海棲生物の飼育をやめる方向に舵を切っている水族館が増えているのが現状です」
◆「水族館に生物たちが来た背景にも興味を持ってほしい」
そのなかで三谷氏は「水族館に生物たちが来た背景にも興味を持ってほしい」と語る。
「海棲哺乳類も生態系の一部であり、人間の生活にも深く関わっています。水族館に行く際には生物の魅力に触れながら、生物多様性に対する保全のリテラシーも向上させてもらいたいと願っています」
水族館の人気者が姿を消してしまう危機があることを、一度真剣に考えてもらいたい。
◆水族館の絶滅危惧種:ジュゴン
「日本の飼育数1頭」鳥羽水族館
人魚伝説のモデルとしても有名。世界でも個体数が減少していて、絶滅危惧IA類に指定されているため輸入が見込めない。
唯一見られる鳥羽水族館では、1987年にフィリピンから贈られたメスのジュゴンが飼育されている。
◆水族館の絶滅危惧種:アフリカマナティー
「日本の飼育数2頭」鳥羽水族館
草食系の海獣で、生息地の減少から絶滅危惧種に指定されている。近年では都市開発による環境の悪化、漁業による混獲、密漁などが問題に。
アフリカマナティーは妊娠から出産まで約13か月かかるのでサポート体制が必要。
◆水族館の絶滅危惧種:シャチ
「日本の飼育数7頭」鴨川シーワールド・名古屋港水族館
現在7頭のうち、オスは名古屋港水族館に1頭のみ。他のメスとは親戚関係にあって、近親での繁殖は不可能。
シャチの寿命は平均50年で、あと数十年は見られるはずだが、水族館の飼育下では寿命が縮むことが研究で判明した。
◆水族館の絶滅危惧種:イロワケイルカ(パンダイルカ)
「日本の飼育数7頭」鳥羽水族館・仙台うみの杜水族館
白と黒のコントラストが特徴のイルカ。現在の7頭は1987年にチリから生態研究のために持ち込まれたイルカの末裔。
現状ではワシントン条約により輸入することができない。国内では'23年6月、鳥羽水族館で2年ぶりにオス1頭が誕生した。
◆水族館の絶滅危惧種:ネズミイルカ
「日本の飼育数4頭」おたる水族館
日本では主に北海道の沿岸に生息している小型の鯨類。学術目的以外の捕獲は禁止されている。
おたる水族館では、1984年から飼育されており、現在は4頭のみ。北海道大学と共同で、生態や習性などの研究を行っている。
取材・文/橋本範子 吉岡 俊 高石智一
―[[日本からラッコ絶滅]の危機を救え!]―
とも(さっさと憲法改正しなきゃね~遅すぎ!!)
9/18 17:00
オール沖縄が悪用。