【インタビュー】川口春奈×玉森裕太が語る、新たな可能性を広げてくれた出会い、扉を開いてくれた存在
第一印象最悪で「この人とは絶対にうまくやれない!」と思っていた人が発する言葉に、思いも寄らない新たな気づきを与えられたり、逆にずっと一緒にいてお互いにわかり合えている近い関係の人だからこそ、本当の気持ちをなかなか伝えられなかったりという経験は誰しもあるはず。
ディズニー&ピクサーの最新アニメーション『マイ・エレメント』はまさにそんな物語。火・水・土・風のエレメントたちが暮らす世界を舞台に、異なるエレメントの2人が起こすピクサー史上最も“ロマンティックな奇跡”のドラマを描き出す。
主人公である火のエレメントの女の子・エンバーの声を演じるのは川口春奈。そして、玉森裕太がひょんなことからエンバーと出会う水のエレメントの青年・ウェイドの声を担当する。正反対の2人が織りなす物語の魅力について、川口さん、玉森さんに語ってもらった。
演じた役の魅力は「真っすぐさや正義感」「愛らしいキャラクター」
――この物語からおふたりはどんなメッセージを受け取りましたか?
川口:「自分はこうでなくてはいけない」ということだったり、「自分らしさ」ってなんだろうか? と考えるきっかけになる作品だと思うし、新しいことやいままで経験したことのない環境に足を踏み入れる時って、誰しも悩んだりすると思うんですけど、そういうのを取っ払って、前に一歩踏み出す勇気をくれる映画だなと思います。自分と全然違う人、自分にはない感覚を持っている人と付き合うことの大切さ、家族愛、恋愛も描かれてますけど、軸となる部分にすごくメッセージ性が詰まっている作品だなと思います。誰にでも当てはまる、共感してもらえるメッセージが詰まった作品です。
玉森:川口さんがおっしゃった通りで、自分だけじゃ気づけなかった可能性というのが一番伝えたいメッセージなのかなと思います。自分の中で「こうでなきゃいけない」とか「自分はこうなんだ」と思いがちだけど、誰か違う人と触れ合うことで「こんな可能性も自分にはあるんだ!」と気づかされたり、自分の可能性を広げさせてもらえる、そんな物語だなと思いました。
――ご自身が演じた役柄の魅力や共感できる部分、お互いの役柄の印象について教えてください。
川口:エンバーは真っ直ぐであるがゆえに熱くなりすぎて後悔してしまうようなところがあって、でもその真っすぐさや正義感が魅力でもあるし、コンプレックスでもあると思います。でも熱くなっちゃう気持ちもわかるし、「自分がいなきゃ」とか「こうしなきゃ」っていう責任感の強さは理解できるなと思いました。
――川口さんご自身もコンプレックスをお持ちですか?
川口:コミュニケーション能力がすごく低いです(苦笑)。人見知りというか、人づきあいが上手にできないところですかね…。
――玉森さんが演じられた水のエレメントであるウェイドについては、どんな印象を持たれましたか?
川口:こういう人が近くにいてくれたら最高だなと思います。自分の周りにはあまりいないようなキャラクターだと思うし、彼の突拍子のないコミカルな部分も、ちゃんと人のことを見て意見を言ってくれるところも、面白いところもありつつ、しっかり芯が通っているキャラクターだと思うし、すごくかわいらしいなと思います。
玉森:水らしい、物腰が柔らかい青年ですけど、すごく涙もろくて、ちょっとしたことでも感動する愛らしいキャラクターですよね。共感できるところ…? ウェイドって、エンバーに何度か突き放されるんですけど、それでもあきらめないでちゃんとそばにいて寄り添うんですよね。それはすごいなと。俺はあんなに突き放されたら耐えられないなと思っちゃうけど(苦笑)、やっぱり優しいウェイドなので、そこは魅力的でいいなと思いました。
――川口さんが演じられたエンバーに関しては、どんな印象を持たれましたか?
玉森:エンバーは本当にエネルギッシュな女の子ですよね。見習いたいなと思うし、こういう人がいてくれると付いていきたくなるし、ウェイドと同じように「支えてあげたい」と思いますね。
――声でキャラクターに命を吹き込むというお仕事はいかがでしたか?
川口:私は本当にまるっきり初めてで、事前に準備しようがないところもあって、実際、収録に行ってモニターを見て「今日はここをやります」という感じだったので、毎日不安絶頂のままスタジオに行く感じでした。
録り方も、てっきり玉森さんがいて、会話をしながらやるものだと思っていたら、全然そうじゃなくて…。いつも、こういう状態で収録されている声優さんって本当にすごいなと思いましたし、もちろん難しさ、大変さを感じながら、最後まで慣れずにやっていました。
玉森:本当に難しいことばっかりでした。いかに自分が普段、表情や身振り手振りに助けられていたのか…。声だけで全てを表現しないといけないというのは本当に大変で、収録期間中は家に帰ったら、気絶レベルで寝ていましたね(笑)。集中もするし、普段あまりやらないことなので体力も使ったし、「声優さんってすごいな」と思いました。
新たな可能性を気づかせてくれた出会いとは?
――エンバーやウェイドのように、誰かとの出会いで新たな可能性や自分らしさに気づいた経験はありますか?
玉森:僕はやっぱりSMAP兄さんかな? 異次元な人たちだなと思って。デビューしたその日に「BISTRO SMAP」にメンバーと一緒に出たんですけど、食事の味をひとつも覚えてないです(苦笑)。
もうオーラがすごすぎて、自然と一歩、二歩下がってしまう迫力を間近で感じて「ヤバイ! この人たちはすごすぎる」と直感で感じました。と同時に「カッコいいな」、「こういう人たちになりたいな」と思いました。終わった後、メンバーで話しましたもん。「すごかったね!」みたいなことを。
――その後、少しずつ共演する機会が増えたりして、親しくもなったかと思いますが、少しは近づけたという感覚は…?
玉森:全然(苦笑)! 知れば知るほど、遠ざかっていくような…。本当にいろんなすごさを知って「かなわない!」と思ったりしますね。いまだに目標でもあり、いつか超えられたらいいなとも思いますし、すごい人たちです。
川口:私も、初めて木村(拓哉)さんとお仕事をさせていただいた時、いろんなことが衝撃的過ぎて…。こんなにも目標に対して、チームに対して熱量をもって、全力でいる姿を見て「(自分に対して)こんなんじゃダメだ!」と思ったり。
すごく面倒見の良い方なので、作品が終わった後も、連絡を下さったりもするし、あそこまで全身全霊でものづくりをし、チームを大切にする姿がカッコいいな、偉大だなと思いました。
――お会いしてイメージ通りでしたか? それとも意外な姿が見えてくる部分もあったんでしょうか?
川口:どちらもありましたね。その時の役柄がすごく怖い役柄だったこともあって、現場ではメチャクチャ厳しくしていただいたんですけど、現場が終わったり、帰り道でお会いすると普通の“おにいさん”という感じで、いま思うと、私たちにとってもすごくやりやすい環境にしてくださっていたんだなと。
――言われて印象に残っている言葉などはありますか?
川口:別のバラエティ番組で、一般の方の夢をかなえるという企画をやられていて、本当にこの人は、とんでもない数の人の人生とかを変えたり、とんでもない影響力を持っているんだということを再確認して、それにすごく感動したんです。
こちらから連絡してお伝えしたら「俺らの仕事はそういうことだから。人に夢を与えるのが仕事だし、それを信念を持ってやってるから生半可な気持ちじゃできないし、それがエンターテイナーだよね」とおっしゃって「あなたも頑張って」ということを言ってくださって、背筋がしゃんとしました。ひとつひとつのこと、人に対して誠実にちゃんとやらなきゃと改めて感じました。
身近にもいる、気づきや発見を与えてくれる存在
――映画では異なるエレメントの交わりが描かれるだけでなく、親子の関係性――同じエレメントであっても別々の人間であり、かなえたい夢と「親の期待に応えなきゃいけない」という思いの間の葛藤も描かれています。こうした部分に共感を抱いたり、周囲の期待に押しつぶされそうになったり、そこから解き放たれた経験はありますか?
玉森:僕は逆にというか、事務所に入った時は、自分が入りたいと思ったわけではなく、それこそ親の夢というか「やってみたら?」という感じで、勝手に(書類を)送られてたんですが、知れば知るほど向上心というか「もっともっと」という気持ちになりました。
最初は部活感覚で「何でもいいや」という思いもあったんですけど、仲間ができて、夢を語り合って、そこに向けて頑張ろうという気持ちになったりという、気持ちの切り替えはありました。
――逆に親御さんが、新たな可能性、扉を開いてくださったんですね。
玉森:そうですね。最初は「ふざけんな」くらいの気持ちだったんですけど(笑)、いまとなっては感謝していますね。
川口:私はあんまり親に厳しく怒られたこともなくて、三姉妹の末っ子で、みんなに甘やかされながら、放任されながら「どうぞ好きなことをやってください」という環境でのびのびとやらせてもらってきたので、(周囲の期待に応えなきゃと葛藤するような)そういう経験はないんですけど…。
ただ、この仕事をやるとなって、きっとたくさん心配もしただろうし、地元から通っていたこともあって、そこでどう思っていたのかは知らないですが、きっといろんな思いがあったなかで「とにかくやりたいことをやれば」と見守ってくれていたのかなと思います。
――逆に「もっと厳しく言ってほしい」と思ったり、反抗するような気持ちが芽生えたりすることもなかったんですか?
川口:寂しかったですね。お姉ちゃんたちはすごく厳しく育てられていたんですけど、私は歳も離れていたので怒られたこともなかったし、それが寂しいなと思う時期もありました。
大人になってからのほうが、きちんとコミュニケーションも取れて、お互いに言いたいことも言えて、ケンカもできるという関係性になれましたね。
――エンバーとウェイドのように、身近に自分とは正反対でタイプが全然違うけど、気付きや発見を与えてくれる存在はいますか?
玉森:やっぱりメンバーですかね? 同じものを見て、同じ方向に向かっているけど、その中でも少しずつやりたいことも思ってることも違うし。自分と違う意見が出たりすると「なんでだろう?」と思ったりする反面、「そんなこと思ってくれてたんだ?」とか「俺にはそういう発想はなかったな」とか、いろんな感情にさせてくれます。
乗っかってみると新しい気づきがあったり。信頼している人たちでもありライバルでもあるし…。
――メンバーに言われてハッとしたりしたことも…?
玉森:メチャクチャありますけど、例えば宮田(俊哉)さんはメチャクチャ“アイドル”なんですよね。自分はそこまでは行けないかも…と思うこともあって。宮田さんを見ていると「アイドルってこうじゃないとダメだな」と思わせてくれたりしますね。
川口:気づいたら、同じ感覚、価値観の人が(周囲に)多いですよね。「マジで合わないな」と思っても、言っていることは的を射ていたり、筋が通っているなと感じるという経験はわりと日常であるので、ちゃんと聞くということ――「この人はこういう人なんだ」「なるほどな」と思うことはわりとありますね。
(text:Naoki Kurozu/photo:Maho Korogi)
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