フジテレビ「90年代回帰」戦略の裏側、夏の月9はダサめラブストーリー?

 テレビ各局が、7月スタートとなる夏ドラマの情報を発表し始めている。堺雅人が主演を務め、阿部寛、役所広司、二階堂ふみらと共演する日曜劇場『VIVANT』(TBS系)や、Snow Man目黒蓮が主演を務める『トリリオンゲーム』(TBS系)などが大きな話題を集めている。

「今年の夏ドラは、下馬評ではTBSが非常に強いイメージ。日曜劇場枠は現在放送中の『ラストマン-全盲の捜査官-』も好調ですが、7月期の『VIVANT』は、『半沢直樹』シリーズの堺さんと、『下町ロケット』シリーズの阿部さんが共演するので、話題性はバツグン。さらに、TBSで数々のヒットドラマを作ってきた福澤克雄氏が原作・演出を手掛け、ストーリーや役柄などを初回放送まで明かさない手法を取ると言われている。視聴率も15%を目指すと、局内の意気込みも高い。また、目黒さんが連続ドラマ単独初主演を務める『トリリオンゲーム』も話題で、TBSの一人勝ちとなりそうです」(民放関係者)

 そんな中で、意外な作品がテレビ関係者の間で話題を集めている。それが、フジテレビ系の月9ドラマ『真夏のシンデレラ』だ。森七菜と間宮祥太朗がダブル主演を担当する作品で、8人の男女が真夏の海で恋を繰り広げる青春群像劇となる。

「『真夏のシンデレラ』は、2021年に事務所との移籍問題を抱えていた森が久しぶりに大舞台に帰ってきたことで話題です。このまま“干される”のではないかと言われていたほどでしたが、森は演技力が高く、今年1月にNetflixで配信されたドラマ『舞妓さんちのまかないさん』で主演を務め、話題になっていた。今回の月9で、どんな演技を見せてくれるか注目されています」(スポーツ紙記者)

 さらに、『真夏のシンデレラ』はストーリー構成もいろいろな意味で注目だ。ドラマはフジテレビの公式サイトで、<真夏の海を舞台に、今夏一番ドキドキ・ワクワクする恋模様を詰め込んだオリジナル脚本>と説明されている。森が演じる蒼井夏海は、SUPのインストラクターで<男勝りな“サバサバガール”>という性格の設定だ。

「王道といえば聞こえはいいですが、今時のドラマではあまり見ないほど直球すぎる、言わば“ダサい”設定が話題です(笑)。ここ最近、『silent』(フジテレビ系)や『エルピス』(同)など、Tverなどで人気になるドラマのトレンドは、ストーリーが重厚で人間関係が複雑だったり、伏線回収が素晴らしい作品ばかり。一方で、今回の『真夏のシンデレラ』は、あらすじを見ただけで結末までわかるような安易なストーリーになりそう。視聴者から支持されるとは思えないので、フジはかなりイチかバチかの冒険に出たと、テレビ関係者の間で囁かれています」(民放関係者)

 令和っぽくないド定番ラブストーリーを月9として放送する予定のフジテレビ。フジテレビ関係者は、同局が「全体的に90年代回帰が進んでいる」と説明する。

「昨年6月に港浩一社長が就任してから、さまざまな番組がどこか“古臭く”なっている。その代表的なのが、今年4月に深夜番組としてスタートした『オールナイトフジコ』。初回放送にはわざわざ社長が生出演したほどで、名前の通り『オールナイトフジ』(1983~91年)をリニューアルして32年ぶりに復活した番組です。ネットニュースでは、その”下品”な内容が話題になっていますが(苦笑)。

 このほかにも、年明けから平日昼の帯番組で始めた『ぽかぽか』も、かつて人気を博した『笑っていいとも!』(82~2014年)の雰囲気を漂わせている。全体的に、フジの黄金期だった90年代を思わせるような作りの番組を増やしているんです」

『真夏のシンデレラ』も、どこか90年代のトレンディな匂いを感じさせる内容で、港社長の意向が反映されていると言われている。なぜ、フジテレビは“古さ”にこだわるのか?

「フジテレビは各番組で視聴率がふるいませんが、13~49歳をターゲットにする『コア視聴率』が実はそれほど悪くない。昨年は、プライム帯のコア視聴率で王者・日本テレビに次ぐ数字を叩き出す日が多かったですから。数年前から、世帯視聴率は悪くてもコア視聴率は上々の数字なんです。そこで、港社長に体制が変わってから、世帯を伸ばすように懐かしの番組構成を推し進めている。時代と逆行し、他局とも真逆の方針ですが、バランスよくバブル世代やシニアの視聴者も獲得して、世帯視聴率を底上げしようとしているんです」(フジテレビ関係者)

 そんなフジテレビでは、今後も90年代を思わせるような懐かしの構成が増えていきそうだという。

「今夏に放送される『FNS27時間テレビ』では、とんねるずがコーナーを持ち、復活するという噂。また、MCを務める千鳥、かまいたち、ダイアンの吉本芸人コンビ3組の中でも、ダイアンはかなり過酷な生中継ロケを行うという。一説には、マラソンなどの体当たりチャレンジ企画で、27時間耐久のコーナーを持つという話です。かなりバカバカしい内容になり、かつての『27時間テレビ』のバカ騒ぎが帰ってきそうです」(同上)

 フジテレビといえば、「楽しくなければテレビじゃない」のスローガンが有名だが、原点回帰をしながら独自の路線を切り開こうとしているようだ。

 果たして、他局とは違った方向に進んでいるフジテレビは、トレンディに活路を見出すことができるか?

2023/6/5 13:00

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