【書店員のおすすめ】大人になってこそ読みたい! ココロが癒されたり、タメになる絵本を紹介♪ 

「絵本は子どもだけが読むもの」と思っていませんか? 実は大人が読んでも、心が癒やされたり、ちょっとタメになったりする絵本がたくさんあるんです。そこで今回は、神戸で素敵な書店「1003」を運営する奥村千織さんに、「大人だからこそ読みたい絵本」を教えてもらいました。雨が多くなる季節に、自宅でゆったり読んでみませんか。

アネモネの花を通じて平和について考える

アネモネ戦争

上村亮太/BL出版/1,650円

ギリシャ語で〝風の娘〟という意味を持つアネモネの花。そんなアネモネの美しさにほれ込んだある国の王様は、自国にだけ咲くアネモネの花を作らせます。アネモネの花を独占していた王様ですがある日、種が風にのって隣国へ。そのことに腹をたてた王様は、種が落ちても花が咲かぬよう戦争を始めてしまいます。身勝手な王様の行動にとまどい、葛藤する人々。穏やかな日常や平和は、どうすれば守り、育てられるのか。アネモネという花を通じて、作者が深く呼びかけます。

【奥村さんのここがおすすめ】

「どこでどんな戦争をしているかよく見えない。何が起きているかわからない。だから自分だけが安全ならばそれでいいと人々は目をつむり、口を閉ざしていく。それこそが戦争なのだ」。本の中には、著者からの平和を強く願うメッセージがいっぱい。今こそ、広く読まれてほしい本だと思います。

身分の違う二人の少年の友情物語

海峡のまちのハリル

末沢寧史・文 小林豊・絵/三輪舎/2,970円

トルコ伝統のマーブリング紙「エブル」を作る職人の家で生まれ育った少年・ハリルは、学校へも行かず、工房の親方である祖父の元で下働きをする毎日。一方、異国の不慣れな土地で暇を持て余している、日本からやってきた貿易商の息子たつき。そんなふたりが海峡の街で出会い、友情を深め、自分を見つめ直していく物語。二人の友情や未来に向けての決断はきっと、大人になって読んでも通じるものがあるはず。

【奥村さんのここがおすすめ】

国を超えたハリルとたつきの友情と、伝統絵画「エブル」の物語。懐かしさを感じる一色刷りで描かれた絵本を読み進めると、突然チューリップのエブルが現れ、その鮮やかさと美しさに物語の世界がいっそう豊かにふくらみます。

現代風にアレンジされた新しいシンデレラ像

シンデレラ 自由をよぶひと

レベッカ・ソルニット著 アーサー・ラッカム挿画 渡辺葉訳 渡辺由佳里解説訳/河出書房新社/2,200円

魔法で美しくなって舞踏会にでかけ、そのあと素敵な王子さまと結婚して幸せに…。子どものころ、一度は読んだことのある「シンデレラ」の物語を大胆にリメイク。農家に転身した王子さまとは友情をはぐくみ、いじわるをされていた義理の姉たちとも和解。当のシンデレラも仕事を持ち、しっかりと自立して生きている。現代に合ったストーリーに生まれ変わったことで、みんながよく知っている「シンデレラ」の話がよりさらに身近に感じられるかも。まるで影絵のような、アーサー・ラッカムの挿絵も素敵!

【奥村さんのここがおすすめ】

自ら人生を切り拓こうと進むとき、一人ではどうしようもない場面がきっと出てきます。そんなとき、この魔法つかいの妖精の言葉を思い出してください。ガラスの靴を頼りに王子さまに見つけてもらって、結婚してめでたしめでたし、では終わらない。自分の夢は自分で叶える新しいシンデレラの物語。

■この本をおすすめしてくれたのは…

1003 奥村千織さん

古本、新刊、リトルプレス(個人や団体が自ら製作した少部数発行の出版物)を扱う神戸・栄町の書店。誰もが安心して本を手に取れる場所を目指し、日々営業中です。詳細はWebで確認を

https://1003books.stores.jp/

2023/6/5 11:00

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