転職活動には「ChatGPT」を利用してもいいの? ちなみに、使った人は「書類作成の効率化や質向上」「情報収集」に役立つ!

各国の規制の話題や自治体での導入など、なにかと話題のChatGPT。だが、その「能力」はどのくらい転職活動に役立つのだろうか? あるいは、役立ててもいいものなのだろうか?

ワークポート(東京都品川区)が2023年5月17日に発表した、同社利用者を対象にした「ChatGPTの利用」と採用担当者を対象にした「転職活動におけるChatGPT利用の印象」の調査によると、「ChatGPTを転職活動に利用したことがある」と回答したのは、使ったことがある210人のうち、3割ほどとなった。

使った人によると、「自己紹介文の作成」、「応募書類の誤字脱字や不自然な点のチェック」、「会社の評判や将来性の調査」などに活用できた意見が寄せられた。その一方で、採用側からは「ChatGPT」を利用した応募書類でも、採用意欲は「変わらない」が最多の「75.5%」となった。

使い方が議論されている文章生成AIだが、これからは利用者の文章作成やアイデア出しなど、補助的な役割に活用されていく未来が垣間見える結果だ。

転職活動でのAI活用「紹介分のたたき台」「誤字チェック」「面接応対のブラッシュアップ」

「ChatGPTの利用」では、2023年4月21日から28日まで、ワークポートを利用している全国の20代から40代の男女のビジネスパーソン480人をインターネット調査した。

はじめにChatGPTの認知度について調査。「ChatGPTを知っているか?」の問いかけに「はい」が「82.1%」、「いいえ」が「17.9%」となり、8割を超える認知度があることがわかった。

続いて、「ChatGPTを使ったことがあるか?」の質問には「はい」が「43.8%」、「いいえ」が「56.3%」となった。

同社では、

「認知度ほど高くはないものの、半数近くにおよぶ働き手が利用経験ありと回答しており、ChatGPTの普及は着実に進みつつあることがわかりました」

としている。

つぎに、「ChatGPTを使ったことがある」という人(n=210人)にその目的を聞いてみると、「プライベート」(81.0%)、「仕事」(41.4%)、「転職活動」(31.0%)、「その他」(6.2%)という結果になった。

「プライベート」と回答した人に目的を聞いてみると、

・使用感を試すため(20代・女性・管理)

・日々の疑問点解消(40代・男性・機械系エンジニア)

・プログラミングの記述、旅行先の情報収集(30代・男性・その他)

などの意見が上がり、調べものや自己研鑽に利用しているようだ。

また、「転職活動」と答えた人に、さらに具体的に何のために利用したか聞いたところ、以下のような回答が返ってきた。

・自己紹介文の作成(30代・男性・事務)

・応募書類の誤字脱字や不自然な点のチェック(30代・女性・事務)

・会社の評判や将来性の調査(40代・男性・事務)

・面接の受け答えのブラッシュアップ(30代・男性・接客販売)

文章や書類の作成・添削に利用したとする意見が目立ったほかに、企業研究や面接対策に利用しているという意見が上がっている。

同社では、

「転職活動においてChatGPTは、主に書類作成の効率化や質向上および情報収集の手段として利用されているようです」

と分析している。

さらに、ChatGPTの利用経験者(n=210)に「今後もChatGPTを利用したいと思うか」聞いたところ、「積極的に利用したい」は「67.1%」、「やや利用したい」は「29.0%」で、合わせて「96.1%」の人が「また利用したい」という回答をした。

その理由を聞いてみると、

・検索して調べる時間の短縮、または第三者視点の参考意見(情報)として期待できるため(40代・男性・システムエンジニア)

・うまく使うことで生産性が上がると思うから(40代・男性・管理)

・自分が考えていなかった視点からアイディアをくれる場面が多々あるから(20代・男性・製造)

というポジティブな意見が上がっている。

今後、どんなことにAIを利用したい? 「仕事」が6割 ほかに「転職活動」5割強、「プライベート」4割

一方で、利用したことがない人に「これから使ってみたいと思うか」を聞いたところ、「使ってみたい」は「66.7%」を占めた。

あわせて、目的も聞いたところ、「仕事」(62.8%)、「プライベート」(53.3%)、「転職活動」(42.8%)、「その他」(3.9%)という結果になった。

「仕事」と回答した人の自由回答欄には、

・報告書、レポートの作成」(40代・男性・営業)

・ビジネス文書、提案書、見積書の作成(40代・男性・運輸交通)

・文章のたたき台作成(40代・女性・クリエイター)

・メール対応や応募書類対応(40代・男性・製造)

・ルーチン的な事務仕事についての補助(40代・男性・公務員)

という意見が上がり、メール文章・プレゼン資料・議事録・プレスリリースなど、多岐にわたる文章や書類の作成に利用したいという意見が多く寄せられた。

他方で、「転職活動」と答えた人の自由回答の意見を見ると、

・疑問点の調べ物、情報収集(30代・男性・クリエイター)

・自身の求めている企業の選定(20代・男性・建築土木)

・40代で狭き門なのでアドバイスをもらいたい(40代・男性・営業)

・自己分析、転居先の選定(30代・男性・その他)

などが挙がっている。

採用側のAI利用の印象「変わらない」が75.5%、「印象悪い」22.3% 「使っていてもわからない」という意見も...

では、選考をする企業は応募書類にChatGPTを使うことをどう考えているのだろう?

同じく、ワークポートは「転職活動におけるChatGPT利用の印象」のアンケート調査を実施。従業員数5000人までの企業の人事担当者139人に、2023年5月9日から16日までインターネット調査した。

結果をみると、「もし候補者がChatGPTを使って選考書類を作成していた場合、採用意欲に影響はあるか」と尋ねたところ、採用担当者の「75.5%」が「変わらない」と回答。基本的に採用意欲への影響はないとする回答が大多数を占めた。

しかし、「採用意欲が下がる」との回答は「22.3%」に上った。「採用意欲が上がる」との回答は「2.2%」に留まったが、どうやら企業の人事担当者の多くは働き手がChatGPTを転職活動に利用することに対して、そこまで強い抵抗感などを抱いていないようだ。

「変わらない」と答えた人にその理由を聞いてみると、

・当人が記載する・しない問わず、履歴書などには大げさな記載もあり、それも含めて面接を通じて確認するから(機械メーカー)

・ChatGPTを使っているとバレバレな履歴書であればNGだが、うまく取り入れているならばむしろ能力が高いとも判断できる。素晴らしい履歴書、職務経歴書でも、嘘であれば面接時にボロが出るから(サービス・アミューズメント)

・文章力は関係なく、職歴や実績をみているため(コンサルティング・調査・士業)

・状況に応じて最適なツールを選択することに違和感はないため(教育・保育)

などが挙がった。

次いで、「採用意欲が下がる」と答えた人事担当者に理由を聞いたところ、

・本人の考えではなく模範的な意見という印象になるため(製造業)

・自分の言葉ではないため弊社への応募意欲を疑うから(ゲーム開発)

などの意見が多く挙がった。

同社では、

「候補者本人の考えや言葉でないことが良くない印象、ひいては採用意欲の低下につながっているようすがうかがえます」

としている。

最後に、「採用意欲が下がる」と答えた人事担当者に、「選考過程において候補者のChatGPT利用を禁止する予定はあるか」聞いたところ、「禁止しない」が「71.0%」、「禁止する(禁止を検討する)」が「29.0%」となった。

ChatGPTの転職利用に良くない印象を持ち、利用禁止まで視野に入れている企業も3割程度はあるものの、大半の企業は利用を受け入れる方針のようだ。

調査の総括として同社は次のようにコメントしている。

「国内でもさまざまなシーンで利用が広がっているChatGPT。現状では転職活動において候補者がChatGPTを利用することに関してはさほど抵抗感なく、利用を見分けることが困難であるということも相まって、利用を許容する姿勢を持つ企業が多いことがわかりました」
「すでに転職活動において文章や書類の作成・添削にChatGPTを利用している人や今後積極的に利用したいとする働き手が少なくないという結果でしたが、今回の調査の結果を踏まえると、今後も便利なツールを取り入れようとする転職希望者は増えていく可能性が大いにあると言えそうです」
「AIやITの目まぐるしい発達によって、便利なツールが日々輩出されている時代だからこそ、人も企業もそれらのツールをどのように取り入れ、活用していくのか、その都度慎重に模索していく必要があるのではないでしょうか」

2023/6/2 7:00

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