岸田首相長男、秘書官辞職。小泉進次郎とは異なる「フツーにいいヤツ」が権力を握る“恐ろしさ”

 岸田文雄総理の長男で、首相秘書官を務めていた翔太郎氏が6月1日付で辞職することになりました。昨年末に首相公邸で親族らと忘年会を開き、組閣ごっこの写真を撮るなどした行動の責任を取った格好(かっこう)です。

 今年1月の首相の欧米歴訪に同行した際、公用車でお土産(アルマーニのネクタイ)を購入して批判を浴びたこともあり、とうとう岸田総理もかばい切れなくなったようです。

◆セコいゆえに恐ろしい岸田元秘書官

 この翔太郎さん、世襲議員のご多分にもれず輝かしい経歴の持ち主です。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、三井物産に入社。そして2020年から岸田文雄事務所で公設秘書を務め、現在に至るというキャリア。いずれはお父様の後を継ぐのでしょう。

 いかにも由緒正しい二世といった趣きですが、しかし、どうも引っかかるのです。なんかやってることが幼稚でセコくね?

 というわけで、自民党が誇る世襲の大物と比べて、岸田翔太郎さんの極小なスケール感と、それゆえの恐ろしさについて考えてみたいと思います。

◆安倍元首相と同じく仲良しだが、思想はない岸田母子

 今回より前に翔太郎氏に不祥事が発覚したときに、母の裕子氏は更迭(こうてつ)に反対してきたとの報道がありました。(『SmartFLASH』2023年5月29日配信「公邸で忘年会」の岸田翔太郎秘書官、心が折れて自ら「もう辞める!」母も“悪ノリ撮影”かばい切れず)これが本当だとすれば、息子への母、裕子氏の愛の深さを思わずにはいられません。

 そこで思い出すのが、故・安倍晋三元総理です。安倍氏も、母の洋子氏と大変に仲がよく、成人した後も映画をいっしょに鑑賞しては、感想を語り合うほどの関係だったそう。(『安倍三代』著・青木理 より)

 ただし安倍氏には良くも悪くも祖父・岸信介の政治信念を受け継ぐとの自負がありました。岸のDNAを受け継ぎ、日本国を背負って立つのは他ならぬ自分であるとの意識から、母の洋子氏にシンパシーを抱き、洋子氏も安倍氏に愛を注いできたわけですね。

 ところが、翔太郎氏からはそのようなイデオロギーが全く感じられません。つまり、生まれながらにして裕福で社会的地位の高さに恵まれた人が、そのままエスカレーター式で最高権力の中枢(ちゅうすう)に組み込まれてしまった。

 このあまりのスムーズさに、安倍氏の思想的執念とは違った恐ろしさを感じてしまいます。

 そして、翔太郎氏の屈託のない明るいハメの外し方が、スムーズであることの危うさを証明しているように思うのですね。

◆小泉進次郎議員に比べてフツーに“いいヤツ”

 次に、翔太郎氏個人にスポットを当てたいと思います。インタビューを受ける姿や、外見などから察するに、きっといいヤツなのでしょう。でなければ、官邸での忘年会にあれだけの「ご親戚」は集まらないはずです。しかし、その“いいヤツ”感が政治家としてプラスに働くかどうかは別の問題なのかもしれません。

 ここで思い出すのが、小泉進次郎議員です。

 進次郎氏が議員になる遥か以前、父の小泉純一郎首相(当時)と箱根でキャッチボールをする様子が報道されました。後継者と目されていた進次郎氏の目は鋭かった。好青年の雰囲気はあるのですが、生半可(なまはんか)な“いいヤツ”ではないオーラがありました。

 筆者個人の話になって恐縮ですが、横須賀中央駅の喫茶店でアルバイトをしていた当時の進次郎氏を見たことがあります。やはりそのときから近寄りがたい覇気(はき)がみなぎっていたのを今でも思い出すのです。

 それに比べると翔太郎氏は、いかにもフツーです。繰り返しになりますが、間違いなく好人物で、友だちとして付き合えば絶対に楽しいタイプでしょう。

 しかし、だからこそ恐ろしいのです。自分が最高権力者に近いという畏(おそ)れがあればあんな風に“いいヤツ”でいられるはずがないのに、翔太郎氏はいつも陽気な新入社員みたいでした。

 自分がどの立場で何をしているか理解をしている雰囲気のない人物が、国家権力の中枢にいた。この事実を忘れてはならないのだと思います。

◆貧相なスケールで政治家に不向きな長男を要職で起用した家族愛

 翔太郎氏の辞職について、政治アナリストの伊藤惇夫氏は「家柄も学歴も職歴も文句ない。となると、欠けているのは良識と常識かな」と述べました。(5月30日放送TBS系『ひるおび!』での発言)

 指摘の通りです。けれども、よくよく考えると、彼のしたことは公用車でお土産を買いに行き、官邸で盛り上がりすぎてしまった。せいぜいこの程度です。

 だとすれば、良識と常識が決定的に欠けているとも言い難い。むしろ、そこまでの小さな悪にすら達しない貧相(ひんそう)なスケール感の粗相(そそう)なのですね。誤解を承知で言えば、政治家の悪事としては全く物足りない。論外の幼さだと言うべきでしょう。

 そのような全く政治家に不向きな翔太郎氏を要職で起用してしまった、岸田総理、裕子夫人のハートウォーミングすぎる家族愛。それこそが問われるべき任命責任なのだと思います。

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

2023/6/1 8:46

この記事のみんなのコメント

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  • トリトン

    6/6 9:13

    進次郎は国民から嫌われて彼の制作は無駄なのに(レジ袋無駄なことなのに未だ料理とってる、環境税まで入れて物価上げる悪辣さ)まだアホの岸田の息子のほうが更迭されただけでも数倍ましだよ。政治家デデキ婚やった政治より結婚前で夜のの方に力を入れて子育てで休みを取る(悪くはないが)遊びをゆうせんしたからね。そしてまだしぶとく政治家やってるクソ野郎。

  • あきひろ

    6/6 7:13

    進次郎は能力が高いだろ。惜しいのは彼の言葉を正しく理解できないマスゴミや大衆がアホすぎることかな。

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