かつてはテレビタレントとして売れれば安泰だった芸能界だが、昨今ではかつてほど稼げなくなったという声をよく耳にする。そんななか芸能人の多くは、ブランドプロデュースや飲食店経営、さらにはYouTube進出など活動の幅を広げている。

　お笑いコンビ「流れ星☆」のたきうえ（瀧上伸一郎）さん（@hansamu1212）もそんな一人だ。『THE MANZAI 2013』決勝進出するなど実力派コンビとしてテレビなどで活躍する彼だが、実は新築アパートを複数所有する“大家芸人”としての顔を持つ。そのきっかけや相方であるちゅうえいさんの反応は？ 本人に話を聞いた。

◆たきうえ流「不動産投資術」

――たきうえさんがお持ちの投資物件の概要を教えてください。

たきうえ：アパート2棟所有していて、ひとつは亀有駅徒歩10分圏内の、新築1Kが14部屋ある物件です。2棟目は松戸駅徒歩10分圏内にある、木造アパート3階建てで9部屋の物件です。全室ロフト付きで、こちらはペット可。あと太陽光発電が4基あります。

――投資物件はどうやって探すのですか？

たきうえ：普通にネットで探します。物件サイトの「楽待」とかで探すんですけど、人気物件ランキングをよく見ています。そこで物件じゃなくて上位に載っている会社に注目するんです。

　頻繁にランキングに乗る会社さんは仕入れが強かったり、他にもいい物件持っていたりする可能性があるので、連絡しておくと、その時は物件が買えなくても次にいい物件が出たら、それを紹介してもらえる。あと物件サイト見ていると、今の不動産の値段はこれくらいって相場観がわかります。ちなみに僕が不動産投資やっていると公表してから、インスタのDMで営業が来るんですね。ルール違反だろ」と思いますよね（笑）。

◆何十行から門前払いになった

――投資物件の良し悪しはどうやって判断するのですか？

たきうえ：基本は利回りですね。都内近郊のアパートで8％近く、マンションだったら7％ほどの利回りがほしいところです。どちらかというと自分がどうよりも銀行の基準に合うかが大きいです。

――銀行の基準とは？

たきうえ：不動産の資産価値を見る積算評価や、収益力を見る収益還元で基準があるので、新築や築浅物件でないとハマらないんです。僕は芸人なので、そもそも融資してくれる銀行が少ない。それこそ何十行も通って門前払いで断られているんですね。

　でも銀行って断るとき、「総合的な判断で」とかで具体的な理由は教えてくれないんですよ。だけど何となく、自分が芸人だからってわかるじゃないですか。そこであえて「たぶん、職業が芸人なのがネックだと思うんですけど」って芸人でも大丈夫な理由を列挙した資料をプロフィールシートに添えてお送りするんです。

「浅井企画はギャラの取り分が7：3で、芸人が7をいただいている、ホワイトな事務所です」「テレビよりもイベントの仕事のほうが安定してて実入りがいいです」とか、向こうから信頼を得られる情報を報告しています。僕、太陽光発電でローン借りるときに1回審査に落ちたんです。

　でも、ダメ元で手紙を書いて、「貸してもちゃんと返せます」って説明したら貸してもらえたんです。担当者も「普通、こんなことない」って驚いてました。相手が銀行でも結局、人対人なんだなと。

◆SNSで物件を公開したらDMが50件

――たきうえさんらしい方法で金融機関を開拓されてるんですね。先日Twitterで賃貸募集をされて話題になってます。

たきうえ：これは管理会社がダメダメで、本来3月は繁忙期なのに全然入居を決められなくて。「俺が何とかするしかない」と、本当は嫌だったけど自らツイートしました。物件がバレるといったデメリットもあるじゃないですか。でもおかげさまで反響がすごくて、DMが50件くらいきたんです。なのに、内見までいったのは1件でした。

――意外と少ない。

たきうえ：しかもキャンセルされて、まだ決まってないです（泣）。冷やかし防止のため、個人情報を事前に教えてもらって名前や勤務先がわかっている人に管理会社の番号教えるんですけど、あとで管理会社に確認すると「何も連絡ありません」ってどういうこと。「何なの？ 死んじゃったの？」ってなりますよ。そんなのが10件くらい続くと、人間不信になりますよね。

――たきうえさんならではの入居者特典を用意するのはどうでしょう？

たきうえ：もし入居してくださったら、壁に流れ星☆のサインつけますのでお願いします。ちゅうえいのサインは僕の代筆になりますけど（笑）。入居者全員、流れ星☆ファンのマンションになって、住人の交流が生まれて「次のライブ行く？」なんて会話をしていたら大家冥利に尽きそうです（笑）。

◆狙っているのはエジプトの不動産投資

――芸人としての知名度があるので、怪しい儲け話が来ることはあります？

たきうえ：「不動産投資なんて、誰に勧められたの？」ってよく聞かれるんですけど、これ違うんですよ。僕が自ら調べて、自分で問い合わせしているんです。だから今のところ、うさん臭い人に会っていない。面白そうだと自分で調べた結果、うさん臭いことはありますけど。ちなみにいま興味があるのが、エジプトの不動産投資です。

――それはうさん臭いのでは？（汗）

たきうえ：エジプトが人口問題を抱える首都をカイロから移転するので、「将来、移転先の不動産が値上がりするから今のうちに買いましょう」ってやつなんですけど。所有物件が亀有、松戸ときて、エジプトだったら「え、どういうこと？」って面白いかなと。ちゅうえいに「位置についてヨーイ、スフィンクス」ってギャグがあるので何かの縁があるのかもしれませんが。とはいえ、結局は自己責任の世界なので、納得が行くまで調べてから投資判断はしますし、僕が誰かに投資をすすめることはないです。

◆節約のため「発泡酒しか体が受けつけない」

――ご自身のなかで副業のゴールのイメージは？

たきうえ：流れ星☆の収入を上回ることかなと思っています。僕の根幹にずっとあった、芸人の収入が途絶える恐怖が解消されたら、僕の中でひとつのゴールになると思います。

　でも、正直、どこがゴールだろうという悩みが現在進行形であって、投資で成功してお金がある程度あっても、次の物件購入のために「とっておかなきゃ」ってビールも発泡酒しか体が受けつけないんです（笑）。「スーパードライは贅沢品、もう一棟建ててから飲もう！」ってなって、今は「欲しがりません、勝つまでは」が座右の銘です（笑）。

　あとは趣味でマジンガーZやレトロ系のロボットフィギュア集めていて、ガラスケースに入れて飾っているんですけど、どんどんフィギュアが増えているんです。不動産もそうなりつつあって、1棟買ったら次の1棟を買いたくなる。収集癖というか、コレクション感覚はあるかもしれません。

◆『水ダウ』で不仲芸人として話題に

――副業の収入が、流れ星☆の収入を上回ったとき、どんな変化があると思います？

たきうえ：すごくちゅうえいに優しくなれる気がします（笑）。ステージでちゅうえいがすべっても、「ま、いいか」で流せるかもしれません。「今日は空が晴れてるし、太陽光が稼いでくれている」みたいな。芸人を引退する気は全くないですけどね。みなさん誤解されていますが、僕は決してお笑いをおろそかにしてるのではなく、お笑いに集中したいから、不安要素を取り除くために副業を頑張っているんです。

――相方のちゅうえいさんは、たきうえさんの副業に理解あります？

たきうえ：文句を言ってきますね（笑）。でも全然険悪な感じじゃないです。少し前に『水曜日のダウンタウン』（TBS系）で不仲芸人として出させていただいたので、心配になった方もいるかもしれませんが、ちゅうえいとは高校からの同級生で付き合いも長いですからね。ケンカするときはケンカするし、仲いいときは仲がいい感じです。

◆『THE SECOND』、単独ライブツアーも

――コンビ名を改名されて星がついてます。新生・流れ星☆の野望を。

たきうえ：ちょうど今、賞レースの『THE SECOND～漫才トーナメント～』に出ています。今度グランプリファイナルを賭けた準決勝でプラスマイナスと対戦します。それに勝って、決勝進出が目の前の目標ですね（見事勝利。取材日は3月24日）。

　優勝して賞金もらえたら、頭金にしてアパートをもう1棟買うのは完璧なプランです（笑）。今年は7月29日から全国を巡る単独ライブツアーも始まります。相方のちゅうえいも“築44年”と、だいぶ古くなってるので、大事にメンテナンスしながら頑張っていきます。

――今は投資に興味を持つ若者も増えていますが、たきうえさんからメッセージを。

たきうえ：今はNISAが新制度になったり、確定拠出年金を用意したりと、日本政府も投資を勧めていますね。これは「投資を非課税にするけど、年金は自分で積み立ててね」という政府からの強烈なメッセージだと思うんです。なので、流れには乗っかったほうがいいと思います。まずはつみたてNISAからはじめましょう！

＜取材・文／栗林篤＞

【たきうえ】

ともに岐阜県出身のちゅうえいと、高校卒業後の2000年にお笑いコンビ「流れ星」を結成（2021年に流れ星☆に改名）。2013年に『THE MANZAI』で決勝進出し、一躍人気芸人の仲間入りに。2020年に本名の瀧上伸一郎から「TAKIUE」、2022年には現在の芸名に改名している。流れ星☆単独ライブツアー 2023 「我道」が7月29日より開催！

【栗林 篤】

不動産、マネー、ネットカルチャー分野を得意とするフリーライター。社会事情についても執筆する。

著書に『サラリーマンのままで副業1000万円』（WAVE出版）。Twitter：@yuutaiooya