「偉い人に体を触られた」元宗教2世の女性が語る“性被害”と“毒親との絶縁”

 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)やエホバの証人など苛烈な体験を負った宗教2世に対し、世間の目が向くようになった昨今、政府・与野党もその救済に奔走している。

 たまみかさん(@tamamika_jp)は幼少期に虐待や性被害を経験し、宗教2世としても辛い思いをしてきた。現在は2児の母として子育てに励みつつ、自らの過去をSNSなどで発信し、多くの共感を集めている。そんなたまみかさんに、知的障害のある兄と過ごした幼少期、宗教にのめり込んだ母との確執と絶縁、SNSなどで発信している理由を聞いた。

◆脳梗塞の後遺症で父親が暴力をふるうように

――たまみかさんのご家族についてお聞きします。お父様について教えてください。

たまみか:父が43歳のときに私が生まれたんですよ。だから、結構年が離れています。私が生まれたときは大工の仕事をしていて、職人気質というか、昔の昭和親父みたいな感じで、家族より仕事に生きる人でした。

――お父様は、年が離れていたたまみかさんが可愛かったと思います。Twitterなどでも、可愛がってもらった記憶があると書かれていましたよね。

たまみか:体を壊す前の父が優しかった記憶はあります。父は、アルコール依存症になって、その後に脳梗塞をしているんですよ。脳梗塞の後遺症の高次機能障害で、子どものことを認識できなくなったり曖昧になったりすることがあるので、そういうのが原因で暴力的になったのかなと今は思っています。

◆上の兄が健常者で、下の兄が障害者

――お母様について教えてください。

たまみか:母が36歳のときに私が生まれました。実は私は3人兄妹なんですよ。兄が2人いて、上の兄が健常者で、下の兄が障害者でした。男の子が2人もいて、しかもその1人が知的障害で、母は大変だったと思います。母に「どうして私を産もうって思ったの?」と聞いたら、「話し相手が欲しかったから」と言われました。「そんな感覚で子どもが生まれるのか」と思った記憶があります。

――お母様はお仕事をされていましたか?

たまみか:私が小さいときは専業主婦で、時々内職をしていました。下の兄の世話が忙しくて、働きに出られなかったようです。下の兄は学校へ行くにも母の送迎が必要でしたし、1人で置いておけませんでしたから。家計は全然余裕がありませんでした。

◆2人の兄との“複雑な関係”とは

――続けてお兄様についてお聞きします。上のお兄様は健常者だったという話でしたが、そちらは問題なく仲良くしていたのでしょうか?

たまみか:12歳離れているから、兄のようで兄じゃないんですよ。私が物心ついたときには家を出ていました。兄は16歳で高校に進学せずに家を出ました。私と同じで、家にいるのがすごく嫌だったんだと思います。

――下のお兄様は障害があったんですね。

たまみか:11歳年上の兄は知的障害で、5歳ぐらいの知能だといわれていました。だから、複雑な会話ができなかったり、衛生観念がなかったりという感じでした。暴力的で他害が怖かったです。

 兄は「今やってほしくない」というときに限ってやってくるんですよ。うどんを持っているときに殴りかかられたり、宿題をやっていてもうすぐ終わるときに全部破られたりしました。兄は「今はやめて」という私の気持ちをわかってやっているのかなと思ったくらいでした。

◆病院にも行けず精神的な虐待も

――たまみかさんがご家族から受けた虐待について教えてください。殴られて左耳があまり聴こえなくなり、小指と薬指も動かしにくくなったというエピソードは、かなり衝撃的でした。

たまみか:両親ともすぐに手が出るんですよ。両親自身も暴力を受けて育ったからか、「子どもは殴って当たり前」で、それがどんどんエスカレートしていくんですよね。たぶん本人たちも自分で止められなかったんだと思います。

 暴力の他には無視が結構多かったです。私は子どものときから「なんで?」と思う、曲がったことが引っかかるタイプでした。「なんで私はこうしたのにこうなるの?」と筋の通ったことを私が言ったら、両親とも無視です。都合の悪いことは無視。こちらが真っ当なことを突きつけたら無視。

――身体的な暴力だけでなく、ネグレクトも精神的なダメージが大きそうですね。

たまみか:病院に連れて行ってもらえないこともありました。それから、裕福でなかったので洋服や学用品を買ってもらえなかったし、入浴や歯磨きや洗顔などの習慣もつけられなかったです。これもネグレクトに入りますね。こういうのは気づかれにくい虐待です。

◆プライドが高かった母親が宗教に入信

――そのつながりでもあるのですが、お母様が入信していた宗教について教えてください。ネットで調べてもほとんど情報が出てこない宗教ですね。

たまみか:あまり大きくない宗教なのかなと思います。教え自体は結構いいこと書いてあるんですよ。ただ、「先祖を供養することが幸せに生きる道」みたいな宗教で、先祖供養が大前提にありました。

 両親は徳島県の山間部の人口の少ない村で生まれているんですよ。当時この地域では、障害を持って生まれた人は差別されていました。呪われているとか、祟られているとか、母親自身が欠陥みたいにいわれます。

 母はプライドが高かったので、自分の子どもが障害を持って生まれてきたのが辛かった、というか認めたくなかったはずです。そういうときに、同じ障害者の親御さんから「こういう宗教があって、私はすごく救われたんだよ」と勧誘されて、「私が障害者の子どもを産んだのは、私が欠陥品でなくて、祟りでもなくて、ご先祖様を供養しなかったからなんだ」みたいに意味や理由を見つけたのかなと思います。すごくプライドが高かった母は、宗教を自分の中に落とし込み、そこで救われたと感じたんですね。

◆友達の誕生日に自分だけ呼ばれなくなる

――お母様が宗教にのめり込んだことでたまみかさんご自身が経験されたことを教えてください。

たまみか:小学生の私は友達ができないタイプでした。でも、たまに友達になってくれる子がいて、その子と遊ぶと、私が学校に行っている間に母がその子の家に行って宗教に勧誘するんですよ。その宗教では勧誘を「お導き」といいます。

 その子のおうちの方が他宗教でお導きを断ると、母は「せっかくお導きしてあげたのに断るなんて、もうあの子と遊んじゃあかん!」と怒りました。当然、向こうの親も「みかちゃんが来たら嫌!」となります。

 友達のお誕生日会に私だけ呼ばれなくて、その理由は宗教に勧誘してくる親がいるからでした。それがすごく嫌でした。「私が作った友達なのに、お母さんはなんでそれを壊していくの?」とツラかったんですよ。

◆「あなたのご先祖様は泣いている」

――宗教に勧誘ノルマがあるのでしょうか?

たまみか:ノルマはあったと思います。私の友達は手当たり次第に勧誘していました。もうちょっとで落とせそうなときに、別の信者の人がサッと勧誘して「私の勧誘でこの人が入信します」となったら、その友達はすごく怒っていました。「私がお導きしたのに、横から持って行った」となっていたので、競争みたいなのがあったのかもしれません。

――宗教の人に障害のあるお兄様のことを「ツラい」と話したら責められたそうですね。

たまみか:そのときは、「障害は与えられた試練で、それを嫌だとか迷惑だと感じるのは、信仰が足りないからなんだよ」とか「障害者が可哀想だと感じるあなたの心が一番可哀想なんだよ」とか言われて、「もうちょっと信仰心を持ったほうがいい。たぶんあなたのご先祖様は泣いていると思う」と責められました。

「このままだと、あなたが将来子供を産んでも障害者しか生まれない。同じ試練をくり返すよ」という話は子供心に怖かったのを覚えています。障害者のお子さんがいる親御さんがすごく多くて、救いを求めて入信したんだと思います。それなのに、宗教はそういう信者を脅していました。

◆「ご先祖様がくださった」体をべたべた触られる

――性被害を経験されていて、宗教の偉い人からもいたずらされたとのことですが、それをお聞きしてもよろしいでしょうか?

たまみか:Twitterには、3歳のときに母の知人の息子からされたことや、低学年のときに下校中に遭遇したことを書いています。私にいたずらした宗教の偉い人は、地域の協会長みたいな人でした。信者はその人のところに毎週日曜日に集まります。

 母がその人に「みかが全然言うことを聞かない」「反抗ばかりして、全然お友達をお導きしない」「おうちでもお仏壇に全然手を合わせない」などと相談しました。そうしたら、私はその人に呼ばれて、「どうしてしないの? 何が嫌なの?」と聞かれました。私が「ご先祖様を供養するより、自分の子どもや今いる家族と仲良くしたほうが幸せだと思う」と答えたら、その人は「それは違うよ。この心も体もご先祖さまがくださったものだよ」と言いながら私の体をべたべた触ったんですよ。

 このとき、私は「この人は他でもやっているな」と思って、「こんな人が、人が幸せに生きる道みたいなのを説くのはおかしい。本に書かれていることはすばらしいのに、なんでこいつらはこんなんなの?」と宗教に対する不信感を募らせました。

◆子供を奪おうとするから、母親と絶縁

――お母様とも最終的には絶縁されたとのことですが、その経緯を教えてください。

たまみか:母が子どもたちに私の悪口を吹き込んだり、「おばあちゃんのうちから学校に行ってもいいよ」と言ったりしていました。私の子どもたちを育てたかったようで、「こんな素直な子たちだったら、私が育てたかった。あなたにしてあげなかったことをこの子たちにはしてあげたいと思う」とも言っていました。

 子育ては1人につき1回きりです。それなのに母はやり直しを望んで、しかも、それを私の子どもたちでしようとしていて、本当にやめてほしかったんですよ。でも、母は意地でも私から子どもたちを奪おうとしている感じがしたので、ある程度のことは我慢していましたが、最後には絶縁しました。

――絶縁とは具体的に何をされたんですか? メールを送ったり、手紙を送ったりしたのでしょうか? 法的に何かしたわけではありませんよね?

たまみか:法的に何かしたわけではないですね。メールで「子どもたちに私の悪口を吹き込んだり、あることないこと話したりされるなら、もう子どもたちを会わすことはできないし、私もあなたをお母さんと思うことができない」というメールを送りました。

 その後も母から普通に「ヤッホー! 元気?」みたいなメールが来ていました。私は「伝わってないんかな?」と思ったけど、ずっと無視していました。そういうメールさえ来なくなったのはここ1年くらいです。

◆ツラい経験をSNSで発信「絶対に大丈夫と思って」

――SNSやnoteでご自身の経験を発信されている理由をお聞きしたいです。

たまみか:最初は「自分と同じ思いをしている人を救いたい」というのが理由でした。「私の文章や言葉で、私と同じ思いをしている人が勇気を持ってくれたり、元気を出してくれたりすると嬉しい」と思ってやっていました。やっているうちに、「おこがましい」「人を救えるのか?」と考えるようになってきました。でも、やっぱり救いたい気持ちが根底だと思います。

「私みたいな人間も人並みの暮らしをしているよ」というのを見てもらって、「あなたたちが今すごく苦しいかもしれないけれど、絶対に大丈夫」と思ってもらいたいんですよ。こういうことを簡単に言うのは嫌なんだけど、私が直接言わなくても伝わったらうれしいですね。

――Twitterには「いろいろな方とつながりたかった」と書かれていましたね。

たまみか:それもすごく大きいです。あとは、書き出すことで自分と向き合えるのもあります。自分はこういうことを感じて、ここに対してはこう思っていたんだというのは、文章化して初めてわかります。逆に、文章や言葉に出さなかったら、自分の感情などがわからないですね。

 今、私は嬉しいのかな? 悲しいのかな? この出来事に対して、私はどう感じているのかな? こういうのが自分だけではわからないから、文章にして発信して、誰かがリプライくれたら、「やっぱりそうなんや」とか「それはやっぱり違うな」とか思えます。そこで初めて向き合える感じです。

<取材・文/本間秀明>

【みみずく】

家庭教師&ライター。アート、オカルト、教育を軸に、広く文化全般が興味関心の対象です。まじめに教材作成をする一方、サブカル、妖怪、アングラ、フェチなどに関連するイベントを取材します。水木しげる御大がお亡くなりになった年に「境港妖怪検定」上級合格、数少ない上級妖怪博士になりました。著書『がんばらなくても偏差値が10あがる中学生の勉強法70のヒント』、教育サイト「みみずく戦略室」、Twitterアカウント:@mimizuku_tutor

2023/3/24 8:53

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