「身分証も携帯も捨てた」家出少年、ODに耽る少女…居場所を求めるトー横キッズのリアル

行き場のない若者が集まり、社会問題化する新宿歌舞伎町のトー横キッズ。彼ら彼女らを取り巻く環境はいま変革期にある。多発する事件、コロナの収束、そしてハウルの死――。居場所を求めて身を寄せ合った先に、何が起きているのか?

◆「最近は治安が特に悪い」トー横キッズのリアル

ゴミが散乱する地べたに座り、酒や煙草を口にし、オーバードーズで意識が朦朧となった少女が横たわる。新宿・歌舞伎町シネシティ広場には、今日も地雷系ファッションに身を包んだ若者が集まっていた。

「トー横キッズ」「トー横界隈」が世間に認知されるようになって約2年。界隈古参の20代男性はこう語る。

「最近は治安が特に悪い。卍會がいた頃は、最低限のルールを守る意識があった。皆、昔のほうがよかったって言ってるよ」

卍會とは、炊き出しや清掃活動などの自警団的活動をしていた団体だ。代表のハウルが、今年6月に逮捕されたことで実質解散となり、無法地帯化が加速。

このほか度重なる事件や逮捕により、トー横キッズは一斉補導されている。夏をピークに界隈規模は縮小し、そのうえ11月にハウルが拘置所で急逝したことで中心人物を完全に失った。弱体化したトー横キッズは今、さらに混とんとした事態に陥っている。

◆「身分証も携帯も捨てた」家出少年、決死の覚悟

「俺、東北からヒッチハイクして昨日ここに着いたんです。警察に捕まらないよう遠くに逃げようって。絶対見つからんように身分証も携帯も捨ててきた。俺は覚悟が違う」

ロングコートを着た15歳の少年は、どこにでもいる中学生に見える。全国で知られるようになったトー横は聖地化し、遠方から家出してたどり着くことも珍しくない。

「小さい頃に親は離婚。母親に虐待されてて、そのせいで反応性愛着障害にもなった。暴力で死にかけたこともある。ずっと捨てる捨てるって言われてきたし、不登校だからって寮つきの高校にしろと言いだしたから家出してきた」

トー横キッズに勧められて飲酒と喫煙をし、あっという間に染まっていった。所持金は2000円。中学生以下だとバイトもできない。

「もう体売るしかないから(新宿)二丁目行きましたよ。でもホテルに腕を引っ張られたら怖くて逃げちゃった。明日こそ覚悟決める。もう人生棒に振ったよ。自分でも間違ってると思うけど、こうするしかないんです」

“パパ活”をしているのは、もはや少女だけではないのだ。

◆泊まる宿が見つからずオーバードーズに耽る少女

深夜2時、歌舞伎町のホテル街を男女7人のトー横キッズが彷徨っていた。

「朝は私服(警察)が来るから、どっかに泊まりたい。ここは連れ込みできる?」

児童相談所から脱走して1週間の16歳少女。細い腕と脚には、自傷行為の末できた大量の傷が赤くにじんでいる。

トー横キッズの規模が縮小したのは、宿泊施設のルールが厳重化したことも影響している。身分証提示が必須となって未成年者の宿泊が不可となり、宿泊人数を偽って連れ込む不正宿泊の対策が強化された。

また、コロナ禍では宿泊費が破格で空室も多かったため連泊も容易だったが、近頃はそうもいかない。

◆「パキると記憶が飛んで嫌なこと忘れられるの」

「今でも連れ込みがバレないのはホテルLとSしかないよ」と界隈の先輩は助言する。それでも少女はラブホテルで不正宿泊を試みてバレてしまい、通報される寸前で逃げた。

「未成年だから警察に補導されたら保護所行きだし、お金もなくて苦しい。パパ活は5回やったけど、なるべくやりたくない。でも家にも帰りたくない。学校じゃ虐待とか児相(児童相談所)の話しても合わないけど、ここは同じようなコがいっぱいいるし」

ふいにポーチから薬を取り出し、10錠ほど一気に口に含んだ。メジコンという咳止め錠でトー横キッズが“愛用”している薬だ。

「パキると記憶が飛んで嫌なこと忘れられるの」

宿は見つからず、野宿のため地下街へ姿を消した。

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部

―[歌舞伎町[トー横キッズ]最新事情]―

2022/12/22 15:53

この記事のみんなのコメント

1
  • いち(

    12/22 20:17

    檻にでも入れて海に沈めたったらええねん。

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