川崎幼稚園、園児死亡事件における「ヘラヘラ」会見。謎の笑顔の理由を解明する――2022年トップ10

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2022年、日刊SPA!で反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。今年、大きな影響があった「ニュース」部門の第9位は、こちら。(集計期間は2022年1月~11月まで。初公開日2022年9月14日 記事は取材時の状況)

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◆ 悲惨な事故の責任を問われ、なぜ満面の笑顔なのか?

 静岡県牧之原市の幼稚園に通っていた河本千奈ちゃん(3)が、送迎バスに置き去りにされ、熱射病で亡くなるという事件が発生しました。9月5日のことです。事件を起こしたのは、認定こども園「川崎幼稚園」。園は9月7日に記者会見を開きましたが、会見中の増田立義理事長兼園長(73)及び杉本智子副園長(58)の態度に非難が集まっています。

 園児の命が失われてしまったという事実にも関わらず、会見中の園長及び副園長の顔から時折、笑みがこぼれているのです。記者から、亡くなった園児についての思いを問われ、神妙な面持ちで謝罪の言葉を述べる一方で、会見の所々で笑顔が見られる。「本当に反省しているのか」「どんな気持ちなのか」と真意を疑いたくなるのももっともです。

 園長及び副園長は、どんな気持ちで会見に臨み、彼(女)らの笑顔には、どんな意味が込められているのでしょうか。園長及び副園長の表情及びその他言動を通じて、心理分析します。分析に用いた映像は、<「【LIVE】送迎バスに置き去りの経緯説明 女児死亡の幼稚園が初会見」2022年9月10日アクセス>です。

◆日常的な表情のクセが優位に出たとみられる

 2時間を超える会見を見ていて、私が強く抱いた印象は、「希薄な罪悪感」と「混乱」です。園長らの笑顔に、「サイコパスだ」という批評が一部でなされているのを見ましたが、映像を見る限り、そこまでの状態とは思えません。「悪いという気持ち」が全くないわけではなく、事件の発生と会見という不慣れな場に混乱したため、日常的な感情・表情のクセが優位に働いたものだと考えます。

 園長は、園児の乗るバスを運転していた張本人です。会見中、終始うなだれていたことから、恥感情を抱いていたと考えられます。また、各質問に起立して答えており、誠意を示そうとしていた態度が伺われます。

 しかし、恥より、申し訳なさ・責任を感じる程度の強い罪悪感は、ほとんど見られません。罪悪感は、うなだれる+左の口角が引き上げられる、あるいは、眉の内側が引き上げられる表情として表れます。マスク着用の影響で口元はわかりませんが、眉の動きは確認できません。

 園児が置き去りにしてしまった要因が複数挙げられ、さらに「送迎バスを運行する役を事件当日は臨時で行ったため不慣れであった」との旨の発言が園長からあることから、責任の所在が分散されています。また、会見中、園長は、「千奈ちゃん」を「ちなつちゃん」と間違えて呼んでおり、被害園児との物理的・心理的距離が遠いということが推測されます。こうしたことから、恥は抱いても、罪悪感まで抱く心情ではなかったのではないかと考えられます。

◆謎の笑顔の正体は「恥」と「混乱」

 そして火に油を注ぐのが、会見終盤。

「ぜひ皆様方のご協力によりまして良い園を、あるいは僕がいなくなったらさらに良くなるように……」と話したところで、「園を続けるかは決まっていません」と弁護士から指摘を受け、「あ、そっか、廃園になるかもしれないね」と、園長は、目じりにしわを寄せ、満面の笑みで発言します。

 私たちは、ミスを笑ってごまかすことがあります。しかし、こうした笑顔は意識していれば、抑制することが出来ます。園長の場合、先の心情がベースにあったことから、緊張感が欠如し、こうした日常的なコミュニケーションの慣性が漏洩したのだと考えられます。

 会見の中心的な役割を果たしていた副園長。園長に比べ、彼女の笑みの方が目立ちました。記者の質問に答える際、軽い笑みを浮かべ返答し、会見の随所で起こる記者とのミスコミュニケーション(発話の訂正や聞き間違え、返答ミス、言うべきではない発言の漏洩等)時に噴き出すような笑いを見せます。注意深く観察していればわかりますが、副園長の顔から笑顔がこぼれるのは、副園長が一方的に話す場面ではなく、双方向のコミュニケーション時です。

◆副園長の表情にもミスを笑って緩和させるクセが散見

 一方で、被害園児について話を振られると、眉の内側を引き上げ、悲しみや罪悪感表情を浮かべ、言葉を詰まらせる場面も見受けられます。

 おそらく、副園長は、普段、人と会話するときは笑みを浮かべ、コミュニケーション中に起こるミスを笑って緩和させるというクセを持っているのだと推測されます。

 副園長の場合、事件発生を受け、さらに会見という不慣れな場において、緊張・混乱し、どのようなコミュニケーションをしたらよいかわからなくなり、日常のコミュニケーションのクセが優位に表れたものと考えられます。

 本会見において、園長・副園長が誤解を招く態度をとっていたことは間違いありません。しかし、笑顔一つとって、極悪人と決めつけるのも間違っています。人の心理の複雑さを見つめ、冷静に問題を捉える姿勢が大切だと思います。事件の全容は、捜査のメスが入り、これからさらに明らかになることでしょう。本件を教訓に、さらに安心・安全な幼稚園・保育園運営がなされることを願っています。

文/清水建二

―[2022年トップ10「ニュース」部門]―

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役、防衛省研修講師、特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。著書に『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社、『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社などがある。

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  • 12/7 15:45
  • 日刊SPA!

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