必然だったコスタリカ戦の敗戦。チームに欠けていた「意思統一の欠如」

 現在カタールで開催中のFIFAワールドカップ2022に臨んでいるサッカー日本代表は、第1戦のドイツ代表戦に勝利して歴史的な逆転劇を演じた。そして、27日はコスタリカ代表との一戦を迎えたが、0-1で敗戦。同グループのスペイン代表とドイツ代表の試合は1-1で引き分けとなったため、日本のグループステージ突破に暗雲が立ち込めている。1日(日本時間2日午前4:00キックオフ)にはグループステージ最終戦をスペイン相手に戦い、決勝トーナメント進出を目指すことになった。

 コスタリカ戦は誰の目から見ても明らかなほど、日本が優位に試合を進めていた。相手がどのような布陣でどう出てくるかわからないなか、「4-2-3-1」のフォーメーションで臨んだ日本だったが、相手が5バックで守りを固める戦術であることを確認すると、3バックに変更。一転して攻勢に出た。後半に入って選手交代などを活用して攻撃を活性化させたが、コスタリカのゴールは遠かった。逆に、全く攻め手のなかったコスタリカだったが、後半30分あたりからプレッシャーを強めて前へ出る姿勢を見せ始めた。すると後半36分、吉田麻也が浮き球でつなごうとしたボールを守田英正が懸命に足を伸ばしたが、それをコスタリカに奪われて最後はケイセル・フレールに得点を許してしまった。その後、三苫薫のドリブル突破からチャンスをつくった日本だったが、最後まで得点を取ることができずに敗れてしまった。

◆チーム全体がひとつの意思で動けなかった

 勝てる内容だっただけに、悔しさも倍増してしまう。コスタリカは勝利をあきらめたのかと思うほど守備を重視し、試合を通して一度も攻撃の形をつくることができなかった。それにもかかわらず、唯一の枠内シュートを決められて敗戦。圧倒的な差はあったのだがスコアで差をつけられず、終わってみればコスタリカに最高の結果を献上してしまった。

 局面から分析して敗戦の原因を挙げればキリがないし、次のスペイン戦につながるわけでもない。ただ、あえて大きな要因を挙げるとしたら、チーム内での意思疎通がはっきりしていなかったからではないか。ドイツ戦でのシステム変更には、森保一監督から攻めるという意思がはっきりと伝わってきた。一方、コスタリカ戦では試合前からシステム変更の可能性を示唆していたものの、変更の目的までははっきり伝えきれていなかったのではないかと筆者は考える。チーム全体に得点を奪いにいくという意思の基でプレーしていれば、ゴールに近づくための縦パスはもっと増えていそうなものだ。得点よりも失点しないことを優先させている選手もおり、チームがひとつの意思で動けなかったのではないかと推察する。

◆引き分けでも芽があるとはいえ…

 特に、前線の選手とDFを中心とした後方の選手に、意思の食い違いがあったように感じる。前半のコスタリカは最終ラインを高く保とうとしていた。そういった状況で前線の選手は何度も相手の背後を狙う動きを見せていたが、そのスペースにボールが送られることはほぼなかった。後半に入ると、その流れは顕著になりボールを失うリスクの高いパスが見られなかった。ドイツ戦の成功体験からか浅野拓磨、三苫薫、南野拓実らを投入したが、彼らもパスが回ってこなければ何もできないわけで、勝利を目指すなら柴崎岳や田中碧などパスに定評のある選手を投入すべきだった。それも踏まえて、最後まで勝とうという意思統一ができなかった試合になった。

 グループステージ最終戦のスペイン戦は、日本が勝利すれば文句なく決勝トーナメント進出が決定するが、引き分けた場合は同時刻開催のコスタリカ対ドイツの結果に左右される。とはいえ、ドイツがコスタリカに負けることは正直考えにくく、高確率でドイツが勝つだろう。しかもスペイン同様に大量得点で勝つ可能性は十分有り得る。同勝ち点で並んだ場合は得失点差によって順位が決まるため、日本が引き分けたとしてもドイツが複数得点で勝つと思われるため、グループステージでの敗退が決まる。次のステージに進出する権利は、自らの力で勝ち取るしかないのだ。

 4年前はグループステージ最終戦のポーランド戦で負けているにもかかわらず、他会場の試合経過からこれ以上の失点を防げれば突破可能と考え、戦うことを拒否したパス回しを見せて他力本願にてベスト16入りを果たした。今回の状況では、おそらくそんな状況にはならない。むしろ、勝って突破を決めて4年前の恥辱を払拭しようではないか。勝つしか道はないと退路を断ったほうが、前述したチーム内の意思統一も懸念されることはないだろう。

<文/川原宏樹 写真/日本雑誌協会>

【川原宏樹】

スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

2022/12/1 8:50

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます