2度のスピード離婚…遠野なぎこ(43)に聞く“結婚の失敗学”「離婚の痛みは全然ない」
今日11月22日は「いい夫婦」の日。長年連れ添った人に「長続きの秘訣」を聞くことはよくあるだろう。しかし、ビジネスの世界では「失敗にこそヒントが多い」という考え方が定石だ。そこで、過去に2度の結婚をしながらも、72日と55日という極めて短い期間で離婚に至っている女優の遠野なぎこさんに、話を聞いた。
◆結婚生活でやって後悔したこと
――まずは結婚生活中に、ご自身の性格や考え方が離婚の要因になったと感じる部分を教えてください。
遠野なぎこ(以下、遠野):離婚=失敗と思ってはいないんですが、私は、相手を自分色に染めようとしすぎたかなと思います。相手が自分と違う価値観を持っていると自分に寄せようとして、相手の生き方を尊重できなかったと思います。
――具体的にはどんな行動がありましたか?
遠野:例えば、仕事のやり方や向き合い方ですね。私は、相手の仕事への向き合い方が甘いと思ったときに、それを是正しようとしてしまいました。人にはそれぞれやり方があるんだから、認めてあげなきゃいけなかったのに。
また、それが納得できなかったら結婚すべきではなかったのに、私が自分の仕事に厳しいから、相手もそうであるべきと思ってしまった。私も若かったと思います。
――逆に、行動しなくて後悔していることはありますか?
遠野:それは特にないですね。むしろ、色んなことを出しすぎてしまったと思います。
◆自分を見つめることが大事
――では、結婚前の自分に言いたいことはありますか?
遠野:「結婚生活で、自分を抑えて相手を尊重できる?」って自分に問いただしてみたいです。「彼があなたのものになるわけじゃないのよ」って。
――所有や関係性ではなく、別々の個人が一緒に進むという感覚ですね。
遠野:そうですね。相手は自分のものではなく別の人間で「彼自身」を愛せるか、そして彼は「私自身」を愛してくれるかは大事だと思います。それを確認しとかないと、「あとあと面倒くせーぞ」ってね(笑)。
――インターネットなどで「結婚前に確認すべきこと」を検索すると「相手のこういう部分を確認しましょう」という情報がたくさん出てくるんですが、やっぱりそれ以前に自分が大事ですね。
遠野:そうそう。多くの結婚は家と家の関係があったり、子供がいたりするので、そういった方は、一層しっかりと確認しなくてはいけないと思いますね。私は違いましたけど。
――遠野さんはそうではなかったんですね。
遠野:私は幸か不幸か、子供もいなくて家族や親戚を巻き込むこともありませんでした。だから、離婚のための様々なことも、早めに済ませられたというか、済んでしまったんです。早く済んだせいで「おままごとだ」みたいなことを世間に言われますけど、親戚や子供が関わっていなくて二人できちんと決着をつけたので、「それが何か?」って思います。
◆離婚の辛さとは
――離婚するときに辛かったことは何ですか?
遠野:愛がなくなっていったり、相手への執着が減っていくスピードって、人それぞれですよね。一方は一気に冷めているけど、もう一方はまだ執着していたりします。円満に終わる場合でも、心が離れる速度は人によって違いますよね。そのズレで憎しみが生まれてしまうことがあります。
どちらかが意固地になってしまったり、相手の足を引っ張ってしまったりということにはなって、それは辛い状況を生みますね。
――気持ちがズレたまま、離婚には手続きや連絡事項が発生して、関わらなくてはいけない事も多いですからね。
遠野:私の場合は、同居もしていなかったので、それがとても少なくて済んだんですが、一般的にはその手続きが多くて大変ですよね。
――財布を一緒にしていたりすると、いっそうですね。
遠野:慰謝料が絡むとさらに面倒が多いでしょうね。私は、幸いそういったものはありませんでしたが。
◆離婚原因ランキング
――インターネットで「離婚原因ランキング」などを見てみると、暴力や不倫など、言語道断な原因をのぞいて「性格の不一致」が上位に出てきます。その下に「家族や親戚との折り合い」「生活費を渡さない」「浪費」などお金の問題が続いていくんですが、これについてどう思われますか?
遠野:具体的か大まかかの違いだけだと思いますよ。例えば、金銭感覚のズレや、家族との付き合い方も、広く言えば価値観や性格の不一致になります。この不一致は、私でさえいくつもあったので、長く夫婦をやっている方はもっとあると思います。だから「性格の不一致」とざっくりまとめてしまって、上位にあるんだと思います。
――遠野さんご自身は、ランキングの中に当てはまるものはありますか?
遠野:いえ、ないですね。
――では、別れる原因は、相手の好きだった部分が小さくしぼんだような感じですか?それとも、嫌な部分が大きく見えて来た感覚ですか?
遠野:相手よりも自分ですね。その人と一緒にいる自分が嫌になったように思います。だから、別れてから相手を悪く言ったことはありませんね。一緒にいる自分が自分ではなかったという感覚です。
――では、今結婚を考えている相手がいるような方は「その人と一緒に居て、自分らしく過ごせているか」と、自分に確認する必要はありそうですね。
遠野:そう思いますね。あとは、「嫁」になるのが嫌だったのもかもしれません。例えば、相手のご両親の前で「嫁」としてちゃんとしなきゃとか、お祝いをいただいた時のお返しを考えなきゃとか、そういうのに疲れちゃったのはありますね。
――自分自身というより、嫁という「役割」が合わなかった。
遠野:大人として当然やらなきゃいけないことなんですけどね。でも「これが結婚なら、結婚って何なんだ?」と思ってしまいます。私自身が見えなくなってしまうというか。
◆結婚に向いていない人とは?
――お仕事が、結婚や離婚の選択に影響を及ぼしたことはありますか?
遠野:それはないです。でも、事務所に「幸せなあなたには興味がないんだよ」って言われたことはありますよ(笑)。
――え!?事務所にそんなこと言われるんですか!?(笑)
遠野:私が結婚して仕事が減った時に、当時の事務所の社長に言われてビックリしましたよ(笑)。だから離婚したわけではないですけど、離婚したら確かに仕事はまた増えましたね。
――先ほどの役割ではないですけど、「枠」として求められる部分はあるかもしれませんね。結婚にむいていない人はどんな人だと思いますか?
遠野:私みたいな人なんだろうなぁ。
――具体的にはどんな性格や考え方を指していますか?
遠野:結婚に意味を見出せない、一人でいることが寂しくない、人に弱みを見せにくい、負けを認めたくない、自分の一番弱い部分を見せるくらいなら、一人で過ごしたいというような性格ですね。
◆離婚に失恋以上の痛みは「なかった」
――私も元々、「負けを認めたくない」という性格でしたが、結婚生活の中で「ここは自分が負けないと全部が終わってしまう」と思うと、仕方なく負けを認めてしまう事もあります。
遠野:私はそういう男性が好きですよ。逆に私は、いわゆる「男」な価値観の男性とはぶつかってしまうんですね。彼氏や夫に「もっと弱みを見せていいよ」って言われても困ってしまいます。
――遠野さんご自身のそういう点と、凸凹がうまく合致する人に出会えれば長く続くのかもしれませんね。婚活をしている方の中には結婚という「枠に」とらわれて居たり、「夫婦平等」などを考えがちですが、いびつでも凸凹がうまくハマることが大事なのかもしれませんね。
遠野:でも私は、結婚する意味自体がわからないのでダメかもしれません(笑)。人としてダメなのかもしれないけど、一緒に暮らすのも無理で(笑)。
――これまで2度の離婚は、普通の失恋以上の痛みがありましたか?
遠野:全然ないです。だから結婚する意味がわからないんでしょうね。
◆「最近付き合い始めた方がいます」
――そんな遠野さんですが、お誕生日が11月22日「いい夫婦の日」ですよね。私、数年前に気がついて、失礼ながら、面白くてしょうがなかったんです(笑)。
遠野:うるさいよ!(笑)そうなんですよ。でも、私は今までの2回の結婚では、この日に籍を入れたことはないんですよ。だからまだ、いい夫婦の日バージンで、まだ空いてますよ(笑)。
――今、お付き合いされている方はいるんですか?
遠野:マネージャーにもまだいってないんですけど(取材当時)、実はめちゃくちゃ最近付き合い始めた方がいます。本当にホヤホヤです!
――ええ!それ、私に言ってよかったんですか!?(笑)では、今は楽しい時期ですね。
◆トキメキつつも現実的な話も
遠野:改めて、大人の恋っていいなって思っています。若い頃はうまくできなかった、相手を尊重するということがお互いにできます。こみいった話も、大人なので探り合ったり照れたりせずに、ちょうどいいバランスでできますしね。
トキメキもしつつ将来の計画のような話もちょっとずつできて、好きだから突っ走りたいけど抑えつつみたいなことができるのは、私くらいの年代だからだと思いますね。
――だったら、今年は無理でも来年の11月22日には(笑)。
遠野:いやいや、そこはデリケートな話なので(笑)。しかも、みんなその日に結婚するじゃないですか。私は人とかぶるのが嫌だから、元々その日に籍を入れるというのもあんまり好きじゃないんですよね。
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世間に流れている、結婚に向けての注意点などは、相手を批評するような話ばかりだが、遠野さんからは「自分をしっかり見つめる」という考え方が伝わってきた。今、結婚生活を送っている方、これから結婚を考えている方、この意見を参考にしてみてはいかがだろう。<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。