いつか子供はほしいけど、いまの夫との最高に楽しい関係を変えたくない

by Wes Hicks

親愛なるAM読者のみなさま、ごきげんよう。ものすごい愛です。

10月2日に行われた文学フリマ札幌に参加しました。

会いに来てくださった人の中には「いつもAM読んでます!」「AMのあの回が好きです!」とご丁寧に感想を伝えてくださる人も多く、ウッ……連載やっててよかった……と、文学フリマ終了後に喜びを噛み締めながら酒を爆飲みしました。

11月20日の文学フリマ東京にも参加する予定ですので、また読者のみなさまにお会いで来たらなと思います、

前回の記事では、「異性のいる集まりに参加するときは事前に言ってほしい」とこれまで何度も伝えているにもかかわらず、その約束をしょっちゅう破る彼氏に悩んでいる女性からの相談でした。

守れない約束をする彼氏が悪いのは大前提ですが、相談者の方には自分の価値観ばかりを押し付けてはいないか、自分の価値観を受け入れてくれることが当たり前だと思っていないか、別れる決断をする前に一度考えてみてほしいと思います。

夫との今の関係が楽しくて、父と母になる覚悟をまだ持てない

【相談】

夫と交際7年で結婚し、もうすぐ1周年を迎えます。私も彼もいずれは子供を……と思いつつ、それがいつ訪れるのか模索しています。金銭面含め子どもを育て上げる覚悟があると言いきれないこと、今の関係が変わってしまうのではないかという不安、不器用な私が辛い思いをしてしまうのではないかという心配も彼にはあるようです。

自分たちできちんと子どもを育てられるぞ!という覚悟をもってから授かる夫婦ばかりではないと思いますが、その覚悟がないまま子供ができる可能性を選択する気にはなれず、また今の夫婦であり恋人である関係が最高に楽しくて、母と父になってしまうことに寂しさを感じます。今はまだ急がなくていい、と思いつつ、このまま子供を作るタイミングを失うのではないか、覚悟なんていつまでもできないのではないかと、行く先を仄かに案じています。(29歳)


ウワァ~~~~~わかる、めちゃくちゃわかる、わかりすぎる……!

わたしは32歳で、あなたと同世代です。

また、結婚してもうすぐ5年で、交際期間を含めたら夫とは7~8年一緒にいますから、パートナーと過ごしている時間の長さもあなたと共通しています。だから、「子供ができることでパートナーとの関係性が変わってしまうのではないか」と不安に思う気持ちに、とても共感できるのです。

わたしたち夫婦には子供がいないので、「こういう覚悟を持って妊娠したよ!」と経験談からアドバイスをすることはできないのですが、今のわたしの考え、そして自分の置かれている状況や夫と過ごした時間から「こうなのかもしれないな」と前向きな予想をお話ししますので、輪郭ははっきりしないまでもその中から少しでもあなたの不安を解消するヒントがあればな、と思います。

あなたが抱えている悩みを、順番に整理していきましょう。

金銭面を視覚化すること、囚われ過ぎないよう概算に留めておくこと

まず、金銭面での不安について。

現実問題、今の日本はとっても不景気です。物価は上がる一方なのに、もうずっと前から給料は上がっていませんし、もらえる予定の年金額も下がり続けています。

妊娠して出産すればゴールというわけではなく(出産一時金という制度があるとはいえ、それ以外にもめちゃくちゃお金がかかる)、子供が大きくなるにつれてお金はかかる一方だ、ということは子供がいないわたしにも容易に想像できます。

自身の経験から「親にやらせてもらっていた習い事が今に活きているから、自分の子供にも同じようにしてあげたい」「自分は奨学金の返済に苦労したから、自分の子供には同じ思いをさせたくない」などと考える人も多いのではないでしょうか。

世帯収入、今後収入がどれほど上がるかの見通し、親からの援助の有無、資産をどれだけ持っているか……そういったものを考えた結果、中には子供を持たないという選択をする人もいます。

我が家にはと~っても潤沢な資産があります! 子供が幼稚園から大学まで私立に通っても余裕余裕! 習い事はなんでもやらせてあげられます! 東京の医学部だろうが美大だろうがなんのその! どうぞいくらでも浪人して予備校に通ってください! なんて人は、ゼロではないにしても今の日本においてはほんの一握りでしょう。

わたしは親に対して、何不自由なく育ててもらい、きちんと生きていくための教育を受けさせてもらったと心から感謝していますが、特段お金持ちの家ではなかったと思います。

ただ、自分よりもずっと裕福な家庭に生まれ育った周囲の人と比べたときに、自分のほうが不幸だと思ったことは一度もありません。

子供に対して、いい教育や様々な経験をできるだけさせてやりたいという気持ちはよくわかります。

ですが、なにもかも叶えてやるなんてのはどだい無理な話なわけで、現実を教えるのも親の役目のうちの一つだと思いますし、子供の立場でなにか感じることや学びもあるのではないでしょうか。

もちろん、金銭的な話は綺麗ごとばかりでは通用しないとは思います。

あなたの言う金銭的な不安というのがどれほどのレベルを指しているのかはわかりかねますが、明日食べるものにも困っている状況だったり、家賃を払えずにすぐにでも家を追い出されそうであちこちに借金を申し込もうとしているなど、自分自身が生活するのにもギリギリなのであれば、「ちょっと待って、もう少し準備しようか」とわたしも言っていたと思います。

そこまでではないにしても、今の自分たちにはどれくらいお金がかかるものなのかざっくり概算し、そのためにあらかじめ貯金をして備えておくことは必要でしょう。

そういった現実的なお金の話や経済プランの見直しは、旦那さんとよく話し合っておくことはもちろん、ファイナンシャルプランナーに相談することも選択肢に入れてほしいと思います。

現時点での収支のバランスや将来設計にかかるお金の概算について、専門家の意見を聞くことが一番実践的な解決方法ではないでしょうか。

だからと言って、完璧なプランを立ててそれに縛られてしまわないように気をつけてほしいとも思います。

だって、人生においては不測の事態なんてのはいくらでも起こる可能性があるのですから。

もしかしたらあなたも旦那さんも突然体調を崩して働けなくなるかもしれませんし、未曽有の大災害によって無一文になるかもしれません。

でも、そんなことを考えていたらキリがないですよね。

経済的な面を視覚化しておくことと、それに囚われ過ぎないようにあくまでも概算に留めておくこと、この2つの塩梅が大事なのではないでしょうか。

経験者のアドバイスを取り入れ、孤独にならないこと

次に、出産後のたいへんさについて。

身体的・精神的な疲労はもちろん産後うつなど、誰しもがそうなる可能性を孕んでいるため、社会問題にもなっています。

それらをできる限り予防するために、あらかじめどういった行政のサービスがあるのか、民間企業があるのかを調べておくことをおすすめします。

料理をする余裕がないときの食事の宅配サービス、手が届かない部分の家事代行、リフレッシュしたいときの一時保育など、実際に利用するかどうかはさておき、しんどいときに頼れる機関があると知っておくだけでも気持ちは楽になるはずです。

また、出産を経験した人、現在育児中の人は、自分の周囲にはいなくてもインターネットやSNSにはたくさんいますよね。

出産・育児の先輩たちは、「あのときこれを利用してすごくよかったよ!」「このサービス知ってる? めちゃくちゃ助かるしおすすめだよ~」「夫とこんな理由で喧嘩したけれど、こうやって乗り越えたらよかったなって今になって気づいた!」など、自分の経験から学んだことを同志たちに積極的に発信してくれています。

そういった実際に体験した人のアドバイス、プラスの意見を積極的に摂取していくことも、不安を解消する手助けになるのではないでしょうか。

行政だろうが民間だろうがサービスはどんどん利用してこ! 双方の親も友達にも困ったときは助けてもらお! という気持ちで、孤独を感じないように、自分ひとりだけで抱えこまないように、そしてお互いが疲れているときの対策と心構えを旦那さんと共有しておくことをおすすめします。

積み重ねてきた夫婦の成功体験を今後の糧にしよう

……とまあ、ここまでは金銭的な不安と産後の大変さを軽減する手段について提案させていただきましたが、相談文を読む限り、おそらくあなたはそれらよりも旦那さんとの関係が変化することに一番の不安を感じているのではないかな、と受け取ったのですがいかがでしょうか。

その感情にこそ、わたしはとても共感できるのです。

今は超ラブラブで仲良いだけれど、それは子供がいないから上手くいっているのでは?! って考えてしまいますよね。

経済的な不安や自分の生い立ち、健康上の理由以外にも、「今の関係性が自分たちにとってのベストだから」という理由で子供を持たないという選択をする人もいるでしょう。

子供を持つ/持たないは各々の自由ですから、当事者が納得しているのであれば外野が口を出す筋合いはないのですが、女性にはどうしてもタイムリミットがありますし、子供欲しい! 作ろう! と思ったとしてもスムーズにいくとは限りません。

なぜなら、妊娠も出産も奇跡の連続ですから。

だから、少しでも子供がほしいという気持ちがあるのであれば、先延ばしをせずに今の段階できちんと向き合うべきだと思います。

その結果によっては自分の選択に後悔することもあるかもしれませんが、「夫婦で一生懸命考えたんだ」という事実さえあれば、少なくとも向き合わなかった過去に対する後悔をゼロにすることはできます。

子供ができても絶対に大丈夫だよ! 旦那さんとの関係性は今と変わらないよ! と無責任なことはどうしても言えないのですが……。

そもそも関係性がずっと変わらないなんて無理な話なんです。

でも、関係性が変わることは必ずしも悪い方向ばかりではなく、よりよい方向にいくことだってあると思います。

父と母になるために、これまでの恋人・夫婦の関係性がなくなってしまうわけではなく、恋人や夫婦という関係に、父と母、子育てチームという新たな関係性をプラスすることだってできるのです。

おそらく、あなたと旦那さんは今に至るまでも、お付き合いする前の友達から恋人に、恋人から夫婦に、と関係性の変化があったはずです。

もちろん、特に意識せずとも自然と変化していった部分が大半だとは思いますが、それでも要所要所で「この人となら大丈夫」「わたしに寄り添ってくれる人だな」「お互いに頼ったり頼られたりして心地よいな」と思えたからこそ一歩踏み出したこともあるのではないでしょうか。

そういった、これまでの成功体験や実績を思い出して、今後の糧とすることも大事ですよ。

妊娠も、出産も、子育ても、あなた一人で抱えない

ひとつ気になったのですが、相談文に書いてくださった不安や寂しさは、あなた一人きりで抱えているのでしょうか。

もしそうなのであれば、絶対に旦那さんと共有してほしいと思います。

妊娠も、出産も、子育ても、あなた一人でやることではありません。

「関係性が変わってしまうのが寂しい」「こういう事態に陥ったときに、仲が悪くなってしまったらどうしようって不安なんだ」といった風に、全て包み隠さずぶちまけて、「じゃあどうしたらお互いに幸せを感じられる家族になれるんだろう」と2人で考えて、何度も話し合って、具体的な対策を挙げてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

当然、その通りに乗り越えられるとは限りません。先でもお話ししましたが、不測の事態が起こるかもしれませんし、いざ子供を産んでみたらその大変さは想像の遥か上をいくかもしれません。実際に出産してみないとわからなことは多々あるでしょう。

でも、そうやった話し合った時間は決して無駄になりません。

「あのとき、自分と同じだけ悩んでくれたな」「わたしの話に耳を傾けて寄り添ってくれる人だから、今回も大丈夫なはず」と、未来のお守りになるはずですよ。

「覚悟」はやるしかない状況になって初めて腹を括ること

相談文の中で、あなたは何度か「覚悟」という言葉をつかわれていました。

よし! 覚悟ができた! それじゃあ今から行動に移すぞ! というのは、果たしてほんとうに覚悟と言えるのでしょうか。

そりゃあ準備万端かつ用意周到に妊娠・出産に臨めたら願ったり叶ったりですが、覚悟を決めるための想像をするのにも限界があります。

覚悟って、もうやるしかない状況になって初めて腹を括ることなんじゃないかな、とわたしは思うのです。

前半でお話しをしたように、金銭面や出産後の生活を考えての事前準備はしておいたほうがいいとは思いますが、覚悟だなんて仰々しいものを掲げるよりも、今の不安を一つひとつつぶしていくこと、そして不安がある中でも頑張ろうと思える相手と一緒に人生を送ることのほうがずっと大事なのではないでしょうか。

わたしだって「子供を持つ覚悟はある?」と聞かれたら、「もちろんあります!」なんて自信満々に言えません。

でも、もし子供ができたらめちゃくちゃ一生懸命育てるぞ~~~~~!!!! とは思っています。

何も考えていないとか、誰かが助けてくれるだろうって他力本願になっているわけではなく、「なんとかなるだろう、なんとかしてやろう、やってやろうじゃないの!」という気持ちなんです。

これまでの人生で乗り越えてきた様々なこと、夫の人となりとわたしに対する思いやり、先人たちのアドバイス、家族や友達のやさしさなど、これまでの経験や自分と周囲の人に対する信頼を一つひとつ積み上げていって、そう思うようにしています。

「産んだことないからわからないだろ!」と言われたらぐうの音も出ないのですが、でもそんな風に自分と自分の愛する人を信じることは、妊娠や出産に限らず、なにか新しいことが始まるときにとても大切ではないでしょうか。

捉え方によっては無責任だと感じてしまうかもしれませんが、今一生懸命に悩んでいる時間はあとからあなたを助けてくれるんだ、ということは胸に留めておいてほしいと思います。

Text/ものすごい愛

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2022/10/6 11:00

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