島崎和歌子『オールスター感謝祭』の“ガヤ的”司会術「お酢は体にいいんでね」

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(9月25~10月1日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

今田耕司「『感謝祭』は島崎さんの番組やと思ってるんで」

 1日に放送された『オールスター感謝祭』(TBS系)は「L」に埋め尽くされた。

 別スタジオを中心に、番組に出演していた芸人は『ラヴィット!』(同前)でおなじみの面々が中心だった。そんな芸人たちを中心に、司会の今田耕司をはじめ出演者は、画面に映るとラヴィットポーズである「L」を指でつくっていた。そして優勝は、『ラヴィット』の木曜レギュラーを務める屋敷裕政(ニューヨーク)。彼は当然、カメラに大きく「L」を突き出した。

 そんななか、番組内で今田は川島明に向けて言った。

「『感謝祭』も、もうすぐ頼むで」

 『ラヴィット!』に加えて新たに2つの番組をTBS系列ではじめることになった川島が、「TBSが川島に賭けてるみたいです」とコメントした際の今田の応答である。なるほど、もし今田に何かがあって代役を立てなければならなくなったとしたら、あるいは降板することがあるとしたら、『感謝祭』の中心でマイクを握っているのは川島かもしれない。

 一方、かつて今田はこんなことを語っていた。

「『感謝祭』は島崎さんの番組やと思ってるんで。僕は2代目アシスタント。僕の次に3代目っていう」(『内村&さまぁ~ずの初出しトークバラエティ!笑いダネ』日本テレビ系、2022年1月3日)

 『感謝祭』では、今田耕司と島崎和歌子、2人が「総合司会」としてクレジットされている。しかし、今田の認識では、『オールスター感謝祭』における自身の立ち位置は司会ではなくアシスタントである。司会は、島崎ただその人だけである。

 そんな島崎の司会に改めて目をこらしてみよう。

 彼女の司会としての中心的な仕事は、番組内で行われるクイズの問題、回答者の人数、予選落ちの出演者の名前を読み上げたりすることである。『感謝祭』がクイズを軸にした番組であることを考えれば、番組の根幹を支える仕事を担っているといえる。

さらに彼女は、今田をはじめ出演者の発言やその場の状況を細かく補足していく。たとえばオープニングのこんなシーン。別スタジオに『ラヴィット!』の出演者が多いことについて今田がツッコむと、島崎は「それぐらい朝に力入れてるっていうことですね」などと注釈を入れた。

 また、今回の番組のひとつの目玉だったであろう“メタバース空間”なるもの(画面で見る限りそれはなんだかチープだった)が登場した際には「感動しております。これが最先端の技術で」などとコメントし、その技術の素晴らしさを正面から称賛しているようにも、過剰に褒めることでそのクオリティのチープさを皮肉っているようにも聞こえる、どっちで受け取ってもその場に決着がついて番組が次のコーナーに移る絶妙な発言を残した。

 あるいは、とても酸っぱい盛岡冷麺を食べているのは誰かを当てるクイズで、盛山晋太郎(見取り図)が麺をすすった途端にその酸っぱさで豪快に吐き出した場面。ちょっと下品気味になったところで島崎はすかさず「お酢は体にいいんでね」とひと言入れた。改めて振り返って考えると別にフォローにはなってないけれど(体にいいならなおさら食べられないと)、その瞬間はなんだか整地された雰囲気になるから不思議だ。

 で、一連の進行のあいだ、あのガハハ笑いがコンスタントに挿入され、それが駆動力になっているかのように番組はズンズン前に進んでいくのである。

 島田紳助から今田耕司へと男性司会者は移り変わった。もしかしたら、今田は別の誰かにバトンタッチするのかもしれない。しかし、そこに島崎和歌子がいるかぎり、『感謝祭』は安定的に続いていくのだろう。

 今回の放送で惜しまれるのは、番組恒例の俳優がアーチェリーに挑戦するコーナーがいまいち盛り上がりに欠けたことである。どう見ても1000点、どう見ても500点に当たっているといった結果が続いたため、イケメン俳優をひいきして1000点に近い500点を「1000点!1000点!」と無理やり押し通そうとする島崎が完全なかたちでは見られなかった。1000点に入れてくれなくてもいい。500点に近い1000点のところに当ててほしい。どのドラマチームに高価な弁当が届くかではなく、私は和歌子の「1000点!1000点!」が見たいのだ。

 さて、『オールスター感謝祭』のあとは『オールスター後夜祭』(TBS系)である。『感謝祭』が放送された日の深夜にはじまる芸人中心のこの番組。『水曜日のダウンタウン』(同前)を担当するスタッフが演出にかかわっていることもあり、お笑いに特化した企画が中心となってきた。

 ただ、最近は番組の面白さがパワーダウンしている印象があった。コロナ禍で出演芸人の人数が絞られたり、毒霧を吹きかけられるといったおなじみの「ちょっとした罰」がちゃんと見られなくなったりしたためだろうか。が、今回はそんな印象を吹き飛ばす、期待以上の面白さだった。

 ママタルトが漫才協会所属になっている。そのことを当人たちもクイズで知らされる。そんなことは序の口である。

 まず、「YouTubeチャンネルを開設しているのは?(答え:板東英二)」→「旧満州出身なのは?(答え:板東英二)」→「ケシの花が庭に咲いていたのは?(答え:板東英二)」→「YouTubeチャンネルを開設しているのは?(答え:板東英二)」→……と延々と同じ問題がつづく謎の坂東ループ。芸人たちからあがる阿鼻叫喚。そのループが終わっても、何のための繰り返しだったのかの説明は特になし。

 どうやら予選落ち(正解者のなかで回答タイムがもっとも遅い人が脱落する)で少しずつ減らしていき、最後の1人になるまで続ける趣向だったようだ。本家『感謝祭』で30年近く続く予選落ちシステムに新たなゲーム性が発見された時間だった。

 次に、ZAZY、スルメ、いかちゃんを集めて行われた高速フリップ-1GP。準備してきた2分のフリップネタをできる限り高速で披露し、どれだけの秒数を巻けたのか、そして面白いのかを競うゲームである。で、当然早口になって何を言っているのかわからない状態になったりするのだが、この設定で誰を連れてきたら一番面白くなるかの人選が的確。通常のクイズもそうだが、『後夜祭』は選択肢の設定が絶妙だ。

 そして、催眠ぬるぬる大相撲。クロちゃん(安田大サーカス)、あかつ、みなみかわ、とにかく明るい安村の4人を催眠術にかけ、ローションを使わずにぬるぬる相撲をやる企画である。催眠がかかり朦朧とした様子のクロちゃんは、「ローション……あります……」と画期的な細胞を発見した研究者のようなコメントを繰り返す。そんな状態で行われた取り組みは予想以上に面白かった。4人がホントに催眠術にかかっていたのかどうかはおいといて。そこは彼らが見ていたはずのローションと同じく、我々も「あります」と受け取ろう。

 なお、フジモンこと藤原敏史(FUJIWARA)のガヤはここでも光っていた。大鶴肥満(ママタルト)が「まーちゃんごめんね」と言うと「誰がわかんねん!」とストレートにすかさずツッコミを入れ、いかちゃんがネタで「シャキーン」と言うと「(オリエンタルラジオの)カッキーンなのよそれ」と広げてみせる。永野がソロのころのX JAPANのToshlの顔マネをすると「ホームオブハート」、もう中学生がゲームソフト『ファミコンウォーズ』の名前を出すと「こいつはどえらいシミュレーションやないねん」など、彼の脳内にある昔のゴシップやサブカルチャーのアーカイブから的確にワードを引っ張り出してくる。

 その場に声を足して盛り上げるだけでなく、画面上の現象に別のレイヤーを重ねていく。そんなフジモンのガヤ。そう考えてみると、ちょっと矛盾した表現になるかもしれないけれど、本家の『感謝祭』で島崎和歌子がやっているのもガヤ的な司会なのかもしれない。

  • 10/4 8:00
  • サイゾー

今、あなたにおすすめ

記事の無断転載を禁じます