ソロキャンプ女性がテントを勝手に開けられて…防犯対策で「やってはいけないこと」

 現在、ドラマやYouTubeの影響により、空前のキャンプブームが起きており、とりわけソロキャンプは人気を集めている。ただ、人気のないところに1人で過ごすことは危険が伴うため、「ソロキャンプをしたいけど……」と悩んでいる女性は多いだろう。

 ソロキャンプの健全化を目指し、その魅力を啓蒙する団体「日本単独野営協会」の代表理事を務める小山仁氏に、女性ソロキャンパーの現状、安心安全に過ごすための具体的な対策など話を聞いた。

◆表に出る被害は氷山のほんの一角

 まず、女性ソロキャンパーの被害をちょくちょくSNS上で見かけるが、「私は直接聞いたことはなく、表に出ることがレアケースです」と答えつつ、「被害者のお話を直接聞いたわけではなく記者さんから聞いたのですが、夜中に女性がテントのチャックを勝手に開けられ、『寒いから気をつけてね』と言われた、という話は衝撃的でした」と驚きを口にする。

「他人のテントに無断で立ち入ることは言うまでもなく悪ですが、勝手にチャックを開けるのだってもってのほか。そもそも相手側の気持ちになって『なぜソロキャンプをしているのか』を考えれば誰でもわかることで、女性ソロキャンパーに積極的に話しかけること自体すでに加害行為だと言えます

 ちなみに、SNS上では無理やり男性のキャンプに連れ込まれそうになったという声も見られたが、“キャンプブームだからこういった被害が増えている”と解釈するのは早計だ。小山氏は「実際は今も昔も表に出るのは氷山のほんの一角だったのかもしれません。昨今はSNSの投稿などによって被害が表面化している可能性も考えられます」と現状を分析した。

◆「教え魔」の弟子にさせられた人も

 性的被害も問題ではあるが、頼んでいないにもかかわらずキャンプについて教えたがる“教え魔”の被害も少なくない。小山氏は教え魔について、「親切心ではなく、自分の承認欲求を満たすための行為です」と一蹴。

「教え魔の男性に話しかけられ、恐怖心のために『帰って下さい』『結構です』と言い出せず、5時間居座って色々自慢話を聞かされた、という被害談も聞いたことがあります。こんな迷惑行為に遭ってしまうと、せっかくのソロキャンプが台無しですよね。

 さらには、教え魔の人に毎回絡まれ、マウントを取られたり命令口調で話をされたり、挙げ句に弟子のような扱いを受け、キャンプに行くのが嫌になってしまったという話も聞いています」

 一度拒めなかったら最後、教え魔はどんどん調子に乗り、キャンプを嫌いになるまで執着されるのだからたまったものではない。

◆女性キャンパーの比率を高める対策が必要

 性的被害や教え魔の恐ろしさが伺えた。次に女性だけでなく、全キャンパーが安全にキャンプを楽しむための留意点として、「まずは自分勝手な思考で行動する人の意識改革が急務であると感じています」と説明。

「『女性がソロキャンプをするのが悪い』『女性側が対策するべきだ』という意見を目にしますが、私はそうは思いません。誰にだってソロキャンプを楽しむ権利はあり、それを奪うことは誰にも許されないことだからです。加害者を差し置いて被害者ばかりに対策を求めるのはおかしいと思います」

 続けて、「環境面で言えば、特に女性ソロキャンパーが不安を感じるようであれば、女性ソロキャンパー専用のキャンプ場や女性専用サイトが必要になるでしょう」と提案。

「ただ、現状女性ソロキャパーの比率が著しく低いため、それではキャンプ場も経営が成り立たないと思います。そういう意味では、女性ソロキャンパーの比率を上げていくための具体的な対策が必要になります。

 日本単独野営協会では、初心者支援制度として、ソロキャンプに不安のある人や、慣れていない人を無料で支援する取り組みを行っています。また、女性キャンパーが気軽に利用できて過ごしやすいよう、トイレの環境整備なども行っています」

◆ソロキャンプに男性用の靴を持っていく女性も

 加害者が100%悪いことは自明であるが、それでも環境面の不備が多い。そのため、ソロキャンプをする側が自衛をしなければいけないのが現状だ。そこで、小山氏に具体的な対策を聞くと、「管理人が常駐しているキャンプ場を選び、管理棟へのアクセスが良い場所でキャンプをすると良いでしょう。特に女性ソロキャンパーで不安な場合は、管理人に女性ソロキャンパーであることを事前に伝えておくと、夜間の連絡先を教えてくれたり、配慮してくれたりするキャンプ場もあります」と答える。

「また、女性に寄ってくる教え魔やナンパ目的の人から『1人ですか?』などと話しかけられた場合、「後で夫(彼氏)が来ます」と伝えておくとその後にしつこくされることへの抑止になります。教え魔やナンパ防止の変わった対策としては、『テントの前に男性物の靴を置いておく』という人もいました」

◆ナイフやスタンガンはNG

 一方、推奨できない対策について、「熊避けスプレーを勧めている人もいますが、テント内では自分もダメージを受けますし、とっさの時に正確に操作することは難しいです。また、ナイフやスタンガンなどの護身用の武器を携帯することを勧める人もいますが、護身用に刃物を持つこと自体に違法性があります。加えて、何かあった時に相手にケガを負わせ、逆に被害者が加害者に変わる可能性も想定されます。

 人に知らせる手段としてホイッスルも良いですが、息を整えて大きな音を出すのはとっさにはできません。ですので、引っ張るだけの防犯ブザーが有効でしょう。防犯ブザーは普段鳴らさないので、時が経つと放電して使えなくなることがあります。出かける前には動作確認を忘れないことも大事です」

◆SNSのリアルタイム投稿は危険

 ただ、配慮すべき点はまだまだあり、「テントについてはダブルチャックのものを選ぶと言いでしょう。チャックとチャックを南京錠で止めておけば、外から簡単には開けられなくなります。他にも、SNSの写真に写り込んだ景色などで場所を特定して近づいてくる人もいるそうです。SNSにはリアルタイムで投稿せずに、帰宅してからまとめてアップすることをオススメします」

 対策すべきことはとても多く、裏を返すと、環境整備が行き届いていない現状が伺える。

 誰もが安心安全にキャンプを楽しめるように、早急に環境整備が進められてほしい。

【小山仁(おやまひとし)】

1976年6月生まれ。2018年、誰もがいつまでも綺麗で安全な野営地でソロキャンプを楽しむことができるようにと「ソロキャンプの健全な普及」を理念に日本単独野営協会を設立。代表理事として活動している。

<取材・文/望月悠木>

【望月悠木】

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。

Twitter:@mochizukiyuuki

2022/9/23 8:46

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