視聴率“1ケタ”並ぶ「夏ドラマ」に業界人の本音。ネットで批判殺到『ちむどんどん』の評価は?

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 4月クールの春ドラマは、綾瀬はるかと大泉洋が共演した『元彼の遺言状』(フジ系)や木村拓哉が約2年ぶりにドラマ主演を果たした『未来への10カウント』(テレビ朝日系)など、豪華な俳優陣を並べてヒットが期待されたドラマが軒並み低調な視聴率に留まる結果に。

 一方で、独立後初の地上波ドラマとなった山下智久が主演を務めた『正直不動産』(NHK)や二宮和也と多部未華子が夫婦役を熱演した新感覚サスペンス『マイファミリー』(TBS系)は、安定した視聴率をマーク。また、AIと政治をリンクさせた世界を描いた『17歳の帝国』(NHK)が業界内で大きな反響を呼んだ。

◆全ドラマが視聴率1ケタ台になる異常事態

 そんななか7月から放送されている夏ドラマが“異常事態”に陥っている。映画『花束みたいな恋をした』、『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジ系)で話題を集める脚本家・坂元裕二によるミステリアスコメディ『初恋の悪魔』(日本テレビ系、土曜午後10時~)、綾野剛演じるプロサッカー選手を引退した男がセカンドチャンスに懸ける『オールドルーキー』(TBS系、日曜午後10時~)、大ヒットをマークした韓国ドラマ『梨泰院クラス』の日本オリジナル版『六本木クラス』(テレビ朝日、木曜午後9時~)、有村架純と中村倫也のW主演作『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系、金曜午後10時~)をはじめとした期待作がいずれも低迷。

 唯一2ケタ台をキープしていた『オールドルーキー』(TBS系)が、8月7日放送の6話で世帯平均視聴率9.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に転落し、10%超えのドラマが一作も無くなってしまう事態になった。

◆ネットで反省会が起こる朝ドラ『ちむどんどん』

 また、4月から放送している連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)も、SNS上で「#ちむどんどん反省会」なるハッシュタグが急上昇ワードになるほど、視聴者からの不満が殺到。現状の平均視聴率も15%台後半に落ち込み、ふるっていない状況だ。

 そんな低迷する夏ドラマやNHK朝ドラマをテレビマンたちはどう見ているのか? 序盤のオンエアを見た時点で、今後も見たい作品と期待外れだった作品を忖度抜きで教えてもらった。

◆テレビは韓流ドラマやリアリティショーに惨敗し……

 キー局で深夜ドラマを中心に手掛けている30代プロデューサー・A氏はこの異常事態を分析する。

「言い訳になるかもしれませんが、コロナ禍が落ち着き、夜の街も賑わいを見せており、テレビ全体の視聴率が低調になっていることが原因の一つかと。ただし、ネットフリックスで配信している韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』はかなり視聴されているし、アマゾンプライムの『バチェロレッテ・ジャパン シーズン2』は若者たちの間で大きな話題になっていることを考えると、テレビドラマの内容自体の力不足や魅力が足りないことも要因でしょう」

 アフターコロナの影響でテレビ視聴離れが加速しているとはいえ、韓流ドラマやリアリティショーに面白さで対抗できていないことを赤裸々に語ったA氏。そんな彼が期待を寄せている作品はあるのか?

◆綾野剛が新境地の役どころを見せる『オールドルーキー』

「やはり力のある日曜劇場枠の『オールドルーキー』(TBS系)ですね。37歳で現役引退に追い込まれた綾野剛さん演じる新町がスポーツマネージメント会社に転職し、悩めるアスリートたちに誠実に向き合っていくヒューマンドラマですが、徹底したリサーチや取材もあって、各話で登場するアスリートたちのエピソードがリアル。

 何より、綾野剛さんの演技が見事。一度絶望を味わった主人公が時折見せる切ない表情、アスリートのために切磋琢磨するピュアなふるまいなどの細かい演技や視線が秀逸。ミステリアスな役どころが彼の魅力だと思っていましたが“こんなに自然体でまっすぐな人間も演じられるんだ”と感心しています。視聴率は1ケタ台に落ちてしまいましたが、綾野剛さんの表現力とストーリー展開次第では10%台後半まで回復するのでは?」

 新境地ともいえる役どころで演技派俳優の幅を広げている綾野剛のまっすぐなキャラクターがハマれば、V字回復も十分ありえそうだ。

◆感情移入できないキャラとセリフがマニアックすぎる『初恋の悪魔』

 また、前出のプロデューサーA氏が「ガッカリした」と語る期待外れの夏ドラマは?

「ノっている坂元裕二さんが脚本を手掛けることで注目していたミステリアスコメディ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)は期待外れでした。まず、仲野太賀さん、林遣都さん、柄本佑さん、松岡茉優さんは若手きっての演技派ですが、主演を張るには無理があったかなと。

 ストーリーとしては、警察署に勤めているが捜査権のない4人が難事件を解明していくというコメディミステリーなんですが、事件自体が非常に単調。クセの強いキャラクターたちの会話劇が見どころなのでしょうが、すんなりと感情移入できるキャラクターがいない点、文学的なセリフが多すぎる点がとっつきにくいドラマになってしまっている。巨匠・坂元さんの脚本にプロデューサー陣やスタッフがなかなか口出しできないという状況が悪循環を生んでいますね」

 コアなファンからは絶賛されているドラマだけに、あと一歩“分かりやすさ”が加われば、状況は変わってくるのだろうが……。今後どんなテコ入れがなされるかも注目だ。

◆キャラがムカつきすぎる『ちむどんどん』

 続いて、ドラマ制作会社に勤務する若手女性プロデューサーB氏にも現在放送中のドラマについて聞いた。大の朝ドラファンである彼女は『ちむどんどん』に苦言を呈した。

「ここまで不快な気持ちになる朝ドラも珍しい……というくらいヒドい。ヒロインの暢子を演じる黒島結菜さんの演技は瑞々しくて素晴らしいのですが、彼女の行動がどれも稚拙でいわゆる“空気の読めない子”になっていて、イライラしてしまうんです。修行先のレストランでいきなり料理対決を挑んだり、周りのスタッフにも態度が悪かったり、挙げればキリがない。

 朝ドラヒロインの“おてんば”な一面を表現したかったのでしょうが、あれはやりすぎ。竜星涼さん演じる兄・賢秀のおバカっぷりや仲間由紀恵さん演じる母・優子の過保護すぎる振る舞いに関してもあまり共感できない。ベタすぎるセリフも視聴者から呆れられていますよね。

『マッサン』を手掛けた羽原大介さんが脚本を書かれていますが、同作ではベタな展開がうまく機能していましたが、『ちむどんどん』ではそれが裏目に出ている気がしますね。まもなく終盤を迎えますが、最後にはちゃんと泣かせてほしい……」

 タイトルの『ちむどんどん』は、沖縄方言で“胸がワクワクする気持ち”を表すという。最終回を見終わった後に、視聴者が“ワクワクできる最高のドラマだった”と思うことができるのか。

◆第2部突入で面白さ倍増の『純愛ディソナンス』 

 B氏は、今期のドラマで意外な注目作も教えてくれた。

「『Hey!Say!JUMP』の中島裕翔さんが主演を務める『純愛ディソナンス』(フジ系、木曜午後10時~)はダークホース的な良作ですよ。中島さん演じる教師・正樹が吉川愛さん演じる女子生徒との禁断の恋愛関係になる、ベタな教師と生徒の恋愛ドラマかと思いきや、蓋を開けてみるとドロドロとした人間関係が交錯するサスペンス要素のある作品になっていき、びっくり。

 2部に入ってからは登場人物のほとんどが闇を抱えた不気味なキャラばかりに見えて、先を読むのが面白いドラマに急変しました。視聴率は3%台で苦戦していますが、一気に上がってくるのでは? 最近は、2部構成になっているドラマが多いのですが、このドラマはその構造をうまく利用できている。光石研さんや佐藤隆太さんの迫真の演技も良くて、もっと評価されてもいいはず」

“教師の禁断の恋”を謳い文句にしたこともあり、低空飛行だった同作だが、考察好きの視聴者なども巻き込んで人気を博しそうだ。

◆テンポの良さとバディの掛け合いも痛快な『石子と羽男』

 深夜ドラマやアニメを中心に活躍するシナリオライターのC氏も、視聴率こそ伸びていないが評価するドラマを挙げてくれた。

「思ったよりも視聴率が伸びていませんが『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)はかなり良いドラマですよ。有村架純演じる東大卒のパラリーガル・石田硝子と中村倫也演じる高卒の弁護士・羽根岡佳男の相容れない男女バディが一風変わった事件を裁いていくリーガルドラマ。

 こう聞くと、よくあるバディ法廷ドラマなのですが、扱う事件のテーマが『カフェでの無断充電』や『ファスト映画』といったイマドキの小さなトラブルばかり。そのチョイスも秀逸で、ストーリー展開も分かりやすくテンポもよい。それでいて、硝子と羽根岡が徐々にお互いを理解し合っていく描き方やセリフ回しは無理矢理すぎず、洗練されている。

 脚本を手掛けている西田征史さんは元芸人という異色の経歴で、コミカルさや軽快なテンポ感には定評がある。同作でもそれが生かされていますよね。それでいてセリフや人間描写もうまい。すでに売れていらっしゃいますが、もっと知られるべき作家さんですね」

 低迷が続く朝ドラや夏ドラマ。しかし、テレビ関係者がちゃんと評価するドラマも多いだけに“見ず嫌い”にならずに、今からでもチェックしてみてほしい。

<取材・文/木田トウセイ>

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

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  • 日刊SPA!

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