実は「6時間睡眠」が危ない?スリープコーチが伝授する「攻めの睡眠」の必要性

拡大画像を見る

◆日本は「睡眠不足大国」

 はじめまして、アスリートを中心に睡眠改善法を教えている「スリープコーチ」の矢野達人です。私は日本ではあまり聞かないスリープコーチという仕事をしており、なかでもアスリートへの「パフォーマンスUPのためのスリープコーチング」を得意としています。

 また、それ以外に「オルソグループ」という総合医療グループ内で睡眠部門も担当しています。そちらでは睡眠サロンの運営や一般向けの睡眠改善指導、さらには企業に対して「健康経営のための睡眠研修」など、様々な取り組みをしています。要するに、「睡眠の何でも屋さん」みたいな存在ですね。

 さて皆さん、実は日本が「睡眠不足大国」と言われているのをご存じでしょうか。日本人の睡眠に対する価値観の低さはデータでも明らかで、先進国の中でも平均睡眠時間はワースト1位です。

 また、米シンクタンクが2016年に発表したデータによれば、睡眠不足が原因とされる日本の経済損失は、なんと約15兆円にも上ると言われています。皆さんの中にも、普段から睡眠不足に陥っていたまま働いている人が多いでしょう。

◆睡眠不足を自覚しない「6時間睡眠」の落とし穴

 しかし、実は「睡眠不足を自覚している人」よりも危険な人がいます。それは、「6時間睡眠」の人です。

 ペンシルベニア大学が行った、睡眠時間の差が反応速度にどのように影響するのかを調べた調査結果があります。その調査では、「毎日徹夜している人」、「毎日4時間睡眠の人」、「6時間睡眠の人」、「8時間睡眠の人」に分けて反応速度テストを行ったところ、なんと毎日6時間寝ていても、2週間後には徹夜した人と同じくらい反応速度が低下することがわかりました。

 徹夜や4時間睡眠の人は、寝不足を自覚していることが多いです。一方で、特に忙しい人の場合、「6時間寝れたらいいほうだ」と思う人は多い印象です。しかし、実際には6時間睡眠では十分な休息がとれず、仕事のパフォーマンスにも影響が出てしまうのです。

 つまり、いいパフォーマンスを発揮したければ、「睡眠時間」×「質の良い睡眠(回復)」が不可欠なのです。そこで私が推奨するのが、積極的に睡眠にこだわる「攻めの睡眠」です。

・十分な睡眠時間×質の良い睡眠

・脳のパフォーマンスが高まる

・「質の高い思考」が生まれる

という、いいサイクルができます。この効果はアスリートでも会社員でも同じです。睡眠とは、ただ長時間眠ればいいわけではありません。「ハイパフォーマンスを生むために、ハイリカバリーをすること」こそ、最大の目的なのです。

◆アスリートが体感した「攻めの睡眠」の効果

 私は今まで様々なアスリートに対してスリープコーチングを行ってきました。格闘家の場合、大袈裟かもしれませんが、他の競技の「勝ち負け」というプレッシャーだけではなく「生きるか死ぬか」という恐怖感も強いため、試合が近づくと、減量のストレスなども相まって眠れなくなる選手も少なくありません。

 実際にスリープコーチングをさせていただいた選手は、「計量の前日でもいつも通り眠れるようになった」と喜んでくれています。

 また、車いすバスケの日本代表としてパラリンピックにも出場した選手にもスリープコーチングをさせていただいています。その選手は大会ごとに「今回は代表に選ばれるか」というプレッシャーがあり、ネガティブ思考になってしまいがちでした。すると、就寝時に「起きられなかったらどうしよう」と考え、プレー面以外の日常生活にも影響が出てしまっている状態でした。

 そこで、「睡眠を変えることでポジティブ思考にもなれるし、パフォーマンスも上がる」と伝え、日々の睡眠をサポート。今では海外遠征時にも国際通話でアドバイスをさせていただき、自身のパフォーマンスが高く保てていると喜んでもらっています。

◆睡眠不足がもたらす様々な弊害

 このように私たちはアスリートをはじめ、様々な方の「睡眠からパフォーマンスを変える」というお手伝いをしています。それは、私たちには「日本人の睡眠の価値観を変える」という目的があるからです。その結果、「日本中に笑顔と元気を増やせる」と、信じています。

 睡眠不足の弊害は枚挙にいとまがありません。認知症リスクや糖尿病、高血圧などの生活習慣病リスクも高まります。少子高齢化が進む日本社会で、医療費・介護費の増大や老々介護が問題になるなか、睡眠改善が果たせる役割はとても大きいんです。

 そのためには、アスリートなど影響力がある人に実践してもらい、私たちと共に睡眠の価値観を広めてもらう――それこそが、「日本人の睡眠の価値観」が変わるための一歩になると考えています。

【矢野達人】
スリープコーチ。上級睡眠健康指導士。(一社)オルソスリープアカデミー代表理事。2016年に「快眠ほぐしサロン すいみん」(大阪市)をオープンし、約2万人の睡眠をサポート。また、企業向けに睡眠セミナーも実施してきた。2022年2月からニック・リトルヘイルズ氏と正式に契約し、アスリートに向けた睡眠指導も本格化。社会全体の睡眠の質を高めるために奮闘している。Instagram(@tatsutoyano)Twitter(@yanotatsuto)

関連リンク

  • 8/10 8:52
  • 日刊SPA!

今、あなたにおすすめ

記事の無断転載を禁じます