犬を飼って3日で「なんか違った」と飼育放棄…犬猫の保護活動でみた人間の“歪んだ常識”

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 こんにちは、元競輪選手の高木真備です。昨年の「ガールズケイリングランプリ」で優勝し、年間賞金女王の夢を叶えたことで今年の5月に選手を引退しました。現在は保護犬・保護猫活動に取り組み、さまざまな現場で目の当たりにした実態を発信しています。

◆広島で見た保護犬・保護猫問題

 今までは関東にある施設を中心に訪問していましたが、地域性や各都道府県の法律によって保護問題の課題が変わると聞き、今回は広島県にある保護施設に伺いました。 

 こちらの施設では、約15匹のワンちゃんと約70匹の猫ちゃんが新しく里親になってくれる人を待ちながら暮らしています。施設によって保護している犬と猫の割合は変わりますが、問題となっている「殺処分」をされてしまう割合は、猫の方が圧倒的に多いのです。そうなると必然的に、猫を多く保護している団体も増えていきます。

 そして今回伺った施設は、猫ちゃんの年齢や体調ごとに、5つの部屋に分けているとのことでした。

 可愛い猫ちゃんたちがのんびりと暮らしている姿を見て、ただただ癒されました……。しかし忘れてはいけないのは「ここにいる猫ちゃんの数だけ飼い主さんがいた」ということ。

 見方によっては「施設に保護してもらえてよかったね」と思う人もいるでしょう。ただ、人間から愛情を注がれた生活を経験した後に、それを放棄されてしまった子たちが集まっていると考えると「保護された=幸せ」とは言い切れません。

◆どういった人が飼育放棄するのか

 では、実際にどういった人が保護をお願いしに来るのでしょうか。今回施設を案内していただいた、NPO法人 みなしご救援隊「犬猫譲渡センター」理事長の佐々木博文さんにお話を伺いました。

「犬猫についてよく調べずに衝動買いしてしまい、結果的に飼う環境が整っていなかった人から保護を依頼されることが多いです。『引っ越すことになった』とか『毎日のお世話は無理だった』とか……。特に酷かったのが、飼い始めて3日で『なんか思ってたのと違った』という人もいました。お金やスペース、自分の健康状態や年齢といった『マンパワー』が足りず、無責任に手放すことになってしまう人が後を絶ちません。ペットを飼い始めるときは『必ず最期まで面倒をみる』ということを考えなければいけないのです

◆シニア猫は保護されにくい現実

 見学させていただいた5つの部屋のなかで、一番人懐っこい猫ちゃんが多かったのが、シニア猫が多くいる部屋でした。人馴れしているシニアの猫ちゃんは、人間への接し方がとても愛くるしいです。しかし「シニアは人懐っこくて飼いやすいのに、歳をとればとるほど里親が決まりにくくなる」と、佐々木さんは教えてくれました。

「シニアでも、よほど人馴れしている猫なら里親が決まることもありますが、基本的には難しいです。里親が決まりやすいのは、2ヶ月以内の子猫。日本はなぜかペットを赤ちゃんから飼おうとする習慣があります。そこがよくないんです。『自分の年齢のことを考えて、飼うなら歳いった猫を飼おう』という選択肢が広まってくれれば、シニアの猫たちも里親が決まってくれると思うんですけどね」

◆シニア猫が保護されるようになるには

 シニアの猫ちゃんの里親が決まらないと、保護施設としても空きができず、結局新たな保護ができなくなります。そうなると野良猫が増えたり、地域によっては殺処分となってしまう猫ちゃんも増えてしまうのです。そういった猫ちゃんを減らすための1つとして「シニア猫の里親を見つける」ということが挙げられます。

 ただ、ペットを飼いたいと思う一般の人からすると「子猫を飼いたい」と思う気持ちもわかります。では、どのようにすればシニア猫を積極的に保護してもらえる世の中になるのでしょうか。佐々木さんは「国で動いてくれないと難しい」と語りました。

「例えば国が『シニア猫を保護したら10万円の補助金を出す』みたいな援助をしないと難しいでしょう。もう民間だけでは無理な問題なので、そろそろ日本も国として保護問題に目を向けてほしいです。

 もしくは発信力のある有名人が『シニアの犬猫を積極的に飼おう!』と言ってもらえると変わっていくかもしれません。この問題に関心を持ってくれている人は、可能な限り発信をしてほしいです

◆犬が認知症になったときの症状

 猫ルームの見学を終えて案内していただいたのは、一階の犬スペース。ここにはシニアのワンちゃんが多く、なかには認知症になってしまったワンちゃんもいました。

 犬にも認知症があるということを知らない方も多いのではないでしょうか。私も犬を飼うまでは知りませんでした。認知症になってしまったワンちゃんは、一体どういった症状が出るのかを佐々木さんに伺いました。

「認知症になると夜中も吠えるようになります。うちには3匹いるんですけど、みんな『夜中吠えるようになって近所迷惑になってしまう』という理由で保護を依頼されました。夜中吠えると近所迷惑だけでなく、飼っている自分が滅入ってしまうのもありますよね。

 ただ、ここに来ると不思議と吠えなくなるんです。だからやっぱり環境なんでしょうね。一般家庭で吠えると飼い主が怒ったり閉じ込めたりするから、犬も余計に吠えてしまうのでしょう」

◆さまざまなリスクを考慮して飼い始めるべき

 たしかに急に夜中吠えるようになったら、一般家庭で飼うことは難しくなります。ただ「そういったリスクもあるということをわかった上で飼わなくてはいけないんです」と佐々木さんは主張しました。

「保護を依頼してくる人のなかには『なんか違った』という理由で、飼い始めてから3日で飼育放棄するとんでもない人もいますが、『認知症になって近所迷惑になるようになったから飼えなくなった』というのも酷い人には変わりないです。認知症になろうが『家族』には変わりないので。私は犬が認知症になったことで引っ越した人も知っています。飼う人は意地でも飼い続けますから。

 犬や猫を見て『一目惚れしたから飼いたい』という人が多いですが、自分の環境が変わる可能性や、犬猫が病気になるリスクなどをしっかり考慮したうえで飼い始めなくてはいけないのです

◆保護犬・保護猫に触れ合うことも大切

 今回の取材で強く感じたことは「実際に保護犬・保護猫に触れ合うことの大切さ」です。実際に触れ合ってその子のストーリーを聞くことで、改めて犬猫保護問題の難しさを目の当たりにしました。

「この問題に興味はあるけど里親になることができない」という方も多いと思います。しかし保護犬・保護猫に触れ合うだけでも、この問題に取り組む一歩となるのです。愛護団体の施設だけでなく、保護犬カフェなどの気軽に触れ合える場所もたくさんあります。この問題に少しでも興味を持った方は、触れ合える場所に行ってみてほしいです。

◆犬猫を飼おうとする人の常識を変えなくてはならない

 言葉で意思疎通ができないからこそ、犬猫の気持ちは勝手に人間が決めています。「今の状況なら施設に保護してもらった方が幸せだろう」なんてことを考えるのは、人間の都合ありきの話。捨てられる子の気持ちを自分の都合の良いように解釈している人が多いからこそ、飼育放棄をする人が後を立たないのではないでしょうか。

 とにかく「保護犬・保護猫」と呼ばれる犬猫がいなくなるには、飼う人間側の“歪んだ常識”を変えなくてはいけないのです。

取材・文/高木真備

―[保護犬・保護猫がいなくなる世界を目指して]―

【高木真備】
元女子競輪選手。2021年の「ガールズケイリングランプリ」で優勝し、年間賞金女王の称号を手にする。2022年5月に競輪選手を引退。その後は保護犬・保護猫活動に取り組み、自身がメインとなるトークイベントやnoteなどのSNSで活動の発信を行なっている。Twitter:@g_mkb

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この記事のみんなのコメント

19
  • トリトン

    8/12 9:12

    犬でも20年は生きますね(インコも20年)。自分のワンちゃんが2匹市から賞状もらいましたね。まあ病気で死ぬこともありますが大切に愛情こめたらボケることはないです、要は反応しないからとほかっておくからだめになるのだよね。自分も50代後半もうワンちゃんが飼えませんもし先に死んだらワンちゃんがかわいそうで、一応死んだときのペットのケアの保険もあるがわりと高いしそれが幸せかというとなんとも言えませんね。

  • 20年以上 生きる猫もいますから、自分の年齢を考えると猫は今いる子が最後かなと思っていました。でも、高齢猫の里親になるという選択肢もあるんですね。ただ、愛猫を見送る悲しみを思うと、次の猫をまたすぐに見送らなければならなくなるのも辛いですが、、、選択肢の一つとして覚えておきます。

  • トリトン

    8/2 23:29

    確かにアルツハイマー病とかあるからそこは訂正しますでも全てではないがボケ老人ではありえますからね。痴呆症は言いすぎ失礼しました。

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