ポスト・ディープインパクトは? 2歳戦の「最新トレンドを掴んで勝つ方法」を元競馬誌編集長が解説

◆ポスト・ディープを巡る戦いがスタート

 長らく競馬界を席巻してきたディープインパクト産駒は、現2歳の6頭がラストクロップになります。つまり、競馬の歴史を俯瞰してみた時、潮流が変わる契機になりそうなのが、この世代なのです。

 走るのは馬ですが、走らせるのは人。そこには人間の意思が介在します。先週までに消化した29戦の新馬・未勝利戦を分析することで、ポスト・ディープの2歳戦の行方を占っていきたいと思います。

◆絶好調!西村真幸厩舎

 ここまで2歳戦で9走して3勝、2着2回、3着1回。全調教師の中で最も多く出走させた上で、しっかり好走させており、早期デビューさせる馬の選別、そこからの調整、レース選択がすべて噛み合っている印象です。これまで、西村厩舎といえば、「調教で速い時計が出る割に、結果に直結しない」という印象もありましたが、今季の活躍を見る限り、それは頭から捨て去ったほうがよいでしょう。

 新馬戦には1回しか出走できないので、新馬勝ちのチャンスはその馬にとって一生に一度。それだけに、各陣営とも慎重に相手関係を見定めて出走レースを選びますが、西村調教師はそのさじ加減が絶妙です。評判馬が揃った6月18日阪神5Rの新馬戦にファントムシーフを送りこんで勝利。新馬戦2着だったスズカダブルを、次戦、地元の阪神ではなく東京の未勝利戦に遠征させて勝ち上がらせたのもお見事でした。

 新馬戦に出走した8頭のうち7頭までが3コーナーを4番手以内で通過しているのも見逃せません。

 スローになりやすい新馬戦でスッと位置を取れるゲートセンスとスピードは大きな武器になります。スローだろうとお構い無しに後ろから差す切れ味を持っていたディープインパクト産駒がいなくなった以上、今後も傾向は大きく変わらないはず。今後の2歳戦線も西村厩舎の勢いは止まりそうにありません。

◆縦縞が復権。「2歳戦のマイネル」も健在

 まだ29戦とはいえ、今年の2歳戦で気になるのはノーザン系クラブの成績が案外な点。対照的に、縦縞の勝負服でお馴染みの社台レースホースや、「2歳戦のマイネル」として知られるサラブレッドクラブ・ラフィアンは好調です

 ここまで、ノーザン系クラブであるサンデーレーシングは3-1-2-5、キャロットクラブは1-1-0-4。悪い成績ではありませんが、昨年の同時期比較だとサンデーレーシングが3-3-2-1、キャロットクラブが4-1-1-4でした。

 一方、社台レースホースは2021年の同時期が1-0-0-6に対して2022年は1-2-1-2。サラブレッドクラブ・ラフィアンは2021年の同時期が0-0-1-3に対して、1-1-3-4。ともに複勝回収率は130%を超えており、あまり人気になっていない点も馬券的には大きな魅力です。

 毎年、デビュー前に牧場を取材していますが、各牧場とも、年ごとにテーマを持って育成方針を微調整しています。当然、それが上手くいく年もあればいかない年もあるのですが、今年にかんしては、社台ファームやビッグレッドファームの育成が当たっているということでしょう。今後も人気妙味のある状態は続くと思われるので、積極的に狙っていきましょう。

◆好スタートを切ったデクラレーションオブウォー

 では、種牡馬のトレンドはどうか?

 エピファネイア産駒が早くも4勝を挙げ、相変わらず完成度の高さを見せつけています。

 一方、ロードカナロア産駒が1-1-0-7、モーリス産駒が1-0-1-8とやや出遅れました。ともに晩成傾向のある種牡馬なので、この時期からは動ききれない印象。しっかり成長が追いついてくるタイミングを見極めたいところです。

 新種牡馬では、サトノダイヤモンド、サトノクラウン、ミッキーロケット、デクラレーションオブウォーが既に勝ち馬を送り出しています。現段階でやや期待外れなのは0-2-1-7のマインドユアビスケッツ。前評判の高かったリアルスティールも0-1-1-6と勝ち切れていません。

 馬券的に注目したいのは新種牡馬のデクラレーションオブウォーとミッキーロケットです。前者はここまで1-2-0-1という成績でロードディフィートが勝ち上がっています。唯一の着外はダートで、芝に限ればパーフェクト連対。日本軽種馬協会の種牡馬なので派手さはありませんが、だからこそ馬券的な妙味は大きく、今後も、特に芝のレースでは狙い続けて損はないはず。

 ミッキーロケットは2頭デビューしてジョウショーホープが新馬勝ち。もう一頭も着順こそ9着でしたが、悪くない内容でした。牧場取材時に、ミッキーロケット産駒に対する乗り手の方の感触が、思いの外良かったのですが、それを裏付けるような産駒の走りで、こちらも引続き注目です。

文/松山崇

【松山崇】

馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。noteはhttps://note.com/shitam

2022/7/2 8:25

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