親が見た、コロナ下の子供たちの“異常な光景”。「友達の声も忘れた」
今年2月に日本テレビの情報番組『スッキリ』で、コロナ下ならではの小学校の「謎ルール」が紹介され、多くのネットニュースでも取り上げられるなど注目を集めました。
その内容とは「マスクを15分外すと濃厚接触者になるから*『給食は14分で食べる』ルールになった」というものや、「会話は5分まで。5分過ぎたら相手をチェンジすること」「1日3回の洗顔と手洗い」「接触機会が多いサッカーは禁止」え? じゃあ野球は……? など、それぞれ思わず突っ込みたくなる謎ルールばかりです。
(*厚生労働省の示す濃厚接触者の定義には、目安として1メートル以内で、マスクなしで「患者」と15分以上の接触があった人という旨の記載がありますが……)
しかもこのコロナ下の謎ルール、日を追うごとにさらに増え続けているというのです。高校1年生と、小学5年生のお子さんをもつ、倉元かおりさん(41歳・仮名)に話を聞きました。
◆登下校時は水分補給禁止?! 学校独自の謎ルール
「『スッキリ』で見た『給食を14分で食べるルール』には私も驚きましたが、子どもたちの小中学校にも過剰にコロナを恐れる先生はすごく多いと思います。たとえば、喉が渇いたら飲めるよう子どもたちに水筒を持たせているんですが、学校側はなにがなんでも、極力マスクを外さない環境を作ろうとしているというか。
休み時間もマスクを外して水分補給する数分間の“一斉お水タイム”が決まっていたり、『登下校時は大人の目が行き届かないから、水筒の水やお茶を飲んではいけない』というルールがあったり。
また、同じくマスクを外させたくないという理由で、『当面、遠足のおやつは禁止します』という謎のルールが最近追加されました。お弁当はよくて、おやつはダメ。お弁当の流れからの、おやつだけなぜか厳しい。コロナ下で過敏になる先生たちの苦労も分かります。ただ正直、根拠が足りないような……。とりあえず“なにか対策してるっぽいよね感”を出そうとしているのかなと思ってしまいます」
◆「マスクを外すな」強制され続けた子どもたちの変化
少し年齢が上がった高校生の間でも、「学校内では極力友だちとの会話を避ける」「登下校中の寄り道(買い食いやカラオケ)は絶対に禁止」など、依然厳しいルールは続けられているそうです。
「コロナ下でみんなが何かしらガマンしているのだから、かわいそうなのは子どもたちだけじゃないのも分かっています。でも、一番遊びたい時期に、笑ってバカ話さえもできない子どもがかわいそう。高校生の上の子は、家に帰ってきたらずっとスマホとにらめっこして、何時間もリビングで友だちとLINEをしています。
聞いてみたら、今では喋らないことが普通になりすぎて、登下校中もとなりの友だちとLINEで会話をするとか。『目を見て話さなくて平気なの?』『リアルに会話するからこそ、話せることもあるんじゃない?』って聞いても、いつも返ってくる言葉は、『別に、これが普通だもん』って……。なんでも、たまに休みの日に友だちと一緒にご飯を食べに行っても、お互いゲームをやったり動画を見たりしつつ、そのままSNSで会話することが当たり前のようです」
◆友人グループで集まって無言で“盛り上がる”
そして、コロナ下ならでは……なのか、つい最近買い物帰りに、こんな光景にも遭遇したそうです。
「買い物帰りに、近所の公園で中学生らしき子どもたちが集まっているところを見かけたんです。私の息子を含めて、8人くらいいたかな? お、なんか懐かしい光景だな~って思って近づいたら、みんな自転車にまたがりながら、不気味なくらい静かにスマホをいじっているんですよ。
あとで何していたのか息子に聞いたら、『どこに遊びに行くかLINEで決めてた』『苦手な先生の話をしてた』って。そして、誰もなにも言わず、フワァ~っと解散して。マスクをしないコミュニケーションが当たり前だった世代の私からすれば、それはとても異常な光景でした」
子どもたちが大勢集まっているのに、騒がしい声どころか会話もあまり聞こえてこないなんて……。子どもたちにとって、友だちがいても話さない・話せないことは“あたり前”のことになっているようです。
◆「友だちがどんな声か忘れた」と話す子ども
そして倉元さんが今気になっているのが、コロナ下の子どもたちのコミュニケーションの変化なのだとか。
「息子たちはSNSのコミュニケーションはコロナ前から使っていますが、コロナ下でより拍車がかかったイメージです。仲がいい友だちのグループや、塾のグループ、スポーツクラブのグループに、趣味のオンライン上の友だちグループと、子どもたちを見ていると本当にオンライン上の友だちの管理が大変そう。
さらにそこから、『愚痴を言い合える仲間』や、『本音で話せるグループ』などかなり細分化すると聞いて、思わず絶句……。長男のスマホの待ち受け画面が目に入ったとき、LINEの未読通知が300件以上あったんです。3ケタって確認するだけでも大変そうだし、そこから色々気を遣ったり、対応したり、想像するだけでも疲れちゃいます。コロナ下で、子どもたちは親の知らないところで相当大変な思いをしているんだな~と痛感しました」
より複雑になり、細分化されたSNSの人間関係に囲まれて、こどもたちは大人が想像できないほどのストレスの中で生きているのかもしれません。
そしてなにより、ネットやSNS上での交流が中心になった子どもたちから、「友だちがどんな声か忘れた」「今聞いても、正直誰かすぐには分からないと思う」と笑いながら言われたとき、倉元さんはぎゅっと胸が締め付けられたそうです。
コロナ下で過熱する学校の謎ルールに、複雑すぎるSNSコミュニケーション。子どもたちは、大人が想像できないくらいのストレスに日々耐えているのかもしれません。
―シリーズ「新しい生活様式がしんどい」―
<取材・文&イラスト 赤山ひかる>