『相棒』水谷・寺脇コンビの“濃すぎる”歴史。初共演も刑事ドラマだった

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 6月22日、『相棒』(テレビ朝日)の5代目相棒として寺脇康文のカムバックが発表され、ネットは大いに盛り上がりました。水谷豊演じる杉下右京とのおよそ14年ぶりのコンビ再結成に、いまから注目が集まっています。

 単発ドラマの『土曜ワイド劇場』時代も含めると、放送開始から22年。大人気長寿ドラマの基礎を作った二人なので、このフィーバーも納得です。

◆熱狂の理由は『相棒』再結成だけじゃない

 けれども、水谷豊と寺脇康文の組み合わせは、それ以上に感情を揺さぶるものがあります。そこに役柄を超えた人間同士のつながりを見てしまうのですね。

 水谷・寺脇コンビは、なぜこんなにもエモーショナルなのでしょうか? 歴史を振り返ってみましょう。

 それは『相棒』からさらにさかのぼること9年。1991年のドラマ『刑事貴族2』(日本テレビ)で、初共演を果たしました。水谷演じる本城慎太郎と、寺脇演じる藤村亮をはじめとした刑事たちが、松方弘樹演じる宮本課長と地井武男演じる武田刑事が指揮するチームで様々な事件を解決していくストーリーです。

 シーズン1からスポット出演していた高樹沙耶(青木順子役)も合わせると、のちに『相棒』のベースとなる3人の俳優が出会っていたことになります。

◆『刑事貴族2』から引き継がれた歴史

『刑事貴族2』の本城慎太郎は、杉下右京とは正反対のキャラクターの持ち主でした。ひょうひょうとしていて口が達者。「お恥ずかしいったらありゃしない」は名物のセリフです。

 その一方で、正義感にあふれ、情熱的な面も持ち合わせている。上司の指示を無視して単独行動に及ぶこともしばしば。ドラマを動かすエンジンのような存在だったのです。

 寺脇が演じた藤村亮は異業種から転職して刑事になった変わり種。最初は警察に戸惑いつつも、次第に本城との絡みもこなれてくるといった具合に、王道の成長物語を体現するキャラクターでした。
 
 だから、『刑事貴族2』からのファンは『相棒』でも二人の歴史が引き継がれていることに気付くのです。

◆かつて自身が演じた役柄を見守っているようにも見える

 理性的で成熟した新キャラクター・杉下右京のそばで、熱血漢でお調子者の本城慎太郎を受け継ぐ亀山薫が躍動する。そんな亀山をいさめつつ、ときには彼の斬新な発想から力を借りる杉下の姿は、かつて自身が演じた役柄を見守っているようにも見えました。俳優と役柄の成長が、見事に反映されていたのですね。

 こうして、ドラマは変わっても途絶えることのなかった両者の関係が『相棒』人気の基礎を作ったと言えるのでしょう。

 今回の復帰にあたり、水谷のことを「役者人生の師匠と言っても過言ではない」と語った寺脇の言葉通り、『相棒』はこの二人でなければ生まれなかったのです。

 もっとも、二人の間にはたびたび不仲説が飛び交ってきました。役作りに熱心な寺脇と制作スタッフとの間で衝突があり、次第に水谷とも疎遠になっていったとの報道もありました。

 けれども、そうした諸々を含めて、ただ芝居がいいとか脚本や演出が巧妙だとかでは説明できない濃密な空気が『相棒』にはある。30年に渡る歴史の重みこそが、多くの視聴者の心を揺さぶる最大の要因なのだと思います。

◆『相棒』終了説の真相やいかに

 同時に、寺脇復帰の裏で『相棒』終了説もささやかれています。70歳を迎える水谷の体力的な問題や莫大な制作費の問題等が理由にあげられています。真相はさておき、寺脇復帰のインパクトを超えるトピックが想像できない以上、次のシーズンで終了と見るのが妥当でしょう。

 それは以前からうかがえます。今年3月放送のseason20第17話で米沢守(六角精児)が久々に登場、そして亀山薫のカムバック。懐かしいキャラクターを動員して、ドラマ全体を振り返るような流れが見て取れるのですね。
 
 同じようなケースで思い出すのが、アメリカの大人気ドラマ『NCIS』です。2003年の放送開始から、18年に渡りシリーズの顔、リロイ・ジェスロ・ギブスを演じてきたマーク・ハーモンがシーズン19をもって卒業しました。(註・ドラマは後任にゲイリー・コール(オールデン・パーカー捜査官役)を据えて継続中)

 それまでの間、劇中でギブスが捜査官からの引退を匂わせるセリフを語ったり、名物キャラだったジヴァ・ダヴィード(コート・デ・パブロ)が6年ぶりに復帰したりといったことがありました。さらにギブスの最後のエピソードでは、ハーモンの妻であるパム・ドーバーと共演。

 懐かしいキャラクターとの再会を経て、最も信頼のおけるパートナーとの仕事を最後に、マーク・ハーモンはリロイ・ジェスロ・ギブスのストーリーにピリオドを打ったのです。

◆他の役者の再登板もあるか?

『相棒』も同じ道をたどるとすれば、寺脇の他にも鈴木砂羽(薫の妻、亀山美和子役)や、鈴木杏樹(月本幸子役)、岸部一徳(小野田公顕官房長役)の再登板を期待してしまいます。トリオ・ザ・捜査一課(川原和久・伊丹憲一役、大谷亮介・三浦信輔役、山中崇・芹沢慶二役)の再結成も捨てがたい…。(高樹沙耶は諸事情から難しいとしても)

 水谷の妻、伊藤蘭の出演もあるかもしれません。実際、「水谷豊 20年目『相棒』ゲストに私生活の相棒・伊藤蘭が浮上」(女性自身 2019年10月9日)という記事が配信されたこともありました。実現すれば、寺脇復帰以上のインパクトを与えることでしょう。

 ともあれ、新シーズンのスタートはまだ先のこと。警察を退職した亀山は、どのような立場で帰ってくるのか。相変わらずフライトジャケット(MA-1?)を着ているのか、はたまたモダンにアップデートされたファッションなのか。そして、杉下とどんな言葉を交わすのか。

 ひとまず伝説コンビの再結成を楽しみにしたいと思います。
 
文/石黒隆之

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

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