「ベル・エポック」の街を彩った華麗でビビッドなポスター展@横須賀美術館

「ベル・エポック」のフランスの街を彩った華麗でビビッドなポスター作品は目新しい発見!「フランス・モダン・ポスター展」が横須賀美術館で開催中

今年で開館15周年を迎える同館のメモリアルな展覧会では、豊かな良き時代を意味する「ベル・エポック」のフランスのポスター作品約110点が展示されています。

担当学芸員の工藤さんにお話を聞きました。

これがポスター?その大きさは規格外!

ポスター展と聞いて展示室に入りましたが、そこに展示されているのはポスターのイメージを突き抜けた大きな作品の数々。

「実はここに展示できていない2メートルを超える大きさのポスターもあるんです」とは工藤さん。思わずビックリの一言です。

紙の規格で言うところの最大サイズB0(長辺145.6センチ)を上回る巨大さ。何とも圧巻な展示パフォーマンスです。

展示室には、長辺150センチ前後の大型ポスター作品がいくつも展示されています。写真奥のテニスシューズのポスターも150センチ以上の迫力!

作品テーマは生活の身近にあるモノ

大きさは規格外にしても、ポスターなので描かれている題材は生活に身近なモノばかり。

例えば食品ではスパゲッティやフォアグラ、紅茶やお酒など、ふだん口にするものがテーマになっているので、とても分かりやすく鑑賞できます。

「宣伝広告という意味で、ポスターは生活の身近にあるので、作品を通じて当時のフランスの人々の生活が垣間見えるのも面白いと感じていただけるのでは」(工藤さん)

作者不詳《満月印パスタ》1922年頃

確かにポスターは、表現ビジュアルだけでなく文字情報も必須のパーツアイテム。アートでありながらも機能性を備えている点で絵画とは一味違う魅力があります。

「ポスターは情報を伝える媒体ですので、1枚1枚のポスターの文字の情報をすべて翻訳してキャプションにしています。情報の伝え方として、ビジュアルだけでなく文字情報も作品として見てほしいことも意図にあります」(工藤さん)

フランス語のポスターともいうこともあり、そのままでは意味が掴みづらいことへの配慮だそうです。きめ細かい嬉しい演出。

作品テーマは多岐にわたり、店舗(キャバレーやバー)やオペラの宣伝、自転車や旅行、雑誌の広告など、当時のフランスのモダンライフを感じられるのも同展の楽しさです。

テオフィル・アレクサンドル・スタンラン《シャ・ノワール》1896年

ひと際目立つロートレック、ミュシャ、シェレのポスター作品

ロートレックやミュシャの作品は有名なので、一度はどこかで目にしたこともあるのでは。そしてシェレも、ポスターデザインでは知っておきたい有名アーティストのひとり!

リトグラフを学んだシェレの作品は、とにかくビビッド。多色刷り技術による色鮮やかで華やかなデザイン表現は見惚れてしまうこと間違いなし。

灯油や風邪薬、舞踏会をテーマにした作品など(冒頭の写真)が展示されています。

フランスを代表する画家ロートレックは、本やカフェをテーマにした作品が展示されています。特に「ディヴァン・ジャポネ」は有名な作品なので「まだ見たことのない人」はぜひ観てください!

そしてミュシャ。

「ミュシャは、アール・ヌーヴォーのデザイン様式で描かれた作品が話題となり脚光を浴びたんです」(工藤さん)

アール・ヌーヴォーは、花や植物など自然由来のしなやかな曲線をつかったデザインが特徴。その代表作品が展示されている「ジスモンダ」と「椿姫」なんです。

また、アール・ヌーヴォーとは対照的な機能的で直線的なデザインが特徴のアール・デコ様式で描かれた「ノルマンディ号」や「K.L.M.オランダ航空」の作品も見応えがあります。

学芸員からのメッセージ

「当館は、目の前に東京湾が広がり周囲を観音崎公園の豊かな森に囲まれています。館内の天井や壁面に大小の丸穴が開いていて、中からも外の景色を楽しめる開放的な空間になっています。

屋上から観音崎公園に出ることもできるので、公園を散策したり美術館で作品を観たり、家族の皆さんでゆったりと自然と美術を楽しめます。ぜひお越しください」(工藤さん)

さらには、オーシャンビューが楽しめる人気のイタリアンレストランがあるので、グルメファンにもたまりません。展覧会期間中は、コラボメニューのデザートもいただけます!

コラボデザート盛り合わせ

豊かな海と山の自然を満喫しながら、アート鑑賞と美味しいイタリアンを楽しめる横須賀美術館。身体も心も栄養補給できること間違いなしです!

横須賀美術館

「華麗なるベル・エポック[京都工芸繊維大学 美術工芸資料館コレクション] フランス・モダン・ポスター展」

開催期間:2022年6月19日(日)まで

開館時間:10:00-18:00

休館日:6月6日(月) 

観覧料:一般1,300円ほか

https://www.yokosuka-moa.jp/

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。

MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。OBJECT東京展入選 FromA The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議ETDA展参加など。

2022/5/27 23:30

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