日本で枝葉を広げる名牝スタセリタのファミリー
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆先週の血統ピックアップ
・5/22 オークス(GI・東京・芝2400m)
中団を追走したスターズオンアースが直線でスタニングローズを交わし、桜花賞と合わせて牝馬二冠を達成しました。前半1200mが1分13秒1とスローペースだったので、後半1200mは1分10秒8と速くなりました。1986年以降のオークスでは、2017年のソウルスターリング(1分10秒1)に次いで2番目に速い後半ラップです。
奇しくもスターズオンアースはソウルスターリングの姪にあたり、両馬とも名牝スタセリタのファミリーに属しています。母サザンスターズはオークス馬ソウルスターリング、アルテミスSを勝ったシェーングランツの半姉。2代母スタセリタは仏オークス(G1・芝2100m)、ヴェルメイユ賞(仏G1・芝2400m)、フラワーボウル招待S(米G1・芝10ハロン)など6つのG1を制した名牝で、米芝牝馬チャンピオンのタイトルを獲得しています。
社台ファームが購買し、日本の土を踏みました。世界トップクラスの競走能力に加え、ドイツ血統を中心とする異系のヨーロッパ血統で構成されているので、繁殖牝馬としての価値はきわめて高いといえます。現時点でスタセリタが産んだ7頭のうち6頭は牝馬なので、これから先、ソウルスターリングやスターズオンアースの近親はどんどん増えていくことになります。社台ファームの屋台骨を支える重要牝系となるはずです。
◆今週の血統Tips
昨年の日本ダービーをシャフリヤールが制し、父ディープインパクトは4年連続制覇、通算7勝目を挙げました。いずれも歴代単独トップとなる大記録です。ラストクロップの現2歳世代は血統登録頭数がわずか6頭、しかも牡馬は2頭しかいないので、今年のダービーが最後の出走となる可能性が高いでしょう。
世界に目を向けると、ディープインパクトを上回る記録は、イタリアダービーにおけるシニョリーノ(Signorino)が保持しています。1910年代から20年代にかけて7年連続制覇、通算8勝という空前絶後の大記録を作っています。
ただ、当時のイタリア生産界の規模はきわめて小さく、種牡馬の数もごくわずかだったので、同列には語れません。ちなみに、今年の日本ダービーの登録馬のなかでは、コマンドラインがシニョリーノの血をごくわずかながら受け継いでいます。
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