米国主導の新経済圏構想「IPEF」始動へ...日本も参加方針 「関税引き下げ」はなく...アジアを巻き込めるのか?

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米国が主導するインド太平洋地域の新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic Framework=IPEF=アイペフ)」が動き始めた。

2022年5月22~24日にバイデン米大統領の就任後初となる訪日に合わせ、参加する各国の「首脳会議」をオンラインで開き、対面で参加する日米首脳とともにIPEFの発足を宣言する見通しだ。

米国はオバマ政権が主導して締結した環太平洋経済連携協定(TPP)からトランプ政権が離脱したが、バイデン政権はTPPには戻らず、新たな枠組みを構築する道を選んだ。その狙いは何なのか?

TPPに代わる構想としてIPEF提唱、中国に対抗する狙い

米国では「アメリカ・ファースト」を叫ぶトランプ政権時代に国際協調に背を向ける動きを繰り返したのに対し、バイデン政権は協調路線の再構築に努め、ウクライナに侵攻したロシアへの国際的な制裁でも成果を上げている。

TPPも、もともとは中国の影響力拡大をけん制する狙いで難しい交渉を妥結させたが、米国への外国製品の流入につながり、米国内の雇用を脅かすとしてトランプ政権が離脱した。バイデン政権としても、そうした米国内の反発が根強いことから、政治的にTPP復帰を進めるのは困難になっている。

そこでバイデン政権は2021年10月、TPPに代わる構想としてIPEF提唱し、日本などと準備を進めてきた。TPPから離れたとはいえ、経済面での協力やルール作りをアジア諸国などと進め、中国に対抗する狙いがある。

日本は、米国が抜けた後のTPPを11か国でスタートさせ、英国の加入も促すなどしながら米国の復帰を求めることを基本にしている。一方、米国が抜けたすきを突くかたちで、中国は21年9月にTPPに加盟を申請している。

日本はインド太平洋地域において、中国の影響力が軍事、経済両面で増大するのを押さえるうえで、米国との連携が重要だとして、TPPとは別に、IPEFにより経済面での対中抑止を進める方針に切り替えた。松野博一官房長官は22年5月18日の記者会見で「IPEFを米国のインド太平洋地域への積極的なコミットメントを示すものとして歓迎をしている」と述べている。

米国は2022年5月12、13日にワシントンに東南アジア諸国連合(ASEAN)各国を招いて特別首脳会議を開催し、11月に首脳会議を開いて、双方の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすることで合意した。

米国としては中国への対抗が念頭にあるが、中国と関係の深い国もあり、単純に中国包囲網などとはとても言えない状況だが、少しずつ中国の台頭を抑える方向に誘導する第1歩と位置付ける会議だった。IPEFについても、この場を使って各国に働きかけた。

こうしたことから、すでに参加方針を示している日米、オーストラリア、ニュージーランドのほか、ASEANからシンガポールとタイが参加の見通しで、米国との関係強化を打ち出している韓国のユン・ソンニョル政権も参加に意欲を示している。

萩生田光一経済産業相「何がメリットなのか不明瞭」

IPEFはどんな内容になるのか。(1)貿易、(2)供給網、(3)インフラ・脱炭素、(4)税・反汚職――の4分野で構成し、それぞれ政府間協定の交渉を始める。

貿易については、通常の自由貿易協定、あるいはそれを中核とするTPPのような経済連携協定と違い、市場開放(関税引き下げ)には踏み込まない。

たとえば、米通商代表部(USTR)のタイ代表が3月の上院の委員会で、労働・環境などの面で基準を満たした国に便宜を与える考えを示しているが、中国の人権問題を念頭に置いたものだろう。デジタル分野のルール作りなども含まれるという。

2つ目の供給網についても、半導体などの供給体制の情報共有体制を整え、災害への対応のほか、中国依存を減らす狙いが込められている。

インフラに関しては、中国が進める「一帯一路」に対抗した融資制度などを検討する見込みだ。

こうした狙いを持ったIPEFは「中国にとっては、かなり嫌なはず」(大手紙外信部デスク)という声がある。

ただし、参加国には米国という巨大市場の開放で自国の輸出を増やせるというメリットがないことになる。

TPPなどこれまでの協定の多くが、米国など先進国側の関税引き下げを「飴」に、さまざまなルール、法整備などで途上国に苦い薬も飲ませてきた。萩生田光一経済産業相は「(IPEFは)何がメリットなのか不明瞭なので、どういうルールづくりをしていくところなのか、理解を深めてもらう努力を米国はするべきだ」(5月10日の会見)と注文している。

IPEFにどこまでASEANの国々を巻き込めるか。日本のサポートも重要になる。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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