1番不幸な世代は? 7つの項目で点数化「不幸度ランキング」

 一億総貧困時代を迎える日本。本当に恵まれていないのはどの世代か? 今回、バブル世代、団塊ジュニア世代、ポスト団塊ジュニア世代、プレッシャー世代、ゆとり世代、Z世代の6つに分類。歩んだ道のりと待ち受ける将来から不幸No.1世代をあぶり出す!

◆“得”な世代などない? 全世代が不幸を感じる日本社会

 ほかの時代に生まれていれば幸せだった――。誰もが一度は描くこの思い。しかし、各世代を見渡せば入社時がピークのバブル世代、受験戦争を戦い抜いた団塊ジュニア世代、就職氷河期から非正規雇用を生んだポスト団塊ジュニア世代、給与が一向に上がらないプレッシャー世代、結婚できないゆとり世代、死ぬまで働くと言われるZ世代……と不幸は続く。

「そもそも、いまの日本で不幸を感じずに生きるのは難しい」と語るのは、マーケティングアナリストの原田曜平氏だ。

「経済成長した先進国の人々ほど、『自分は不幸だ』と認識する傾向があります。すでに成長は止まり、あとは国力が低下していく様子を眺めるだけ。そのため、全世界の先進国で、『過去の人々が経験したような華々しい時代を歩むことができない』との絶望感を抱く人が増えています。

 また、昨今は、経済成長の弊害として環境破壊なども問題視されてきている。特に若者であればあるほど、『親世代のツケを払わされている』『親世代より豊かになれないから不幸だ』という感覚が強い傾向があるように思います」

◆幸せと不幸は表裏一体

 先進国・日本に住む以上、不幸は常について回るもの。とはいえ、景気がよい時代に生まれた人ほど得をしているという感は否めない。だが、必ずしも好景気を生きた人間が幸せだとは限らない。

「確かに、経済は幸・不幸を決める大きな要素です。ただ、幸せと不幸は表裏一体で、その世代特有の良さが悪さにも転じます。例えば、景気が悪くて就職時に苦労した世代ほど、多くの競争に揉まれることで、より地に足のついた合理的な人間になります。

 反対に、就職時にラクをした世代ほど、人生に対して楽観的になりやすいので、その後の社会人生活で苦労することも多い。長期的な視点で考えていくと、どの世代にも、その世代特有の出来事があり、それに付随する不幸は存在します」

◆年功序列の存在が世代の不幸をつくる

 それぞれの世代に総じて不幸があるなかで、なぜ日本では世代格差が論じられやすいのか。

「最大の理由は、年功序列の存在ですね。日本には儒教文化が根づいていることから、年上を尊重する文化があります。そのため、いろんな物事が年功序列で決められており、年齢と社会的ポジションが結びつきやすい。

 なかでも日本は海外では珍しい新卒一括採用というシステムなので、年代による就職状況の格差が顕著に出やすい傾向があります。だからこそ、多くの人が世代論と幸・不幸を結びつけて考えるのだと思います」

◆世代論が盛り上がりやすいワケ

 また、日本は、世代論が盛り上がりやすい稀有な国だという。

「欧米を見ると、人種や宗教、住んでいる場所など、人を区別する要因が多すぎて、年齢だけでは分類できません。日本は欧米などに比べると多様性がなく、年齢くらいしか大きな比較要素が存在しない。だから、生まれた時代の影響を受けやすく、数年単位の違いであっても世代の属性が際立ちます。

 世代論は決して科学的なものではありません。ただ、日本に関していえば、その年代に生きる人の特徴をつかむ上で、有効な手段だと思います」

 次では、受験から年金までジャンル別に不幸度を点数化。最も不幸な世代が決定する。

◆世代別を6つに分類

 各世代別の不幸度を7つの項目(年金、定年、子育て、結婚、雇用・出世、就職、受験)を10点満点で評価。生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏、働き方評論家の常見陽平氏、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏、3名の識者の声を基に採点し、世代ごとの特色の合計を示した。

バブル世代(’65~’70年、現51~56歳)

団塊ジュニア世代(’71~’74年、現47~50歳)

ポスト団塊ジュニア世代(’75~’81年、現40~46歳)

プレッシャー世代(’82~’87年、現35~ 39歳)

ゆとり世代(’87~’95年、現27~34歳)

Z世代(’96~’05年、現17~26歳)

 それでは項目別の詳細をみていこう。点数が高いほど不幸となる。

◆バブル世代(’65~’70年、現51~56歳)

▼年金 7点「逃げ切りは厳しい」

受給開始予定は70歳。しかし、今のペースで減額を続けた場合、厚生年金の月額平均受給額はさらに2万円前後減ることに。この世代ですら逃げ切ることはもはや不可能だ

▼定年 8点「働く70歳誕生」

’21年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で就労から機会確保の努力義務が65歳から70歳に。「全員が70歳まで働けるわけではないため、老後の生活設計が狂う場合も」(柏木氏)

▼子育て 7点「家庭は火の車」

ブランド志向から無理して私立の小中に入れ、支援対象要件を満たせない家庭は火の車。「他方でこの世代は高校無償化法の恩恵も受けつつ子育てできた世帯も多い」(柏木氏)

▼結婚 6点「結婚環境は良好」

ねるとんパーティが誕生し、合コンが盛んな時代に青春期を過ごした。「出会いの場に困らず、若手でも大企業勤めや高収入の者が多く、結婚しやすかった時代です」(柏木氏)

▼雇用・出世 8点「入社以降下り坂」

「給料も上がらず、”働かないおじさん”と認定され、入社以来右肩下がり」(常見氏)というバブル世代。出世しても早々に役職定年を迎え降格しと、厳しい現実が

▼就職 5点「就活は一番楽勝」

入社時期には、’80年代半ば以降に起きたバブル景気に直面。「就活で一番いい思いをした世代。会社が出す面接交通費を就活で稼ぐ学生登場。内定者接待も派手」(常見氏)

▼受験 8点「進学で上京は秀才」

好景気を背景に大学進学率は’70年代から’80年代にかけて

20%台で定着。「国立大学は当然大変だが、私立も日東駒専クラスでも難しく、地方の私大を受ける人もいた」(石渡氏)

<合計49点>

◆団塊ジュニア世代(’71~’74年 現47~50歳)

▼年金 10点「払い損確定世代」

「財源的な事情から受給開始年齢が75歳に引き上げになるのはほぼ間違いなさそう」(柏木氏)。男性平均寿命までたった6年。元を取れるのは90代。払い損はほぼ確定だ

▼定年 9点「再雇用枠はあるのか?」

今以上の超高齢化社会となり、皆が70歳までの就労を希望することが予想される。「そんな状況の中、AI化も進み、どれだけの人間が再雇用してもらえるかは不透明」(柏木氏)

▼子育て 9点「イクメンが登場」

都心近郊では私立が普通という認識だが、習い事に費やす余裕はない。「共働きの定着で、イクメンを求められる。平均以上の収入でも養育面の負担を重く感じやすい」(柏木氏)

▼結婚 10点「生涯独身率が増加」

男性は嫌々家事をこなす世代だが、もっとも不幸なのは、結婚適齢期を不景気が直撃した独身組。「低年収などで婚期を逃し、この世代の男性は生涯未婚率が26%に」(柏木氏)

▼雇用・出世 10点「楽できない世代」

年功序列や終身雇用といった慣行が、バブル崩壊で全否定。「厳しい出世競争を勝ち抜いても、上と下との板挟みで楽できない。中間管理職として悩み多き世代」(常見氏)

▼就職 9点「氷河期前半」

’93年から始まった就職氷河期の前半世代。「不景気、構造の変化と1学年200万人近い人数の多さで、競争社会に揉まれ、就活でつまずく人も少なくない」(常見氏)

▼受験 10点「受験戦争が勃発」

共通一次試験が’89年に終わり、大学入試センター試験を最初に経験した世代。「世代の人数が多いわりに大学の数が少なく、受験戦争は苛烈で不合格率が4割に」(石渡氏)

<合計67点>

◆ポスト団塊ジュニア世代(’75~’81年 現40~46歳)

▼年金 10点「受給に希望持てず」

受給は75歳からでも団塊ジュニア以上に受給額が減らされているのは確実。「納め始めた20代前半とあまりに違う状況で、このまま払い続けなければいけないのが辛い」(柏木氏)

▼定年 10点「75歳まで働く時代」

「この世代が定年を迎える時代には雇用継続の努力義務が75歳に引き上げられている可能性も」(柏木氏)。そうなればサラリーマン人生はまだ折り返し地点だ……

▼子育て 7点「習い事地獄に」

東京では’20年度から私立高校授業料の実質無償化が開始。「高校の学費負担がなくなった半面、習い事などにお金を使うように。養育費は思ったほど減っていない」(柏木氏)

▼結婚 9点「結婚の時期を逃す」

総務省調査におけるこの世代が30代前半時の所得分布は、バブル世代より約200万円減の300万円台が最頻値に。「40代前半の初婚率はわずか5%弱と厳しい」(柏木氏)

▼雇用・出世 9点「名ばかり管理職に」

社内では重要なポジションを任される年代ながらも、実質は名ばかり管理職が大半。「仕事は増えても残業代は出ない。現場に出る管理職として疲弊する人も多いはず」(常見氏)

▼就職 10点「氷河期のどん底」

有効求人倍率が’99年に0.48と氷河期最低の数字に。「就活的には『底』を見た世代。『自己分析』という言葉が定着し、今まで以上に就活の対策が必要に」(常見氏)

▼受験 10点「現役合格は運」

「浪人で1浪や2浪は当たり前でした。合格率が低いため浪人に寛容だったのが救いか」(石渡氏)。’92年度は大学受験者数が121万人を超えピークに。受験戦争の過熱感は異常

<合計65点>

◆プレッシャー世代(’82~’87年 現35~ 39歳)

▼年金 9点「自己防衛は間に合わず」

最初から損をするだけとわかっていた世代。「期待していなかったとはいえ、私的年金などで自衛できるのは同世代でも一部。子供にお金がかかる既婚者も余裕なし」(柏木氏)

▼定年 8点「働く枠はあるものの」

「この世代あたりから世代人口が一気に減ってくるため、各企業の人手不足も深刻になりそう。それに伴い、上の世代よりも再雇用される割合が高くなる可能性も」(柏木氏)

▼子育て 7点「養育費水準低め」

給料が伸び悩むなか、従来より支給額や期間が充実した児童手当の恩恵は一応受けられた。「そもそもの所得水準は低いが、家庭の養育費の支出額としてはややマシに」(柏木氏)

▼結婚 8点「3分の1が未婚」

2021年版の「少子化社会対策白書」では3人に1人が未婚の世代。「晩婚化が進んだおかげで、まだチャンスはあるが年齢的に今を逃すと限界。まさにプレッシャー」(柏木氏)

▼雇用・出世 10点「最後の昭和世代」

昭和の泥くさい働き方やマインドを継承する最後の世代として、現場の主力として働く中堅世代。「上の世代が多いので、ポストが空かず、出世の道のりは遠いです」(常見氏)

▼就職 7点「就活支援が拡充」

’06年から3年間は売り手市場に。「『ジョブカフェ』が登場するなど、就職できない学生への支援が拡充。ネット全盛で、就活時に膨大な情報精査を余儀なくされた」(常見氏)

▼受験 7点「親は余裕なし」

4大進学率は50%へ。女子の大学進学率が急上昇する。「学生数減少と大学数増加で競争率は下がった一方、親が不景気の影響をもろに受け、浪人はしにくい風潮に」(石渡氏)

<合計56点>

◆ゆとり世代(’87~’95年 現27~34歳)

▼年金 10点「年金に諦め感」

「しっかり給付されていた時代を知る上の世代ほど、メンタルは不思議と落ち込んでいない印象も……」(柏木氏)。Z世代に次いで負担増は確実だが、もう考えるのも憂鬱か

▼定年 7点「シニア市場が活発に」

「定年を迎えるころには人手不足が一層進み、辞めたくても会社から引き留められる場合も。シニア世代の転職市場も今とは比べ物にならないほど活発になるかも」(柏木氏)

▼子育て 9点「子供は贅沢に」

「乳幼児の医療費、保育料無料、給食費無料化も実施する自治体が増加した世代」(柏木氏)。少子化対策が進む一方、ギリギリ貧困家庭や将来不安で子育ての余裕なし

▼結婚 6点「結婚には消極的」

家事への抵抗感などはないが、コスパ重視の生活を余儀なくされる収入状況が、足を引っ張る。「家庭的な人も少なくないが、恋愛や結婚に消極的な傾向も」(柏木氏)

▼雇用・出世 8点「激動の世代」

入社前に金融危機や震災を経験するなど、激動の時代に直面。「波乱の中を生き抜いたのに、”ゆとり”の印象が強く、優秀でも軽んじられがちで、名前で損してます」(常見氏)

▼就職 8点「リーマン・ショックが」

有効求人倍率0.42と、史上最悪値となったリーマン・ショック。「以降、就職先の花形だった金融機関が求人控えの傾向に。価値観の変化に戸惑う人も多かったはず」(常見氏)

▼受験 6点「卒業が面倒に」

4大進学が当たり前に。短大・専門学校などとの待遇差が拡大する。「受験競争は非常に緩やかな時期ですが、’07年に単位認定が厳格化され、入学後は損した世代」(石渡氏)

<合計54点>

◆Z世代(’96~’05年 現17~26歳)

▼年金 10点「未納付率も上昇」

真面目に納付しても損をするだけで世代的な負担が一番大きい。20代後半の国民年金の納付率は57.09%と、年金に絶望している。老後資金は自力でつくる認識でいる

▼定年 9点「死ぬまで働く世代」

「75歳定年ならまだ半世紀以上も働かなければならず、リタイア生活を送れる富裕層以外はのんびりした老後はほぼ不可能。定年がさらに上がるなんてことも?」(柏木氏)

▼子育て 6点「子育て支援に期待」

「加速度的に少子化が進めば、さらに行政の子育て支援が拡充する可能性も」(柏木氏)。収入面など世代内格差が大きい層でもあり、公平感のある制度設計などが課題か

▼結婚 8点「独身化が加速!?」

民間ネット調査ではZ世代の結婚願望は低くないようだが、「社会保障・人口問題研究所の推計では、この世代が40代後半になる頃は日本人の3割は一生独身とも」(柏木氏)

▼雇用・出世 7点「世代内格差が拡大」

人口ピラミッドで数が少ない世代ゆえ、企業からは引っ張りだこ。「ただ、需要があるのは一部の高度IT人材か、飲食や介護などキツい業界に二分され、世代内格差も」(常見氏)

▼就職 7点「コロナで内定格差」

コロナ禍でも有効求人倍率1.50と売り手市場は健在。「オンライン就活で周囲の動きが見えない中、『動ける人』と『動けない人』の間に内定格差ができています」(常見氏)

▼受験 8点「都市部は激戦状態に」

受け皿の大学はあるが、23区内の定員抑制や定員厳格化で志望校とマッチしにくい。「’10年代半ばから都市部の大学は再び激戦状態。教育費もかかりやすい」(石渡氏)

<合計55点>

◆不幸な世代No.1は…

 結果、不幸度1位は67点で「団塊ジュニア世代」となった。

▼67点 団塊ジュニア世代(’71~’74年、現47~50歳)

▼65点 ポスト団塊ジュニア世代(’75~’81年、現40~46歳)

▼56点 プレッシャー世代(’82~’87年、現35~ 39歳)

▼55点 Z世代(’96~’05年、現17~26歳)

▼54点 ゆとり世代(’87~’95年、現27~34歳)

▼49点 バブル世代(’65~’70年、現51~56歳)

◆<識者プロフィール>

【マーケティングアナリスト 原田曜平氏】

’77年生まれ。博報堂ブランドデザイン若者研究所を経て、独立。近著に『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)など

【生活経済ジャーナリスト 柏木理佳氏】

’68年生まれ。生活経済や雇用やお金の問題を解説し、テレビのコメンテーターとしても活躍。著書に『ひきこもりは”金の卵”』(日経BP)など多数

【働き方評論家 常見陽平氏】

’74年生まれ。千葉商科大学国際教養学部准教授。近著に『社畜上等』(晶文社)、『博報堂生活総研のキラーデータで語るリアル平成史 』(星海社)など

【大学ジャーナリスト 石渡嶺司氏】

’75年、北海道生まれ。編集プロダクションを経て、’03年に大学ジャーナリストに。Yahoo!ニュース個人などで執筆する。著書に『就活のワナ』(講談社)

<取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/bambeam>

―[不幸度ランキング]―

2022/2/21 8:54

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