「どこの大学なの?」と質問されて答えたくないのは…

明治。青山学院。立教。中央。法政。そして、学習院。

通称、「GMARCH(ジーマーチ)」。

学生の上位15%しか入ることのできない難関校であるはずが、国立や早慶の影に隠れて”微妙”な評価をされてしまいがちだ。

特に女性は、就活では”並”、婚活では”高学歴”とされ、その振れ幅に悩まされることも…。

そんなGMARCHな女たちの、微妙な立ち位置。

等身大の葛藤に、あなたもきっと共感するはず。

▶前回:初めての彼氏が実は既婚者だった…!中央法学部の女が考えた“最高の復讐”とは?

File5. 加奈、法政大学。拷問に近い「大学どこ?」の質問


「大学どこなの?」

偏差値を問わず、所属する大学名がアイデンティティになる大学生にとって、バイト先や合コンなどで当たり前のように聞かれる質問だ。

しかし、加奈にとってこの質問は拷問のようなものだ。

「加奈ちゃん、大学どこ?」

「はい、法政大学です」

こう加奈が答えると、相手のだいたい反応はこうだ。

「ああ、そうなんですね…」

そして、答えた後に相手との間に流れる微妙な沈黙。その度に加奈は思ってしまうのだ。

― あーあ…。きっと「明治です」って答えたら「優秀ですね」と言われて、「青学です」と答えたら「華やかそう!」とか言われるのになぁ…。

法政は、MARCH5大学の中では偏差値も最下位。

昔は駅伝やアメフトが強かったようだが、最近はスポーツ全般で成績が振るわない。

そして、昔は法政も明治のようにバンカラ色があったらしいが、2000年前後の改革によってバンカラ色がすっかり影を潜め、今では個性のない大学となっている。

強いて言えば、田中優子前総長が盛んにメディアに露出しているくらい。

『本当に特徴のない大学』、これが法政大学なのだ。

その評判を受けて『法政女子大生』たちは、知らず知らずに謙虚に振る舞うことを身に付け、地道に目立たず生きるようになる。

もちろん、それは加奈も同じだった。

― 自分の所属って、本当に大事なんだわ…。

自分が通う大学を好きになれなかった加奈は、所属の重要性を嫌というほど実感するようになっていた。

そして、大学では果たせなかったが、就職では“自分が誇れる所属”を手に入れようと考えていたのだった。

就職活動で逆転を願う加奈の戦略とは…?

大学3年の夏。

加奈は、ほかの学生を同じように就活に向けて準備を始めていた。

経団連が2021年4月入社の学生から就活ルールを廃止したが、その前から就活ルールがないも同然だった。

特に今は、新型コロナウイルスの影響もあり、就活は全体的に超早期化している。そんな大学生にとって、3年生になったら就活を開始するのは、もはや常識。

そして、その就活のはじめの一歩ともいえるのが、各企業で数日から数週間で行われるインターンシップだ。

― インターンシップにすごく興味があるわけじゃないけど、評価によっては事実上の内定ももらえるようだし、一応申し込んでおくか…。

強い意思があったわけではないが、就活のはじめの一歩として、各企業のインターンシップに申し込む加奈。

人気のある超大手企業は『法政大学』だと、学歴フィルターでまずはじかれてしまう。

そのことを十分に理解していた加奈は、超大手企業を避け、準大手のIT企業のインターンシップに応募。無事、参加することになった。


インターンシップ初日。

加奈はリクルートスーツに身を包んで、颯爽と会場に入った。

会場に入ると、やや緊張した面持ちの大学生が多く集まっている。そして、いよいよインターンシッププログラムがスタート。

指導員からの説明やトレーニングを受けた後に、4、5名のグループに分かれてワークショップに入った。

こういう場所でやたらやる気を見せる学生も一部いるが、そんな他大生をよそ目に“身の程を知る”法政女子大生の加奈は、こう思っていた。

「私は、目立たぬように、騒がぬように、地味に着実に取り組むだけだわ」



案の定、加奈のグループでも張り切ってリーダーを名乗り出た男子学生がいた。

しかし、彼に実際にリードをさせてみると、その学生はディスカッションの仕切りも、実際の作業を前にしたタスク設計やメンバーへの役割分担も、まともにできない。

周りのグループに比べ明らかに進捗が悪い状況に、加奈も他のメンバーもまずいと思い始めていた。

― なんでこの人、こんなこともできずに立候補しちゃったのかしら…。まぁよくいるタイプだけど…。

こう心の中で思いつつも「限られた時間でワークショップの結果をまとめなければいけない」と思った加奈は、控えめながらもこう申し出た。

「あの…まず大まかなタスクを決めて、皆さんの専門や得意なことで分担を決めませんか?今回、タスクは大きく4つの流れがあると思います。

調査や資料作りなど、皆さんが得意なことを教えてください。そちらで進めてみて、あとは状況を見ながら分担を調整しませんか?」

停滞していたグループワークは、加奈のこの発言でようやく回りはじめた。

この後も随所で加奈はメンバーへの目配りと全体の進捗をコントロールしながら、何とかプレゼン資料を作り上げることができたのだった。



そして迎えた、インターンシップ最終日。

資料もプレゼンも、名だけのリーダーと加奈を中心にグループで乗り切りきることができ、グループ全体も高く評価された。

― あーぁ、よかった…。ホントどうなることかと思ったけど、何とかまとまったわ。

心底ほっとして、もうインターン終了モードに突入していく加奈。

このあと、自分に起きることなど、まったく予想せずに…。

インターンシップを無事終えた加奈。彼女の進む道とは?

インターンシップ最終日の夕方。

すべてのインターンプログラムが終わり、参加した学生の緊張が少し解けてきたころ、指導員の責任者がインターンシップ会場に現れた。

「みなさん、2週間のインターンシップ、大変お疲れ様でした。

皆さんの頑張りを私たち指導員一同、大変頼もしくそして興味深く拝見させていただきました。

さて、今回のインターン生の中から、最も貢献した方を表彰します。お名前を呼ばれた方、前にお願いします。」

― きっと張り切って目立とうとしていた男子が選ばれるんでしょ…。私にはまったく関係ないわ。

こう思った加奈は、指導員に見えないように帰りの準備でも始めようかしら、などと考えていた。

しかし…。

「発表します。最優秀インターンシップ生は、法政大学国際文化学部の天野加奈さんです!」

― …えっ!?今、何て言った?わ、私!?

一瞬何が起きたか、加奈は理解できなかった。

しかし、会場にいる全員の視線が自分に集まったことで、最優秀インターンシップ生として自分が選ばれたのだとようやく理解した。

「天野さん、おめでとうございます!こちらにどうぞ」

そう言われ、おずおずと会場の前に向かう加奈。

前に出て一同の視線を浴びた加奈は、大げさではなく人生で初めての経験に、どうしていいのかわからなくなっていた。

あわてた様子の加奈に、指導責任者が表彰理由を説明する。

「この会場にいる皆さん全員、大変頑張っていらっしゃったので、1名に絞るのはとても大変でした。

今回、天野さんを最優秀インターンシップ生として選んだ理由は『作業の的確さとスピード』それに『他者の長所を見ながら動ける協調性』の2つです。

特に協調性については、天野さんはチーム全員に気を配り、それぞれの特性を見極めて作業をコントロールされていました。

最後のプレゼンも、メンバーの力を生かしながらの進行、お見事でした。改めておめでとうございます!」

大勢の学生を前に、美辞麗句とともに表彰される加奈は、恥ずかしいような誇らしいような、何とも言えない気持ちになっていた。

― 私の人生で、こんなに注目を浴びる機会なんてあったかな…。

加奈は、目の前のことに着実に取り組んだだけだった。

しかし、そんな自分を評価されたことに、加奈は静かに、そして大きな自信を持ったのだった。


インターンシップで成果を上げたことで、意識が大きく変わったことがあった。

それは、所属への執着だ。

これまで『法政大学』の学歴に囚われて、どこか小さくなっていた加奈。

しかし、自分個人の努力や成果が認められる機会を得られことで、大学ではなく、自分という人間に自信がついたのだった。

そして、あれほど「所属が大事」と思っていたにもかかわらず、準大手IT企業の事実上の内定を得たことで、かえって企業のブランドにまったく興味がなくなってしまった加奈は、いつしかこう考えるようになっていった。

― 大学名とか会社名とかではなく、私は人生で何を成し遂げたいのかしら…。

純粋にやりたいことを突き詰めた結果、インターン先よりもさらに小規模である新興のSI企業を第一志望に変更した。そして加奈は、見事に内定を勝ち取ったのだった。

そのことを周囲に報告すると、決まってこう言われる。

「加奈ちゃん、なんで?最優秀インターンシップ生として表彰されたんでしょ?事実上の内定じゃない!こっち会社の方が大きいのに、もったいない!」

しかし、加奈はこうきっぱり答えるのだ。

「うーん…。でもね、内定した会社の方が、自分がやりたいことができそうなの!」

自信を持って笑顔でイキイキ話す加奈は、所属や大学名や企業名などもう気にしていなかった。

「自分で決めた決断に責任を持ち、自分らしく生きて、自分らしく活躍する」

言うのは簡単だが実行は難しいことに、加奈はチャレンジしようと心に決めたのだった。


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