「年収580万の私が捕まえられるのは、このレベルか…」女が悟った自分の価値と、結婚相手の最高値

人間は「生まれながらに平等」である。

これは近代社会における、人権の根本的な考え方だ。

だが一方で”親ガチャ”が話題になっているように、人間は親や生まれる場所、育つ環境を選べない。

事実、親の年収が高いほど、子どもの学力が高いこともデータ(※)によって証明済みだ。

私たちは生きていくうえで、多くの「生まれながらに不平等」な場面に遭遇してしまう。

中流家庭出身の損保OL・若林楓(27)も、東京の婚活市場で、不平等さを数多く実感することに…。

(※)お茶の水女子大「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」

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この半年の間。「婚活しよう!」と決めてから、私は様々な男性に出会ってきた。

婚活市場における優良物件も多かったし、東京にはまだたくさんの“素敵な独身男子”がいるという証明にもなっただろう。

だが私の心は、少しも晴れない。

結局誰も選ぶことができず、選ばれてもいないからだ。

周りの友人たちは、続々と結婚している。地元の友人の中には、第一子だけでなく、既に第二子を授かった人たちまでいるのだ。

「結婚は、妥協だよ」

私が1人落ち込んでいると、いつか誰かに言われた言葉を思い出してしまった。…そんなときに、ある人物から連絡が入ったのだ。

それは以前、私がデートに出かけた“あの男性”からだった。

生まれながらに普通の女・楓が選んだ相手とは…?

ZARAやUNIQLOも着る、年収1,000万の男

「楓ちゃん。久しぶりだね」

「ご無沙汰してます。元気でしたか?」

私が連絡をもらったのは、数ヶ月前にデートをした、テレビ局に勤める亮太さんだった。

「年末の特番とかでバタバタしててさ…。ようやく落ち着いたところ。楓ちゃんは?今年は実家に帰ったの?」

「今年の帰省は、見送りました。とはいっても近いので、帰ろうと思えばすぐ帰れるのですが」

「そっか。実家が近いって最高だね」

変わらぬ物腰の柔らかさに、肩肘張っていない感じ。それが今の私には、とても心地よかった。

「相変わらず、亮太さんって美味しいお店知ってますね」

今日のデート場所である『MARTINI HOUSE』は彼がチョイスしてくれたお店だった。

前回会ったときに「楓ちゃんを連れて行きたい」と言ってくれていたお店だが、その約束を覚えていてくれたことが、素直に嬉しい。

決して華美ではないけれど、居心地のいい空間。どこかアットホームで安らぐ雰囲気。そして料理は、もちろん美味しい。

「まるで亮太さんみたい…」

「え?何か言った?」

「いえ、何も」

思わず、口に出てしまっていたらしい。でも彼の前では、自然体でいられることに気がついた。

「亮太さんは?年末、帰省されたんですか?」

「いや、今年は僕も見送ったよ〜。帰れないことを伝えると、両親は残念がってたけど…。でもFaceTimeしたし、まぁ大丈夫かな」

「本当に、ご両親と仲がいいんですね」

まだ彼のご両親に会ったこともないけれど、勝手に家族だんらんの様子が目に浮かぶ。

― 亮太さんと結婚したら、きっと幸せなんだろうな。

ごくごく自然に、そう思った。

「最近も、お忙しいんですか?」

「そうだねぇ。忙しくないと言えば嘘になるかな。まぁでもサラリーマンだし、仕方ないよね」

亮太さんは、笑うと目尻に優しいシワが寄る。

「わかります。私も雇われている身なので、毎日仕事に追われていますし」

「そうだよねぇ。でもそのお陰で生活できているわけだし、文句も言えないんだけどね」

「そうなんですよね!」

今まで散々、経営者だのお医者さんだのを見てきた。以前は「年収1,000万程度だなんて」と、どこか切り捨てる感じさえあった。

しかし1周回って、気がついたのだ。

日系企業勤めで年収1,000万の、安定したサラリーマン。それが、私からすると最高値なことに。

結婚するならば、絶対に譲れぬもの。苦労する前に知っておきたいことは…

結婚するなら、同じような育ちの人

1軒目での食事を終えると、しばらくして店員さんから伝票を渡された。それを見た私は、自分からこんなことを言っていたのだ。

「亮太さん。ここ、私も払いますよ」

「本当?うーん、でもここは大丈夫だよ。じゃあ2軒目は、お願いしてもいいかな?」

以前の私だったら、支払うのを渋っていたかもしれない。でも今ならばわかる。

こういうのが、堅実で素敵な人。結婚したら一番幸せになれるタイプだろう、と。

この半年の間で、私は学んだ。必要以上に背伸びした相手と付き合うと、交際するまではいいとしても、結婚したら苦労する。

その点、亮太さんと私はどこか似ている。中流サラリーマン家庭出身で、公立育ち。高級外車には乗れないけれど、それなりにちゃんとした暮らしができるレベル。

あまりにも身分が違う人たちとの会話や世界に合わせていると、知らぬ間に自分が擦り減っていることもある。惨めになることも多いだろう。

結婚とは新たな家庭の構築であると同時に、お互いの育ってきた環境のぶつかり合いでもある。

日々の生活習慣に始まり、子どもの教育方針やお金の使い方まで。

価値観は、一朝一夕では変わらない。生まれたときから積み重なってきた経験、そして環境。それらすべてが重なって、その人の価値観となっている。

だからこそ似たような環境、そして似た境遇の人と結婚したほうが、長い目で見るとラクだし幸せなのだ。

「亮太さん、子どもは公立でもいいって言ってましたよね?」

「え?うん。どうしたの突然」

「いえ、なんでもありません」

2軒目へ徒歩で移動しながら、考える。

すっかり底冷えするこの季節。でも「近いから」という理由でタクシーには乗らなかった亮太さん。思ったより2軒目は遠い場所にあったけれど、それでも私の心は温かかった。

優しくて、真面目。そして何より価値観が合うこと。イコール、育ちが似ていること。上ばかり見て、自分の足元が見えていなかった自分が恥ずかしくなってきた。

「楓ちゃん、寒くなかった?ごめんね、歩かせちゃって。地図では徒歩7分って出てきてたんだけどな…」

ようやく店に辿り着くと、申し訳なさそうな顔をする亮太さんを見て、私は大きく首を横に振った。

「全然大丈夫です。それより、何か飲みましょう!ここは私が奢るので」

「本当?…ゴチになります!」

この日、深夜まで飲んだ私たち。外に出ると、今年二度目の雪がうっすらとアスファルトの地面に積もっていたのだった。

人は、生まれる場所を選べない。親だって選べない。

でも生まれた境遇を嘆く前に、目の前にある幸せを掴みにいく努力をしたほうがいい。

世の中には、絶対にあらがえないことだってあるのだ。

だからこそ自分が生きている環境を見つめ直し、感謝して、自分なりの幸せを作っていけばいい。

人生の舵を取れるのは、自分だけ。自分の意思で人生を切り拓いていくことができた人は、しなやかで、そして強いのだ。

Fin.

▶前回:食事会の最中「2人で抜けちゃう?」と誘われた!しかしイイ雰囲気を期待する女に対し、男は…

2022/1/18 5:06

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