被害総額は650億円、“マルチの帝王”と呼ばれた男の素顔とは?口癖は「貧乏人とは付き合うな」

 11月9日、仮想通貨を利用して月利20%稼げると謳いカネを集めていた男女7人が逮捕された(11月30日に金商法違反罪で起訴)。その想定被害総額は実に650億円。だが、首謀者とされる男は界隈では“帝王”として知られた人物だった……

◆「貧乏人とは付き合うな」数百億円集めたカリスマ

「仮想通貨の価格が各取引所で異なることを利用して稼ぐアービトラージ(鞘取り)を使えば必ず儲かる」「最大月利20%の配当を約束する」

 そんな謳い文句で1700万円集めた男女7人が11月9日、金融商品取引法違反の容疑で警視庁生活経済課に逮捕された。無登録で出資を募ったことが逮捕の理由となったが、それはあくまで入り口。全国紙社会部記者が話す。

「彼らが投資を募っていたのはジュビリーエース(以下JA)、ジェンコ、GTRという仮想通貨から派生した商品で、実際の被害額は650億円とも言われています。『マルチの帝王』などと呼ばれた男が主導的役割を果たし、被害者が詐欺を訴えているため、余罪の追及が進むか否かが今後の焦点」

 その男の名は玉井暁容疑者(53)。JAシリーズを広めるセミナーで“カリスマ講師”を務め、マルチのトップリーダーとして投資家のカネを吸い上げてきた人物だ。被害者の40代男性が話す。

「私は玉井グループに連なる若い経営者にそそのかされて4000万円投資してしまいました。会ったその場で利益が積み上がっていく様子をスマホで見せられて、信じてしまったんです。300人近く集めて東京・大手町で開かれた玉井のセミナーにも参加しました」

◆元々は生命保険のトップセールスマンだった

 セミナーで玉井は「貧乏はウイルスだ」と主張していたという。

「『貧乏人とは付き合いたくない。貧乏がうつるからだ』と。ランボルギーニを8台持っているだのと、自慢話が大半でしたが、人を惹きつける魅力は感じました。JAのシステムは“AIサミット”でマイクロソフトなどを抑えて最優秀賞を獲得したというアピールも。それで自分も20億円投資したら毎月4億円以上の配当がもらえるようになったので、皆さんに勧めているんだ、という具合でした」(同)

 実際、玉井は莫大な資産を築いてきたとされている。彼をよく知るマルチ商法の関係者が話す。

「玉ちゃんは生命保険のトップセールスマンで20代の頃から数千万円の年収があったけど、アムウェイに出合ってその倍以上の収入が得られるようになったらしい。その後、アサイージュースで知られるモナヴィーのカリスマ会員になって『インペリアル・ブラック・ダイヤモンド』という最高の称号までのし上がり、モナヴィーを買収したジュネスグローバル(化粧品)でも最高位の会員として活躍。ジュネスの絡みで一時は恵比寿に美容サロンを経営するなど、いろんな事業に手を広げていった」

 玉井はモナヴィー時代の’13年に脱税容疑で東京国税局に告発されている。仮想通貨の世界に足を踏み入れたのはその4年後のことだ。

◆数百億円の出資を集めて「ギガモンスター」に

「’17年に『ビットクラブ』というビットコインのマイニングで月利20%近く稼げると謳ったマルチの案件が僕のところに来て、玉ちゃんを誘ったんです。そうしたら彼はトップリーダーの権利を買収して、全国各地でセミナーを開催。持ち前の話術で、最終的に数百億円集めたと聞いている」(同)

 ビットクラブ時代の玉井は「ギガモンスター」と呼ばれていた。その桁外れの集金力から新設された称号だ。が、ビットクラブは’19年12月に米国の創業者が詐欺で逮捕され、事実上破綻。入れ替わるように玉井はJAに熱を入れたが、それも1年足らずで破綻した。

「コロナ禍でも各地でセミナーを開いてお金を集めていましたが、’20年8月には出金できなくなりました。運営側は関東財務局から金商法に違反している可能性があると指導を受けたからだ、と10月にその理由を明らかにしましたが、9月には新たな商品としてジェンコをリリース。そのジェンコも11月には出金不可能になると、12月にはGTRを始動させて、集金を続けた。マルチの仕組みで、投資家が投資家を呼び込んでいたので、ある意味、投資家も共犯。だから、被害を訴える声がなかなか上がらなかった」(社会部記者)

◆資金流出を防いだ“巧妙な仕掛け”

 この間、ジュビリー本体と玉井らは巧妙な仕掛けで資金流出を防いでいたと考えられる。

「ジェンコに入れたお金が引き出せなくて紹介者にクレームを入れたら、『出金はできないが、GTRという新商品に預入金を移行できる』と言われました。そのGTRで月利10%ほどのリターンが出て、利益分だけ出金できたため、損失を取り戻そうと追加入金したのが運の尽き。今年8月にGTRも出金不可能になりました。ジュビリーが独自につくったアクアナイト(AQN)という仮想通貨で配当が補塡されたりしましたが、当初2ドルの価値があるとされたAQNは今や0.001ドル程度の価値。次々と商品が破綻して、無価値の通貨で補塡するなんて、組織ぐるみの詐欺・隠蔽行為としか考えられない」(前出・被害者)

 少なくとも運営側が被害の隠蔽に動いているのは確実だ。「今年8月にジェンコなどの専用サイトから入出金履歴が削除された」(同)という。その理由は明らかにされておらず、多くの投資家は被害額を証明する手立てを失ったままだ。

 これを詐欺と言わずして、何と言うのか? 捜査の進展が待たれる。

◆「まだ、取り返せると考えている人が多い」

 ジュビリー事件では無数の投資家が被害に遭ったとされるが、実は玉井容疑者らを相手に損害賠償請求訴訟を起こしているのはごく一部。その一人である40代男性が話す。

「ほかの被害者に声をかけても、『ジュビリー本体は破綻していない』『出金を再開すると言っている』として動こうとしなかった。まだ、取り返せると考えている人が多い」

 背景には、仕掛け人による情報操作がある。詐欺商材ウォッチャーの斉藤学氏が話す。

「被害を訴える人が出始めると、首謀者らが被害者のLINEグループなどに入り込んで、『集団訴訟を起こそう』と呼びかけるんです。弁護士との窓口役を買って出ることで『刑事告訴すると、和解の道が閉ざされて回収できなくなるようだ』と情報操作したり、『今、弁護士と示談交渉中』などと時間稼ぎを行うためです。実際、OZプロジェクトやPGAといった仮想通貨系の詐欺的案件で関係者らしき人物の工作が確認されています」

◆一方的に弁護士を懲戒請求。告訴を妨害する詐欺師の手口

 このほか、被害者グループに依頼された弁護士に対する妨害工作もある。

「弁護士に一方的に数万円の着手金を振り込んで、直後に『あの弁護士は役立たず』とグループ内で非難する。そのうえで、返金請求してすぐに『着手金を踏み倒された』と懲戒請求を起こす。弁護士が返金に応じても『懲戒請求を起こされた弁護士』のレッテルが貼られて、被害者グループから排除できてしまうわけです」(前出・被害者)

 ただし、玉井逮捕の一報は、詐欺的案件の仕掛け人たちを震え上がらせている様子。

「大阪のマイニング案件はずっと配当が停止していて、投資家が被害を訴えていたのですが、玉井逮捕の翌々日に急に数百円の配当があった。『詐欺ではない』というアピールのつもりでしょう」(個人投資家)

 被害者の皮を被った首謀者らにも要注意!

取材・文/高城 泰(ミドルマン) 池垣 完(本誌) 図版/ミューズグラフィック

2021/12/8 15:52

この記事のみんなのコメント

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  • トリトン

    12/9 11:45

    投資はわかるが自分時は名古屋朝鮮部落にいていつも金貸せと言ってくるお隣が何回も貸しても返さない時そこの子供が病気になり貸さずに死んでしまい、日本人に殺されたと部落中奴らか出ていけと言われ、在日の知り合いが頭金300万で買えると任言ったから出したらそのまま持ち逃げそしもう一人の座(ヤクザで)金取り返す言ったがその金をあげ関わらないでと、持ち逃げした奴殺されて海に沈めたと100万持ってきました

  • 月利20%なんて有り得ないという事をわからない時点で投資なんかやめた方がいい。もし月利20%の投資方法が有ったとして、それを誰かに教える人なんていないです。誰かの紹介の投資セミナーや投資用教材の販売なども注意しましょう。

  • トリトン

    12/9 6:02

    詐欺の被害は自殺者もでるか殺人やんだから、無条件仲共々死刑にするのが良い、簡単に詐欺して一刑務所から出たら騙した金は自分の物、それ罰金が騙した金の2倍の支払いにするとか。とにかく簡単なのは皆殺しにして詐欺すると殺されるべきだね

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