『最愛』吉高由里子&松下洸平 ぎこちない手繋ぎにキュンも…示された“最愛”の危うさ

最愛のために…

吉高由里子主演の金曜ドラマ『最愛』(TBS系、金曜よる10時~)。殺人事件の重要参考人となった若き女社長・真田梨央(吉高)、かつて梨央が思いを寄せていた事件を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平)、そして梨央を守ろうとする弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)を中心に描かれるサスペンスラブストーリーは、3日に第8話が放送された。

序盤で描かれた梨央と大輝がお酒を飲むシーンや、これからのことを考えたい人についてお互いを挙げていたラブラブな場面には「大ちゃんいきなりキュンキュンさせないで」「ほっこりする」「二人には幸せになってほしい」と反響があった。だが、その後は死んだしおり(田中みな実)が暴いた不正をめぐり、それぞれの最愛の人への思いが現れ、愛と狂気の狭間が垣間見えた展開だった。(以下ネタバレあり)

サスペンス要素が多めの第8話ながら、序盤の梨央と大輝の仲睦まじいシーンは第8話の中でも強い印象を残した。梨央が大輝の母と電話する場面は、まるで新婚夫婦のようなやりとり。梨央が電話口で大輝の母につかまっていると、大輝は「切れ、切れ、切れ」と小声で促す。“2人どぶろく祭り”では、独特の手振りで酒を勧める梨央(吉高)に「何それ」と大輝(松下)がツッコミを入れるなど、ずっと続いて欲しいと願ってしまう穏やかな時間が流れた。そして、帰り際の線路沿いで、電車の音にかき消されそうになっても、それでも大輝が声を張って言った「先のこと考えたい相手は他におらんで」。まさに“最愛の人”は梨央だと伝える言葉。梨央も「私もおらん」。

たどたどしく手を繋ぐ二人の愛おしい姿。幸せを願わずにはいられない、二人の“最愛”が確認された。

一方で、不正の証拠隠滅を図ろうとする後藤(及川光博)は、加瀬に追い詰められるが、そこでの言葉には執着ともとることができる、最愛のものへの思いが込められていた。

後藤は「着服していない、会社のためにやったんだ」と弁解して、加瀬に「会社のためになっていない」と正論で責められても謝罪はない。「君も私の立場だったらやっていた。あの場所が私のすべてだ。ほかには何もないんだよ」と吐露する。第4話、「“かけがえのないもの”と聞いて何を思い浮かべるか――。」と始まった後藤のモノローグで「私は自分を受け入れてくれたこの場所(会社)を何よりも大切に思う」とあった。「何よりも」。最愛のもののためには、悪いこともできてしまう。居場所を守るために悪いことをするしかなかった後藤の姿が映し出された。

後藤が逃げ去ったあと、加瀬が「わたしのすべて」と、後藤の言葉を繰り返す印象的な姿があった。胸に刺さったのが、その後、梨央に言った言葉からもうかがえた。

後藤の不正の証拠を調べる中で、梨央は公式に不正を謝罪したほうがいいのではと加瀬に提案するが、新薬の承認のためにあやふやにしようとする加瀬。正しさよりも、梨央のここまでやってきたことを考えて真実を隠そうとする姿が見られた。危うさが垣間見えたが、その後の梨央への思いを語る場面は、胸に迫るものがある。

梨央が弱音を吐くと、梨央が成し遂げようとすることのすごさを説き、「かならず報われる日がくるよ。世界がいいほうに変わっていくのがみたい。その船に乗ろうと思った」と力強く言う加瀬。

幼いころに家族を亡くし、梨央に自分を重ねていた加瀬にとって梨央は家族だし、成し遂げようとしていたことも含めて梨央が自分のすべてなのだ。

加瀬の真摯で静かな言葉は、愛しているという言葉では表現できない。男女を超えた大きな愛を感じるシーンになっていた。

一方、梓(薬師丸ひろ子)にとっては後藤も梨央も最愛の人だということが伺える。後藤は30年来の付き合いで、不正をしていたことには気づいていたようだが、後藤一人のせいにはしたくないとしきりに言っていたし、不正を公表する気もない様子。しかも、梨央と加瀬から逃げた後藤をホテルに匿っていて、そこには正しいかどうかという判断はない。本心が見えないところも不気味だ。

ただ、梨央にこれからどうするのかを言わないのは、梨央に心配かけたくないし巻き込みたいという親心なのかもしれない。いつもより梨央を突き放したような言葉が不器用な愛を感じる。

そして、梨央の兄・政信(奥野瑛太)は、父親の達雄(光石研)が死体遺棄をしていたことを知って傷ついたと言っていたが、梓は「世間では悪いことだけど、私も達雄さんと同じことをしていたと思う。地位も立場も忘れてね」とさらりと言ってのけた。

加瀬はその発言に驚いていたが、梓は全然動じない。愛する娘のためなら善悪は関係ないという態度で、狂気すら感じたのは気のせいなのだろうか。

最愛の人のためには、なんでもできる3人。その危うさを強く感じたが、優の15年前の罪を隠そうとした梨央や、梨央を守ろうとして康介を刺してしまった優(高橋文哉)、優の罪をかぶろうとした達雄もこの3人と同じだ。違うのは、15年前の事件が明らかになり、隠すものがなくなったことだ。

冒頭での幸せそうな梨央と大輝の姿が印象的だったが、15年前の事実が判明しなければ今の2人はない。そして昭(酒向芳)殺害事件がなければ、梨央は15年前のことを胸に秘めたままだったし、2人が再会することはなかった。梨央だって弟の優(高橋文哉)のために、15年前のことを隠そうとしていたのだ。

梓や後藤、加瀬も最愛の人のために良かれと思って行動しているし、ほかにも隠し事があってもおかしくはない。「最愛の人」は善悪の判断を狂わせる。まさにタイトルを表現している回だった。

それぞれの最愛が明らかになった第8話。そのために何をしてきたかが明らかになったときに、事件は解決するのかもしれない。ここにきて怪しい人物、また新たな謎も生まれているドラマ『最愛』。

残り2話でどんな最愛を見せてくれるのか。事件の解決とともに楽しみに待ちたい。なお、今夜12月6日(月)深夜1時35分~3時30分は、『最愛』SPダイジェストが放送される(一部地域を除く)。

■金曜ドラマ『最愛』

毎週金曜よる10:00~10:54

(C)TBS

2021/12/6 20:45

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